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めぐりあひて

二次創作ブログです。原作者様等とは一切関係ありません。

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ないしょ話3

ないしょ話2のつづきです。完結。










「あ、言い忘れてたけどごちそーさまでしたアル」
「どーでもいいけどえらい時間差だな」


 木枯しが吹きつける公園には当然のように誰もいなかった。
 時折分厚く着込んだ老婆が犬の散歩がてらに通り掛かるだけ。
 そんな公園のブランコに座り足をブラブラさせる神楽と、そばの支柱に背中を預けて立っている沖田。
 静かな公園には、ギコギコとブランコの鉄の擦れる音のみが響いていた。
 もう少しで日は暮れる。辺りはやや薄暗くなってきていた。


「しかしそうかィ……旦那に勘当されたか。お前も哀れだな」


 ハンカチを取り出し、わざとらしく泣く仕草をしようとする沖田に、ちょっと待てェェエ!!とすかさずツッコミを入れる神楽。


「お前私の話ちゃんと聞いてなかっただろ!?!?」
「旦那に帰ってくんなって言われたんだろ?」
「今日の夕方6時半までだヨ!!誰も一生帰ってくるななんて言われてねーヨ!!」


 足をジタバタとさせる。ひらひらと裾がずれて膝上の白い肌が見え隠れする。
 沖田はそこから視線をそらしながら、淡々とした口調で言った。


「なるほどねィ……それで俺を暇潰し相手にしたってわけか」
「そよちゃんもよっちゃんも皆忙しいって……会えなかったネ」


 沖田は少しだけがっかりする気持ちもある。
 なんだ、別に一緒にいたいとか、そういう理由じゃなかったのか……。
 わかってはいたけれど。
 こいつにとっては、その程度にしか自分は認識されていないのだろう。
 何か理由がない限り、二人きりでいることなんてまずあり得ないのだ。

 ……わかっていたのに。
 一瞬でも期待した方がバカだった。


「まぁ……だいたい銀ちゃんたちの魂胆はわかってるアル」
「そうだな、俺も今聞いただけでわかった」


 わかっている。けれど、神楽は寂しいのだ。

 誕生日だというのに、神楽が万事屋からわざわざ追い出されてしまう理由なんて、十中八九予想できる。
 今日という日に。6時半まで帰って来るな、絶対帰るな!なんて。不自然に念押しされて。
 いくら鈍チンの神楽でも気づかないわけがない。

 銀時たちの心意気はもちろん心底ありがたいし嬉しい。
 けれど、定春を連れ出すことすら許されず。夕方の定時まで一人ぼっちにさせられてしまった。
 帰るまでどうやって過ごそうかと、考えながら街中をブラついていた神楽は、うずくまりたくなるほど、寂しかった。


 そんなときに、ひょっこりと現れたのが沖田だった。


 空いていたお腹は満たされて、 寒かった心も少し満たされた。
 大した会話なんて何もしていないし、しようと思ったところでできないだろう。

 それでも、隣に沖田がいるだけで、何だかホッとした。
 四六時中一緒にいたいとは微塵も思わないけれど、
 隣にいても、それなりに話ができてホッとできるような関係。
 いつの間にか、初対面のときよりも距離は縮まっていたのかなと。
 神楽は照れ隠しの気持ちも含め、しみじみと口にした。


「いやぁさすがアル……連載十年越えてるだけのことはあるネ」
「……何の話?」


 沖田が疑問を呈することより、神楽がそれよりさ!と話し掛けるが早かった。


「さっきのこれ!やっぱり買ってほしい!」


 神楽は自らの頭を指差して沖田に言う。
 意地張るのはやめよう。
 そう思って素直に、沖田にお願いしてみよう…………甘えてみようと、思ったのだ。

 沖田は不意を突かれて目を丸くする。


「さっきのショーウィンドウのお店、まだ開いてる時間アル」
「……悪ィけどそれはできない」
「なんで?」
「なんでも」


 沖田の目が曇る。

 買ってあげたいと思った、けれど。
 それはできないと、思ったのだ。

 その場限りでなくなってしまうごはんや食べ物が一番ちょうど良い。
 感情をプレゼントで伝えるには、あとあとまで残る雑貨は何かと煩わしい。
 ましてや、四六時中身に付けている髪飾りなんて……。

