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めぐりあひて

二次創作ブログです。原作者様等とは一切関係ありません。

うさぎにメロン

ある夏の日の仲直り。







 7月下旬といやァ既に真夏のど真ん中でさァ。このうだる暑さン中じゃ何もやる気が起きねーってもんでィ。
 仕事サボってダラダラしたって、だらだら汗は垂れてくる。スカーフなんか巻いてらんねーし。白シャツの袖巻き上げてもまだ暑ィし。誰だよこんな暑苦しィ制服考えたやつ。やってられっか。
 そんなクソ暑い中だってのに。なんか知んねーけど。公園のジャングルジムのそばでガキ共がたむろしてやがる。無視して通りすぎようとしたんだが。あ!いつものお巡りさーん!などと呼び止められちまっちゃ逃げられない。

 ガキ数人に手ェ引かれるまま仕方なくそっちに行ってみた。で、激しく後悔した。
 そこには、ジャングルジムの隅っこで小っさくうずくまってるチャイナ娘。そんでそのすぐそばでぐったりヘタってるデカ犬。
 どうしよう、助けてあげてお巡りさん……なんて今にも口に出しそうなガキ共の懇願の視線を受け。そっから立ち去れるほど図太い神経ではなかったもんで。参ったな。俺ァ見廻りの仕事サボるためここへ来たんだぜ?なんか知らんが仕事増やされちまった。


 まずはガキ共をしっしと追い払うことから始めた。続いて二匹をジャングルジムから無理やり引き離す。他のやつらの邪魔にならん場所……公園端のベンチへ移動させた。
 デカ犬は促せば自力でしゃんと移動したってのに。こいつァぐったりして動かない。腕を回して体の片側から支え歩かせようとしたんだが。足もまともに動かせないでいる。どうしょうもねーから、片肩に胴体担いで無理やり移動させた。小さい体はだらんとして意外と重さを感じた。
 何人かのガキが心配したツラで俺についてこようとしていたが。ただでさえ暑ィんだから近くにたむろせんでほしい。片っ端から追っ払った。このバカの心配はいらねーからてめーらは向こうでチャンバラでもやってな。制服着てる俺が言うと何かと威力があんのだろうか。大人しくガキらは去ってった。



 移動後、腹を空かせてそうな顔でへたりこむデカ犬に、餌をやる。俺の唯一持ってた食糧のガム……は、さすがに犬にはまずいだろうから。チャイナのズボンのポケットを遠慮なくまさぐった。そしたらちょうどいいのが出てきた。ドッグフードっぽいやつ。それを地面に少し出してやり促した。
 大した量じゃァなかったが。デカ犬は嬉しそうにそれらを食ってた。

 ま、仕方ねェな。たとえ飼い主がバカのクソガキだったとしても。動物に罪は無ェんだから。この犬にゃァ優しくしてやってもまぁいいだろう。
 だが、このクソガキはマジで死ね。
 一応バカでも言葉はしゃべれる生き物のはずだろう?
 さっきから一言も発さねーし、相変わらずベンチの足元に座り込んだまま動かねーし。
 このバカを俺は一体どう料理してやるべきなんだろーか。

 ……けど、大方の予想はついてんだ、実は。

 この日射しの強い晴天下だというのに、こいつァ見つけたときから、傘の一本も持ち合わせちゃいなかった。


「……なぁ、いい加減何かしゃべれアホんだら」


 いつもなら売り言葉に買い言葉の勢いで、俺に暴言ごと突っ掛かってくるはずなんだが。こいつは三角座りの態勢で、膝に顔うずくめたまま。ビクとも動きゃしない。隣でバカスカ食ってるデカ犬を少しは見習え。
 試しに、もう一度こいつのポケットをまさぐった。やはり動かない。四次元ポケットさながら、中に入ってたモンを取り出す。よくこいつが持ち歩いてる酢昆布。箱のパッケージから中身取り出して、うつむいてる顔のすぐそば、ピラピラとチラつかせてみた。


「てめーの酢昆布はあと5秒で俺の胃袋行きだぜィ?ハイごー、よーん、さーん、…………酸っぱ」


 返事がねーから。カウントしきる前に頬張って食った。酸味が舌に広がる。唾液が量産される。ただでさえ不足しがちな水分を奪われ喉が乾いちまいそうだった。
 それでもやはり、こいつは動こうとしない。

 頷くことも横に振ることもないその首の、後ろ辺りに目をやって。ああマジかよこいつ……と。死にたくなった。
 もともと相当白いはずの肌が、全体的に赤く乾燥していて明らかに異常だ。よく見りゃ袖のない腕もそう。まるで腫れたみてーに赤くなってらァ。その肌に触れると熱出したみてーに高温だった。

 熱中症、確定。

 どう考えてもこいつァ日光にやられてんな。けど、人間の熱中症と夜兎の症状が同じなのかもわかんねーし。対処法も知らねーし。そういうクソ面倒くさい可能性を疑いたくねーから。あんまちゃんと見ずにスルーしてたんだよ俺は。だが考えてみりゃそいつァ失敗だったな。このまま放っときゃ余計ややこしィことになるじゃねーか。


「マジでバカかよこいつ」


 なんでこの季節に傘持ってねーの?死にてーの?

