虎視眈々 hiruma x mamori 2015年04月17日 大学生になったヒルまもの小説です。機会は以前から伺っていた。 大学の部室で二人きりになることはあまりない。高校の時よりも人数が多いこともあるけれど。活動範囲が広がりマネージャーとしてあまり部室にいないことが多いから。 二人でいることは本当に久しぶりだった。少し嬉しくて、いつもより饒舌だったかもしれない自覚はあった。「でね、今度入部してくる彼の彼女さんが可愛い子でさ!」「興味ねェ…」 心底興味なさそうな顔でパソコンに向かうヒル魔くんは高校の時からあまり変わらない。もっとも、私の雑談にも面倒そうにしつつ付き合ってくれるようになったことは進歩かもしれない。「ねぇ……ヒル魔くんは彼女とか作らないの?」 話の流れでなんとなく聞いてみた。けれど、前々から聞いてみたかった質問だ。「要らねェよんなもん」「……そう言うと思いました」 コーヒーおかわりは?と聞くと、要らないと合図。それくらい口で言えば? 相変わらず手話でのやりとりも続いている。「使える女がいりゃそれでいい」 マグカップを片付けようと立ち上がったあと、聞こえてきた声。「使える女、ねぇ……」 それはどう受け止めたらいいのかしら。「誰のことだか知らないけど、」 もしかしたら私のことかもしれない、という謎の自惚れのようなものもあった。大学に入ってからもそれなりにマネージャーの任務もこなしているのだし。 けど、自ら進んであなたの奴隷認定されるほど、私は従順な女ではないわ。「じゃぁその¨使える女¨さんを彼女にでもしてみたらいかがですか?」 そんなあなたに都合のいい女の人がこの世にいるのかしらね。 テーブルまで戻ってくると、ヒル魔くんの視線がピッタリ合った。それもそのまま、ぎろっとにらみ続けられている。え?何? しばらくそのままの沈黙で身動きができなかった。「そうだな…」「え?」「悪かねェ」 そう言って立ち上がると、両手をスッと私の頬にのばしてきた。 ガタッと椅子が床を引きずる音。 あっけにとられていると、いつの間にか近くまで迫った顔があった。 予想だにしない事態 待って、これどういうこと? ねぇ 使える女って、本当に、「悪かねェよ……」 細くて長い親指が私の唇の下をくいと持ち上げ、そのままさらに迫ろうとする。こんなに近くの距離で向かい合うなんて初めてで、頭が真っ白になりそうだった。でも、「ちょっと待って!」 間一髪で我に返った。気づけば夢中で跳ね返していた。胸板を両腕で押し返す。力で私が勝つわけはないのに、その体はするりと離れた。「おぅ、待っててやるよ」 ケケケと楽しそうに笑う悪魔。「お前がその気になるまで、待っててやるよ」「バカ……そんな冗談はやめて!」 そんな冗談あるわけない。誰が、こんな人となんかって。私は、昔、思っていたのに…。「ねぇ、彼女要らないって今しがた言ったわよね」「言った」「じゃぁなんでそんなこと言うのよ」「だから言っただろ。¨使える女¨がいればいいって」「……それって固有名詞なの?」「ケケ」 顔を背けた。 今の私の顔はきっと真っ赤だ。 ずるい。ほんとにずるい。 待っててやるなんて言われてしまって。 これじゃ私の方から、気持ちを言わざるをえないじゃない! 先に仕掛けたのは、ヒル魔くんの方なのに……。こんなのずるい。「俺は十分待ってやったぜ?お前がドジ踏んで口滑らすのをな?」「私は……そんな、ヒル魔くんのことなんて……」「……なんて?」「なんて……ああもうッ!!」 ほんとにあなたはずる賢いんだから!! [0回]PR