 大して近い距離にもいない自分がするプレゼントとしては不相応だ。


「さっき買ってやるっつったくせに!」
「気が変わったんでィ。それに飯も奢ったろ?」


 ぶぅ……と頬を膨らました神楽。

 沖田の優しさに触れて、少しずつ心が開かれてきた神楽。
 それに伴い、少しずつ甘えたくもなってくる。
 ブランコをゆーらゆらと小さくこいで、不満を訴えかけようとしたところ………


 しとっ


   しとしとっ


 頬や手の甲に、冷たい感覚が走る。
 神楽も沖田も上空を見上げた。

 夜へと向かう空の中、暗くて気づかなかった。
 いつの間にか、上空は雲に覆われている。
 そしてそこから、涙のように大きな粒の雨が降り注ぎ始めた。


「うわっ!さっきまで晴れてたのに……!」


 神楽はそう言って慌ててブランコから降りると、そばに立て掛けていた傘を持って広げた。
 そして、頭から被ろうと上着を脱ぎかけていた沖田を、半分入れてあげた。


「てめー何して」
「いいからそこの木陰行くネ!」


 沖田の背中をパンチしながら、駆け足で木の陰へと二人は移動した。





* * * * *


 大きな木の下で、二人は並んで立っていた。
 太い木の幹を背に。神楽は木の葉越しに上空を見上げ、沖田は地面へと視線を落としている。
 静かだった公園は、たちまち雨の叩きつける音一色に染まってしまった。
 誰一人いない公園に、沖田と神楽が二人きり。
 暗い木陰には、しーんとした空気が流れていた。


「参ったな……傘持ってねーし……」


 沖田はぼやくが、降り始めた雨は衰えを見せない。

 頭の中でいろいろと考える。
 こいつァまた帰りが遅くなって土方さんにどやされるパターンだ。サボりも普通にバレそう。晩飯抜きとか言われそう。ついでに土方のストレスはザキへ向け発散されることだろう。近藤さんがまぁまぁとなだめてたり、それから…………。

 すぐ隣にいる神楽から意識をそらすべく、沖田はあれこれと考え事をしている。
 先程から指でつんつんと突っついてくるが、無視を決め込んでいた。
 ところが、隊服の袖を掴んでくいくいとされたことで、たまらなくなり、神楽を少々きつく睨み付けた。


「何ッ?」


 胸がどくどくとしているのだ。雨音にも負けないほど鼓動が鳴っているのに。
 この感情、悟られたくないのに。
 ……できればあまり話しかけられたくない。
 辺りが暗くなってきたことが唯一の救いだ。


「何イラついてるアル?排卵日か?」
「ねーわンなもん。死ね」


 沖田の気を知らない神楽は、いきなり始まった雑な態度に少しイラッとしながらも、尋ねた。


「今何時アル?」


 ちっと舌打ちをしながら、沖田は神楽の手を振り払い腕時計の文字盤を読んだ。


「……6時ちょっと前」


 ここからであれば、ぼちぼちゆっくり万事屋に帰ればちょうど6時半頃にでも着くのではないか。
 俺のことはいいから傘さして先帰れとでも、沖田は促そうとした。しかし……


 神楽はあろうことか突然、手を繋いできた。


「……おい、チャイナ何して」


 あまりにも突然でわけがわからない。
 普段なら、さっさと振り払って終わるのに。別にそれだけなのに。


 濡れてしまった手から伝わる体温が、生暖かい。


 固まってしまった沖田に、神楽はそっと声をかけた。


「うちまで送ってヨ」
「……は?何……何言っちゃってんの?」


 そう言って半笑いしながらさりげなく手を離そうとするのに、離れてくれない。
 なぜだ。どういうことだ。
 思いを廻らせても沖田の頭に答えは浮かばなかった。


 こわくて、顔を見ることかできない。


 何をこんなに怯えているのだろう。
 人と手を繋ぐことなど、そうそうない。小さい頃、姉や近藤、まれに土方。それくらいの経験しかない。
 だからこそ、その行動の意図がわからずに恐れてしまう。

