もつれ糸 okita x kagura 2015年06月17日 何かあったのだろうか。やつの元気がないようだ。 私の役割はいつも、こんがらがってるあいつの糸を、ちょっとほぐしてやるだけ。糸をきちんとほどききるのは、もっとあいつの近くに寄り添ってるやつらの仕事だ。 それでいい。私とあいつは、それくらいの距離がちょうどいい。 あいつはあくまで、自分の糸はまっすぐ綺麗に巻かれていると言い張るだろうか。 汚れてはいるが、絡まってなどいないと、 シンプルな思考回路だと、 そう主張するかもしれない。 けど私にはわかってる。 お見通しアル。 すっかりひねくれちまったあいつの中身。 綺麗だったはずの瞳で、いろんな不幸を見てきて、 綺麗だったはずの手で、たくさんの血を流してきて、 心の内はぐちゃぐちゃになっちゃってる。 私はそんなあいつに指を絡ませて、乱暴にぐしゃぐしゃと掻き回して、そっとほどきやすくしてやるだけ。 私と全力でケンカをやりあうときに、ほんのり見せてくるあどけなさ。それが垣間見えれば、たぶんちょうどいい塩梅にほぐれた頃だ。「よし、あとはマヨラとゴリラに任せるとするネ!」 そう言って不意討ちで、手を伸ばして、ポンポンと頭を優しく叩いてやった。 えっ…と、ケンカの動きを止めて。少し驚いた表情を見せるクソサドは、あらあら可愛くてあどけない。 私はニンマリ笑って、じゃぁな…!と、もう一発。景気付けに肩をバシッと叩いてやって。背中を向けてその場を立ち去ろうとした。「………てめェ、なんで、」 背後から聞こえた声に振り返ると、やつはこちらを睨んでいた。けど、戸惑いも感じる。少しだけ震えているように、見えなくもない。「なんで、わかんだよ……」 いつも通りのひょうひょうとした顔の奥に、お前が何か不安を抱えてることくらい、わかる。 もつれて一人じゃどうしようもなくなってることくらい、わかる。 もうそれくらいには、近い存在になっちゃったのヨ。 きっとそんなのあいつは嫌がる。 だから、私はあえて離れて、放置してやるんだからな。 感謝するヨロシ!「延長戦はお前が落ち着いた頃にやってやるネ。覚えとけヨ」 あいつの問いには答えてやらない。私は意気揚々と立ち去ることにした。 と、角を曲がって、 あいつから姿が見えなくなったところで、立ち止まった。 地面を見て、目をパチパチした。 ……ほんとは、あいつのことが心配。 もっと何かしてやるべきなのかもしれないけど、……違う。 私と、あいつは。これぐらいの距離が、ちょうどいいアル。 そうやって自分に言い聞かせるのに、 もう一人の自分が、ポツリとつぶやいた。 私だって、あいつの糸、 ほどいてあげたいな…… [7回]PR