 俺自身、傘の代わりになるようないいモンは持ち合わせちゃいないしどうしょうもない。とりあえず、着てたベスト脱いで、バサッとテキトーにこいつの頭から被せてやった。
 ……が、ふと思った。このカンカン照りん中、黒布で覆うってのはかえって逆効果か。
 あ、そういやあれがあったわ。
 ズボンのポケットに入れっぱだった、くっしゃくしゃの白スカーフ。出して広げりゃわりかしデカいサイズでちょうどいい。薄い日除けにはなんだろうと。今しがた被せたベストと入れ替えてやった。

 さーて。その間も相変わらずチャイナは動かねーし。この場所じゃ相変わらずお天道様も強すぎる。
 また運ぶのもだりィから。ちょうどタイミングよく餌食い終わったデカ犬に命令することにした。


「おい、てめーの主人だろ。あっちの木陰まで運んでやれや」


 飼い主と違って物分かりいいそいつは、バカの首根っこ咥えて向こうの大木の根元までズルズル歩いてった。
 俺は財布持って犬と反対方向へ向かう。数十歩歩いた先にある自販機に小銭を投入し、ガランゴロンとテキトーに冷たい缶類を購入。ついで、そのすぐ近くにある水飲み台で、持ってたタオルをびしょびしょ濡らした。そんでデカ犬の元へ戻ってやった。







「こいつァいいや……涼しー」


 木陰のそば、俺とチャイナとデカ犬。一人と二匹で居座った。
 デカ犬の横腹の辺りを背もたれにして俺は座り込み。胡座かいてる俺の膝の上にこのバカの両足乗っける感じで。寝転がせてやった。
 この場所は日光遮んのに打ってつけだ。俺自身だいぶ暑さから気ぃ紛らわせられるし。葉の隙間からいい感じに涼しィ風も吹いてくる。今度からここで昼寝すんのも悪かねーな。覚えとこう。

 バカの頭や腕に水ぶっかけて。塩分入りのスポーツドリンクを口から突っ込んで少しずつ飲ませてやった。首もと締め付けてるチャイナ服のボタンを、訴訟沙汰にならん程度に2・3個外してやる。キンキンに冷えた数本の缶ジュースなり、水飲み場で濡らしたタオルなりを、首と脇と太股に挟んでやる。葬式の主役のごとく、日除けの白スカーフを顔面に被せてやる。そんで、持ってた扇子広げてパタパタ顔を扇いでやった。
 人間の熱中症に対するのと同程度の雑把な看病をしつつ。このバカの反応を待ってはみるが。やはりいっこうに動く気配はなかった。


「あーだりぃ。マジで死んだんじゃねーのこいつ?」


 扇ぎながら笑ってやった。
 すると、すぐ後ろで行儀よく足を畳んで座ってたデカ犬が、ただでさえデカい瞳をさらに見開きうるうるっとさせ始めた。なんだよこいつクソ可愛いじゃねーか。心配そうなツラしてるもんだから、片手でわしゃわしゃしてやった。暑ィけどでも、こいつの毛並みは柔らかくていいな。ずっとこうしときてーわ。


「冗談でィ。安心しろ。脈はあるし口から水飲んでた。こいつァ残念だが死んじゃいねーよ」


 ホッと溜め息をついたデカ犬。
 第一発見者は俺でもなく、公園のガキ共でもなく。きっとこのデカ犬だったんだろう。
 何しろジャングルジムに前両足をかけ、のさばって、チャイナの座り込んでる地面に日陰を作ろうと懸命にじっとしてたんだ。疲れんのも仕方ねーよな。こいつの自慢の白い毛並みも、日焼けしちまいそーだ。
 扇子の風向きを、バカからデカ犬へ移して引き続き扇いでやった。扇ぎながらもう一度体を撫でてやると、こいつはこいつで気持ち良さそーに毛をふさふさと逆立ててた。


「てめーは熱中症じゃねーだろうな?」


 すっかり温くなっちまった飲み指しのスポーツドリンクの残りを、地面の窪みに流してやる。するとそれを適度に飲み、嬉しそうに鳴いた。特に異常はなさそうで何よりだ。さすがに俺ァ犬の熱中症対策まで知らんからな。


「ったく、なんでこのバカをここまで放っといたんだ。てめーこいつの飼い犬だろ?飼い主の面倒くらいきちんと見てやれや」


 あれ?普通逆じゃね?
 言いながら思ったが。まぁいいや。
 とにかく俺は早く見廻りへ戻りたい。珍しく仕事意欲が湧いてきた……つーか、この場所からとっととおさらばしたい。だが、今はできない。こいつが目ェ覚ますまではこの場所にいとかねーと。あっちにいるガキ共に文句言われそうだし。この犬に食い殺されちまうかもしれん。


「てめーも大変だな。こんなバカが飼い主で」


 話しかけると、デカ犬は反応して首をぶるんと振った。
 そんでもって突然、しゃべり始めた。


「そんなことないワン!神楽ちゃんはとおっても賢くて優しくて可愛いご主人様だワン!(裏声)」



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