 親愛、愛情、友情……?
 いずれもが、神楽と自分との間に当てはまらないから、わからない。


「うち来たら予備の傘あるから、貸せるネ」


 淡々とした口調は何ひとついつもと変わらないのだ。
 いつもと変わらない、のに。
 手だけが温かくて、気が滅入ってしまいそうだ。


「…………俺は、走って帰るから、別に」


 手を離そうと試みることは諦めるが。動揺で口もうまくたたなかった。


 と、神楽の手が離れる。

 ひんやりとした空気が繋いでいた手のひらの間に舞い込み、思わず神楽の方を見た沖田。
 神楽は……先程の手をギュッと胸の前で握っていた。


「……私、誕生日アル」


 沖田は生唾を飲み込んでしまった。
 眉をハの字に曲げ、この上ないほど寂しそうに懇願する神楽の顔が目の前にあったから。


「誕生日くらい、私のわがまま付き合えヨ」


 沖田の心の中のストッパーは、もうぐらぐらとがたついている。
 今はまだすんでのところで、かろうじて思いとどまっている。


 これ以上間を持たれたら、
 歯止めが効かなくなりそうだ。


「……万事屋こっちか?」


 神楽の傘をぶん取り、沖田は投げやりに歩き出す。
 神楽は沖田のさす傘の半分にすっぽりと収まり、共に歩き出していた。





 しばらく歩きながら、神楽は自分でもわけがわからない感覚に少し戸惑っていた。
 けれど、沖田のそばで甘えることを覚え始めた神楽は、沖田の表情を覗きこもうと少しやけになる。

 しかし沖田は正面から顔を見せようとしない。
 その過程でふと、神楽は自分の傘を自分で持っていないことが気にかかった。


「私が傘持つネ。寄越せ」
「俺が持つ。てめーチビだから俺が歩きにくくなる」
「むっ………」


 神楽は手加減しつつ沖田の尻を蹴った。
 大して痛くもないが、痛った……と。沖田はわざとらしく反応すると。神楽はたまらずくすくすと笑った。


「何が可笑しい」
「いやいや……可笑しいことだらけアル」


 そう言ってフンフンと鼻歌でも歌い出しそうな上機嫌でスキップし始めた神楽。
 沖田は頭に疑問符を浮かべたまま、神楽の隣を淡々と歩いていた。


「お前と相合傘な時点でだいぶ可笑しいヨ」
「……まァそうだな」


 反論のしようがなかった。
 だいたい、今日は半日弱二人きりで過ごしていた。それがそもそも変な話だ。

 実はお互いが潜在的に望んでいたことなのだと、
 二人は揃いも揃って考えもしなかった。


「……てめーが今日誕生日のせいだ」
「勝手に人のせいにすんな!」


 狭い傘の中で、どうしようもなく近い距離間に戸惑うのはいつも沖田の方ばかり。
 歩きながら、ひょこひょこスキップしてる神楽とたびたびぶつかり触れ合ってしまう。太ももが少しだけかすめることも……。

 今なら、この距離なら……


「なァ、チャイナ……」
「ん?」

「あのさ……」





 言い出しかけた言葉が続かず、口をつぐんでしまった沖田。
 まるでというか、緊張していますと言っているようなものだ。ピリリとしたその声は、神楽をも戸惑わせる。


「……何アル?言えヨー言っちゃえヨー!」


 よくわからないがお茶を濁す感じでテキトーに茶化してみる。

 すると、沖田はひょいっと傘を神楽から外した。
 突然の行動。いきなり雨粒に打たれ始めた神楽はうわわっ!と慌てて沖田に飛びかかった。


「何するネ!!」


 神楽と反対側の手に傘を持って自分だけ入ろうとする。神楽が沖田の体を挟んで反対側に回ろうとするとまた再びひょいと傘を避けられてしまう。
 右へ左へ、小さい子供が意地悪するかのように、沖田は神楽から傘を遠ざけて遊んでいた。


