ボム okita x kagura 2015年08月18日 片想いしてる沖田とてへぺろな神楽。 最近やっと気づいたことがある。 俺はチャイナに惚れている。片想いしているのだ、と。気づいてしまった。 けれど、そんなことは俺の日々の行動に一切影響しなかった。うずくまっていた気持ちに気づいたところで、俺は何もできやしない。例えば万が一好き合う関係に至ったとしても。手を握るとか、チューするとか、抱き合うとか。そんな当たり前のことはできない。できる身分なわけがなかった。だから、チャイナに気持ちを伝えることはできないしする気もない。 今日のように、ただ決闘を申し込み、あるいは申し込まれるだけだ。そんなチャイナとの関係も、もう十年以上続いている。互いに歳とってねェけどな。 今さっきまで、たしか。こいつと懐かしの叩いてかぶって(ryをやっていたはずだった。しかし、各自持ち寄ったヘルメットもピコピコハンマーもどこへやら。いつの間にか殴り合っていた。と、しばらくの攻防ののち、仰向けに倒れた俺の上にチャイナが跨がって攻めてきていた。両手を槍のように尖らせ俺の顔面やら腹やらを攻撃してくる手首を止め、俺は渾身の目力で睨んでいた。別の意味で槍のように尖りそうだったとかそういうのは置いといて。とにかく休戦してほしかった。心臓ドキドキする。「お前、なんか最近手ェ抜いてないアルか!?」「……抜いてねェよ」 ある意味抜いてるよなんてまさか言えるわけもなく。とにかく一旦そこをどけ!と休戦を乞う。すると珍しく素直に聞き入れてくれた。 俺は上体を起こして座り込み、あぁ疲れただりィ……と今日はもうやめようアッピールをしてみた。だが、まだまだ体力あり余るこいつは決闘を続ける気満々だった。「あと3分休んだら再開アル」「……悪ィがもう今日は再開ナシだ」「なんでアルか!?」「なんでも」 俺の隣にしゃがんだまま、ぷーっと頬を膨らますチャイナ。俺はうつむきつつも軽くパンチしてその頬をしぼませた。ブッと唾飛沫が飛んできたが淡々と拭った。 もう俺は末期じゃないかとすら思う。こんな唾吐き当たり前のゲロインに。至近距離で目と目を合わせられれば、たったそれだけで腹の下がきゅーっと死にそうになる。ちょっと消えてほしい。この場からこいつ消えてほしい。矛盾してるかもしれんが。惚れた相手だからこそ今は目の前から瞬時いなくなってほしかった。「調子悪いアルか?」「そうゆうわけじゃねェけど……」 いや、間違いなく調子は悪い。だが、調子悪ィのは何も今日だけじゃねェんだ。ここ最近ずっと、イカれてやがる。 この状況を打開するためには、たぶんこいつと会うことをやめるのが一番手っ取り早いんだろう。けど、それがやめられないでいる。 会いたくなっちまう。……我ながらアホくさい。「熱でもあるんじゃないアルか?」 突如として額にやや小さい手が触れてきた。ピタンと熱をもった感覚にハッとして条件反射で手を払いのけた。「勝手に触ってくんじゃねーよ!」「何アル、女子かヨお前」 俺が再び睨んでいると同じく睨み返され続けている。目と目を、逸らせない。逸らした瞬間負けだ。戦闘本能的な何かか。一度視線を合わせてしまえば、下腹の疼きも構いやしない。チャイナが視線を動かすまで睨み威嚇し続けていた。 チャイナから見ればきっと、こんな俺は叩いて(ryで初めて戦ったときから変わらない、憎くウザいやつって印象なんだろう。 だが、俺は随分と変わっちまったみてェだ。こいつへの抵抗はただ憎くてウザいからって理由だけじゃない。どろどろとした想いを包み隠そうと、足掻くためでもあるのだから。「あーあ、せっかく人が親切にしてやったのに!おバカなやつアル」 チャイナはプツリと緊迫の糸を切った。フンッと顔を背け、立ち上がって素っ気なく俺に背を向けた。 その瞬間に、ああまただ……と思い、胸にそっと手を当てた。 苦しい。 なんかちょっと泣きそうな気分になる。 華奢で、やわらかくて、優しい匂いがする。その体をぶち壊すくらい抱き締めてしまいたい。けど、できない。 いっそ俺の方がぶち壊れちまえばいい。華奢な体の内に秘めてるその怪力で、こいつへの気持ちを粉々に砕いてほしい。そしてリセットしてほしい。 ちょっと前までみたく、普通に何の気ナシにこいつと接することができればそれでいい。それがいいのに。気持ちが軽くなれるのに。どうすりゃ元に戻るんだろう。いろいろ考えてみても答えは見つからない。「……チャイナ、今日はもう帰れ。俺もそろそろ仕事だ」「はっ!仕事なんかしてないくせによく言うネ」 チャイナに言葉をぶつけつつ、よっと立ち上がった。ケツの砂払って、そのままチャイナから顔を背け、反対方向へ歩いていこうとした。「ねぇ待つアル」 チャイナの声が背中から聞こえて。