万事屋おきらく okita x kagura 2015年08月02日 ※原作沿いぽくしてますが、もしかしたらパロディものに変更するかもしれません。いずれにせよ続きます。ほんとにノープランなので。更新予定は未定です。 魚を咥えたネコが塀の上を全速力で駆け抜けた。曲がり角に来れば体をしならせて器用に曲がっていく。……と、その直後。同じように体をしならせ走るは、虫取網と傘とを手にしていた神楽。そのネコを追いかけ細い路地裏へ進入。その先はびっちり敷き詰められた金網で封鎖されており。猫はキキーッとブレーキをかけながら立ち止まった。「こーの泥棒ネコがァァア!!」観念しろ!!と。神楽がここぞとばかりに飛びかかった瞬間。ネコはギャァァアとけたたましい鳴き声で威嚇しながら神楽の胸元へ爪を立て襲いかかってきた。「わっ!!」虫取り網をかわされた神楽は、とっさの攻撃に反応できなかった。ヤられる!思わず顔を下に向け守備体制に入った神楽は。横腹の辺りをギギギッと2・3本の爪で深く引っ掻かれ、身を捩った。「痛いッー!こんのッ!!」負傷しつつも、横を抜け逃げようとするネコの背中へ神楽は手を伸ばす。だがその瞬間。ネコは地にひれ伏した。木刀が。ネコの胴体を貫いていた。ギャァア!先程よりも一際甲高い鳴き声をあげて。ネコは気絶した。「はーい捕獲完了ー」ネコの皮膚をきつく押さえつける木刀の持ち手を握っていたのは沖田だ。真選組の隊服ではなく。ラフな袴姿で。傷や返り血ひとつ残さずに。魚を加えた猫を仕留めていたのだった。「本当にありがとうございました。いつもあのどら猫がうちの魚獲ってくんで。ほんと困ってたんですよ」魚屋の夫婦が。沖田にぺこりぺこりと頭を下げていた。こんくらいお安い御用ですと沖田がテキトーに応対していたその頃。神楽は少し離れたところで。脇腹を押さえつつ。空いてる方の手でネコの背中を撫でていた。「……で、あのネコどうします?殺処分が一番手っ取り早ェですが」「まぁうちで飼う気なんてないんで。お任せします」魚屋の店主が、魚が無事ならそれでいいとニコニコと話をしていると。おいクソサド!!と。イライラした神楽の呼び掛けに沖田は振り向いた。「うちで飼うぞ、このネコ!」「はぁ?何勝手抜かしてんでィ」沖田の抗議もむなしく。神楽はネコを抱えたまま。ノッシノッシと向こうへ歩いていってしまった。はァ……沖田はため息をつくしかなかった。「あ、万事屋さん。待ってください」魚屋の店主が茶封筒を差し出した。それはどら猫捕獲の報酬であった。「どーも、確かに報酬は頂きやした」「それにしても、万事屋さん。あなたたちって二人で経営なさってるんですか」「ええまぁ」「まぁ。二人ともまだお若いのに。しっかりされてるんですね」ニコニコと、魚屋の妻が微笑みながら言った。「もしかして、将来を約束されてる恋人同士とか、ですか?」「いえ全く違います」コンマ1秒で否定した沖田は、ゲンナリしていた。「なんで連れて帰るんでィ、めんどくせ」「このままじゃこいつ、死んじゃうアル。早く帰るネ!」神楽は先程までとは打って変わり。ネコに対して高圧的な態度をとるどころか。持っていた手拭いをネコの胴に巻き止血しながら。両腕に大事そうに抱えて歩いていた。ネコは茶色い毛並みを泥々と血と土で汚し。まだ生きているようではあるものの。ぐったりとして動かなかった。「お前ちょっとは手加減しろヨ。こんなネコ一匹にどんだけ酷い怪我負わせてるネ?かわいそーに」「手加減した結果がてめーのその脇腹だろ。俺がいなきゃネコ一匹もろくに捕まえらんねェくせに抜かすな」「ムッカ。相変わらずお前は、公僕みたいにテキトーで乱雑な働き方ネ。もちっとケースバイケースでやることを学べヨ!」「何を偉そーに。てめーも旦那んとこに居たときみてーにボサッとしてんな。俺ァ生活費パチ屋で稼ぐようなみみっちィことしたかねェんでな」「たく……」「だいたいてめーが勝手にうちに」「あっ!着いたヨ、ネコちゃん」神楽が沖田の言葉を遮り、タカタカと前方へ走り出したため。沖田はチッと舌打ちした。二人がたどり着いた場所。そこは一軒の小さなアパートだった。木造建てで決して綺麗とは言えない外観だが。一部屋辺りの容積がわりと広く。この町にある他の集合住宅の建物に劣るというほどでもない。1階通路を少し進み、階段を駆け上がったすぐそこにある一室の扉。そこで神楽は立ち止まった。あとに続いて階段を上った沖田は、袖の中をまさぐり、鍵を取り出し、扉を解錠した。