「やめろヨ!美女がびじょびじょになるッ!傘返せコノヤローッ!!」


 雨に濡れながらよっ!ほっ!と沖田にぴょんぴょん飛び掛かる神楽。
 誰が美女だよ?なんてツッコミも返ってこず、無言。

 こいつ……許すまじ!!
 渾身のジャンプで沖田に飛び掛かかろうとしたそのとき、
 ……神楽の意思に反して体のバランスが崩れた。

 転けそうになった。
 でも、転けなかった。


「え……ちょ……お前」


 気づけば、沖田の体にぴったりくっついている。
 片腕にしっかりと受け止められ、傘の下、身動きできない体勢に収まっていた。


 傘を持たない方の腕と手は、言葉でうまく伝えられない想いの代わりに、ぎゅうぅっと神楽の体はきつく抱き締めていた。


 ああ……思ってた以上に、体柔らかい。
 沖田は神楽の肩に頭をうずめ、じっとしていた。


「お前……何して……」


 神楽は息をのんで。固まってしまった。
 周囲の雨音が急にボリュームを上げて聞こえてくるような感覚に陥った。


 傘の表面が雨を弾く音。
 誰もいない、暗い道。
 どちらのものかわからない、心臓の音。


 沖田は、神楽をぎゅっと包んだまま、何も言わず、動きもしなかった。





「何アル、なんかしゃべれヨ……」


 神楽の声もきっとすぐそばで聞こえているはずなのに。
 微動だにせず。ただただ……神楽の温度を感じていた。かすかな呼吸音が神楽の耳元に届くだけ。

 神楽の心は今、信じられないほど掴まれている。
 このまま握り潰されるんではないかという不安。自分の心を自分の意思に関わらずコントロールされるような不安。とにかく不安しかない。
 不安しかない、はずなのに。
 少しだけ仰け反るような体勢で、ぴったりくっついていることが、不思議と嫌ではないのだ。

 どうしちゃったんだろう……。





「沖、田……」





 名前を呼ばれたことで、沖田はふと我に返る。
 苦しく切なそうに紡がれた声、慌てて体を離した。

 二人の間に少しの空間ができた。

 向かい合わさったまま、しばらく無言で立ち尽くしてしまっていた。
 お互いに頑なにそらしてきたはずの瞳は、まっすぐまっすぐ向き合い、もうそらすことができなかった。


 雨の中、傘の下、
 濡れた髪に白い肌……綺麗な瞳、


 沖田の心のストッパーは、がちゃりと外れてしまった……。








「お前のこと……好きかもしれない……」




 声が、震えていた。

 軽蔑されるかもしれないとか、キモいウザい死ねと言われるかもしれないとか。
 そんな些末なことにまでもう頭が回らない。
 沖田は自らこぼしてしまった言葉に、ただただ驚いてしまう。
 驚いて、瞳がこぼれそうなほど見開いている。
 それは神楽もまた同じだった。


「……かもしれないっていうか、好きだ。たぶん。おそらく」
「不確定要素多いアルな……」


 胸の高鳴りを精一杯抑えながら、沖田は言葉をひとつも聞き漏らすまいと、神楽の声に耳を傾ける。
 神楽は緊張しながらも、ゆっくりと言葉を紡いだ。


「……でも、嬉しい」


 その神楽の言葉に、何よりも嬉しく感じてしまったのは沖田の方だった。
 合わせ続けていた瞳を伏せて、顔を手で覆う。はぅ……とその場に力なく座り込んでしまった。
 傘を手渡された神楽は、そんな沖田の年相応のあどけない姿に、ウブな反応に、プッと吹き出した。
 ようやく笑うことができた。


「お前………ダッさ」
「誰のせいでィ」


 神楽は目を細めてにっこりと笑った。
 しゃがみこんでいる沖田の頭に手を添えて、よーしよしよし……と子供にするように撫でまくった。


「でも、今のは最高のプレゼントアル!」


 嬉しい!と笑って口にする。
 好きという言葉が、素直な言葉が、
 これほど嬉しいなんて知らなかった。

 ……なんだか照れっぱなしなので、隊服姿の背中をベシッベシッ!と勢いよく叩いてみた。
 痛たい背骨折れる!と弱々しく訴える沖田に、神楽が笑っていると、今度は沖田の方から手のひらが飛んできた。これを器用にかわしながら、神楽はまた笑い声をあげた。