俺は立ち止まりつつも振り返らないよう努めて冷静を装う。「まだ何か?」「お前……大丈夫アルか?」 落ち着き払ったその声は、ガキの声にしては大人びて耳に届くから参ってしまう。下を向き頭を掻き、投げやりに呻いた。「大丈夫じゃねェよ……」 本心からそう言った。 何かを考えているかのようなしばらくの沈黙。そののち、常時よりワントーン低い声が、静かに問いかけてきた。「私は、お前に何がしてやれるアルか?」「何が、って……」 心の臓が高く鳴り、耐えきれず振り返った。チャイナは唇をきゅっと噛み締めながら俺の顔を見てくる。そんな目をされると、また苦しくなる。「最近元気ないアルな、お前」 淡々と無邪気に言い放つ言葉は。どれ程俺の心を揺さぶれば気が済むのだろう。 どれだけ喧嘩を重ねても、暴言吐き続けても、消えてくれないのに。リセットされないのに。何かいい方法は無いのか。 ……そうだ、ならばいっそ。こいつにたった一言だけを言ってもらえれば。俺の心は。落ち着くのだろうか。満たされてそれで終わってくれるのだろうか。「……じゃァ……ひとつ頼んでいいか」「何アル」「………俺に¨好き¨っつってくれねーか」 言葉を紡いでから、しまったと思った。 何を今血迷ったこと言ったんだろう。脳内で自分の脳をガシガシ殴ったがもう遅い。発してしまった。欲望のまま発してしまった。あーオワタ。もうやだ。はい終了。ちーん。死んだ。おきたそーご死す。ああ…… ……けど、死ぬ前にいっぺん、言われてみたいという気持ちは決して嘘ではない。 なんてことはない、そんなの言わせたところでただの嘘っぱち。気持ちも何もこもりようがないことは、ちゃんとわかってる。わかってんのに。それでも、言われたかった。耳でその言葉を聞いてみたかった。そんで……こんな気持ちはしまいにしたかった。 けど、冷静に考えてみりゃどうなんだか。今の俺はこいつにとって、ただの変態でしかあるまい。気持ち悪い野郎でしかあるまい。ああ取り返しつかない。なんつー顔してんだろうな、自分もチャイナも。もう完っ全に目ェ合わせらんねーや……。「……あーやっぱ今のナシで」 さりげなく取り消そうとしたんだが。少し遅かったのだろうか。今の俺の意味不明な願望を耳にしたこいつが。ズンズンとした足取りで正面から俺に歩み寄ってきた。ビンタでも食らわされちまうのか?思わず構えの態勢をとった。「あー悪ィ今のはマジで悪かった俺が変態だった」 先制防御を張ろうとしたが間に合わず。チャイナは俺の言葉に耳を傾けようともしないまま胸ぐらを無言でわしっと掴みかかってきた。「痛っ、てめェ俺ァ謝ってんだろーが!」 逆ギレもいいとこだが知るもんか。 正面の腕を突き放そうともがき、両手でチャイナの手首を掴む。しかし、ガッと力を込め、その白く固そうな額へ引き寄せようとする。 頭突きされるっ………とっさに頭を横にぐいっと逸らした。しかし、チャイナの石頭は一切ぶつかってこなかった。 ……代わりに、逸らした頭の真横、耳元に何かがほんのり触れた。柔らかく熱い何かは耳元でそっと停止した。「好きッ」 囁かれた声は、熱を伴い、静かに鼓膜を揺らす。 と、ワンテンポ置いたのち、とびきり強く頭の内側を鳴らされた。 その二文字分の声は、わざとらしく甘えじゃれるようであった。呼吸も忘れ、息をのんだ。 腰から砕けるかと思った。……砕けまいと飛びかけの意識で踏ん張る。その場で立ったまま動けない。 チャイナは顔だけをそっと離す。すると固まって動けない俺の顔を正面から見上げ覗き込んできた。両の上目遣いがたまらなかった。けどその顔はあからさまに意地悪そうににやけていた。「………ンなわけ、ないアル」 胸ぐらを掴んでいた手を乱暴に離し、サッと振り返り。スタスタと遠ざかって行ってしまった。一瞬目の端でとらえた表情は、舌を覗かせいたずらっ子そのものだった。その本心を探る間もなく去っていく後ろ姿に、手をかけ引き止めることも、名前で呼び止めることもできなかった。俺は、完全にやられちまった。「………なんだよ、今の」 体に力が入らない。心臓の音が普通に聞こえてくる。その場に立て膝ついて、軽く崩れ落ちた。ちょっと息も苦しい。やばい。 もう、己が身分とかプライドとか、そんなものは言い訳でしかなかったのだと気づいた。ただ単に俺が、臆病なだけだったんだ。 俺自身は発するどころか喉元に上がらせることすらできなかった、たった二文字のその言葉を。あいつはこうもあっさりと俺の胸に落として行きやがった。さながら爆弾を仕掛けられたみたいに重く胸を占拠する。 これはもう……いつ爆発するか、俺自身わかりゃしない。 チャイナ、……やっぱ俺が悪かったよ。 やめるどころかますますダメになっただけだった。 [8回]PR