かくれんぼ okita x kagura 2015年09月07日 ※とても短いです。 チャイナが泣いている。 そう気づいても、沖田にはどうしたらいいのかわからなかった。 年上ばかりに囲まれてきた沖田が、自分より年下の神楽に対して年上らしくかけてやる言葉など見つからなかった。それは仕方のないことだった。 すぐ横で座り込んで泣きじゃくる神楽がいても、沖田は何もできずにいる。ただ横に座っていることしかできない。その涙を見て見ぬふりをしてやることしかできない。 慰めようものなら、泣きながら鉄拳が飛んでくると思っていた。だからあえてそっぽを向く。鉄拳が怖いわけではない。年下としてのプライドがある。周囲に負けじと背伸びする。背伸びした爪先をへし折られたくない。それは何より年下として生きてきた沖田が一番よくわかっているから。 弱味は隠しておきたいものなのだ。 ひとしきり泣いた後、神楽は腫れた目をそっと開けた。視界が少しずつ広がる。 と、そこには、背中を向けてこちらに一切顔を見せない沖田がいた。その背中はいつもより少し大きく感じた。 神楽の性格をわかった上で、慰めの言葉をかけないでいてくれる。放っておいてくれる。そんな沖田に心の中で感謝する。けれど、口には出さない。そういう言葉が苦手なやつだと神楽は知っているから。 ただ足の爪先で背中を一蹴りしてやるだけだ。「痛って………」 沖田が小さく漏らした言葉を合図に、神楽はまた一蹴りする。八つ当たりに少し似た感覚。ピシッ、パシッと。蹴るたびに背中が揺れる。 こちらを振り向かない背中は、神楽の攻撃をただただ受け止め続けるだけだった。「まだアルヨ」 神楽は蹴ることをやめ、手の甲から腕にかけてゴシッと顔の涙を拭った。沖田は蹴りが止んだのを感じて目を伏せた。 もういいかい?と心の中で呟く。返事するようなタイミングでズビビー!!と勢いよく鼻水を噛む音が背後から聞こえてきた。沖田は思わず笑えた。「汚ったね……」「うるさいッ!」 神楽はようやく収まってきていた。どうしようもなく苦しかった気持ちを涙と一緒に洗い流せば、気持ちも晴れて徐々に落ち着きを取り戻す。元気な声も自然に飛び出していた。 先程まで蹴っていた背中に、手のひらで静かにタッチした。「もういいヨー」 その声に、沖田はくるりと振り返った。 そこに泣いてる神楽はいなかった。「見ィつけた」「見つかったアル」 隠れていた笑顔の神楽が見つかった。沖田は安心して蹴り返してやった。 [5回]PR