 その温かい声が間近で聞ける。
 それだけで、こんなに嬉しい……。

 沖田は目をつぶり、唇を噛み締めた。


「旦那には内緒で」
「わかってるアル」

「……あ、ぱっつぁんには?」
「もちろん内緒で」
「じゃぁ定春は?口固いヨ?」
「……ぎりぎり許した」
「おっし!」


 神楽は心の中でガッツポーズする。
 誰かにこの嬉しい気持ちを伝えたくて仕方がない。


「チャイナ……あのさ」
「大丈夫、他の人にも言わないヨ」
「いやじゃなくて。大事なことまだ言ってなかった……」


 沖田と同じ目線になるようにしゃがみこんでいた神楽。
 沖田は手から顔を上げて、そこにある神楽の笑顔を見つめる。自然に沖田の顔もほころんでしまった。


 ああ、そうだった。
 神楽といるといつも自分は、真選組の沖田総悟でない。
 ただの沖田総悟でいられるのだ。
 こんなやつに廻り会えることは、きっとそうそうない。だから……。


「誕生日、おめでと……」


 恥ずかしげに伝える沖田と、
 恥ずかしげに言葉を受け取る神楽。
 笑い合うことのできた二人はもうカップルかもしれないし、まだカップルではないかもしれない。
 けれどそんな違いは些細なこと。
 いつの間にか、誕生日を祝福し合える、大切な存在になっていた。
 それが何よりも一番、嬉しいことだった…………。














「…………こうして、少女と青年は末永く仲良く暮らしていきましたとさ。めでたしめでたし!」


 押し入れの中、パジャマ姿の神楽は、そよ姫からもらった綺麗な絵本を定春に読み聞かせていた。
 アウ~……と定春は、幸せそうに寝息をたてて眠っていた。


「寝ちゃったアルか」


 神楽は笑顔でおやすみ、と定春を撫でると。一旦押し入れを開けて部屋の外へ出た。

 そーっと忍び足で隣の部屋へ向かう神楽。
 そこの布団で眠っている銀時を起こさないよう気をつけながら、ふすまを開け、部屋のすみに固めて置いてあるプレゼントの山に絵本を戻した。

 6時半から始まったスナックお登勢での誕生日会。神楽と交流のあるかぶき町の面々が集まりわいわいと賑やかに開かれた。
 お酒とイチゴ牛乳ですっかり気分をよくした銀時も、すっかり幸せそうに眠り込んでいた。
 神楽はそーっと銀時のそばに歩み寄り、その寝顔をじっと見つめた。


「銀ちゃん、いつもありがと」


 明日もまた朝から仕事だ。
 たくさん友達のいる神楽、でもやっぱり誰よりも一番、銀時と新八のことが大好きだ。


「明日からさっそくこれ付けるネ!」


 そう言って、部屋をあとにした神楽の手には、昼間街中で眺めていたペ○スケースが。
 それは、銀時と新八からひとつずつもらった、大切なプレゼントであった。


 ……そして目には見えない、形には残らないけれど。
 もうひとつもらった大切なプレゼントがあった。


「あのネ、定春。定春にだけないしょの話教えてあげるネ。
 …………今日、あのクソサド野郎からもプレゼントもらったんだヨ」


 まさかでしょ?と、押し入れの中で眠り込んでいる定春に優しい目をして話しかける。


「ごめんネ、定春」


 神楽は定春のふさふさの毛を掻き分け、口元にムチュッとキスをした。


「定春にはセカンドキスになっちった」


 んじゃおやすみ!と言って、恥ずかしさ隠しにそそくさと段の上に上がりこみ、押し入れを閉めた。
 神楽は布団に潜り込み、目をつむる。
 今日一日を思い返しながら、幸せそうに眠りにつきました、とさ。

 おしまい。


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