木製の戸の取手を引き、二人は小さな土間に踏み入った。「ただいまヨー」「はーいおかえりー」二人の他に誰もいない部屋で。いつもの棒読みやり取りが響く。まずは沖田が履き物を脱ぎ踏み入る。神楽も続いて中に入る。廊下と呼ぶには足りない短い通路を抜けた先に、アパートにしては広い九畳ほどの部屋がある。そこは応接間兼、テレビやお菓子でくつろぐためのリビングでもあった。神楽はその部屋の中央、座卓のそばにちょこんと座ると。そこにあった座布団の上へネコをそっと寝かせた。そして包帯どこだっけ……と。部屋の隅にある小振りなタンスの中の引き出しを開け始めた。一方沖田は一度応接間を抜け、自身の部屋へ。そして魚屋から受け取った報酬を専用の引き出しへ締まい。再び応接間へ戻ってきた。神楽は包帯を既に見つけ、ネコの体に巻いているところであった。この応接間以外にももうひとつ、半分ほどの大きさの小さな畳の間がある。そこは専ら沖田が使う部屋だった。神楽専用の部屋へ神楽が勝手に改装しようとしたこともあったが。画策はあっけなく阻止された。基本的に女子禁制だと宣言され。意外にも神楽はそのルールを忠実に守ってあげていた。そこは距離感として誠実に対応してあげているのだ。そして応接間を挟み向かい側には、台所がある。調理台や冷蔵庫があり、沖田のそこそこの家事力でそこそこ綺麗に片付けられている。「てめーもその腹の傷消毒しといた方がいいんじゃねーの?」すっかり赤茶けた引っ掻き傷に目をやりながら、沖田は台所へと麦茶を取りに行った。先程沖田と神楽が履き物を脱いだ土間の横に、その小さな台所。さらに少し奥には厠、そして風呂場もあった。このように、部屋で1人の人間と1人の宇宙人が暮らすには。一応必要十分な設備・部屋は整っている。沖田はガラスのコップを二つ、そこそこガサツに並べられた食器棚から取り出し。冷蔵庫に冷やしていた麦茶を取り出す。それを均等にコップへ注ぐと。それらを持って神楽の元へ戻った。 神楽はネコの腹に包帯を巻き終えたところ。沖田の声を聞き、自身の怪我のことを思い出した。服の上から思いっきり引っ掻かれたそれは。すでに固まりかけていたが少しまだ痛む。「茶ァここに置いとく」「サンキュ」沖田はそう言いつつコップを座卓の上に並べ置く。神楽はそれを手にとって何口か飲みぷはーっと声をあげる。そんな慣れたやりとりを咬ませつつ。沖田は神楽のすぐ横に屈んで。その傷口を覗きこんだ。真横よりも少し背中寄りに付けられたその引っ掻き傷に。神楽は自分一人でうまく処置できずにいた。そこで、マキロンやガーゼを沖田に見せつつ、要求する。「ちょっとこれ、やって欲しいアル」「自分でやれよバカ」「できないから頼んでるアル」「あークソが」沖田は頭を掻き回しつつ。観念して神楽から物を受け取った。神楽の上の赤い服の裾を、傷口が見える程度に少し引き上げた。横腹から背中にかけての肌が露出したが。傷口はまだ少し下へと延びていた。そこで、ちょっとずらしていい?と尋ね。神楽がうんと返事をしたのを確かめてから。赤いズボンを必要最小限、下へずり下ろした。日に当たらない白い肌が垣間見える。淡々と。努めて動揺しないよう。沖田は消毒をし、ガーゼを上から押さえて止めてやった。「うぅ染みるネ」「我慢しろバカ」染みる…と少し涙目で悶える神楽を見て。我慢してんのはこっちだっつーのと。内心つっこみを入れる沖田。投げやりに手当てをした。「ハイおわり」沖田が服を元に戻し、ふと顔を上げたとき。神楽と目が合ってしまう。ほんのり顔を赤らめ、見るからに照れた表情の神楽。目と目が合った瞬間に、神楽はあっと思わず視線を避け。沖田から顔を見られないようにした。なんつー顔してんだ……と。再び脳内から抗議の声をあげたかったが。沖田が言葉にするより先にネコがにゃァと一声鳴いた。「大丈夫アルか?」沖田の存在よりも。ネコを気遣う神楽。んだよありがとーくらい言えよ、と。不満な沖田はちっと再び舌打ちした。「そのネコ本気で飼うつもりか?」「そりゃそーアル。少なくとも怪我治るまでは。ここに居させてやらないと可哀相ネ」「あんだけハデに泥棒するくらいだから根性座ってんだろィ。別に心配せんでも」「よくないアル。……ねぇ、いいでしょ?ちゃんと私が一緒にいて面倒みるネ」「………はァ」沖田はため息をついて、部屋の隅にでんと置かれていた木の板へ背中を預けた。「これからは私たち3人で万事屋をやるネ!」「3人っつーか1人と2匹だな」「1人っていうのは私アルな」「どー考えてもてめーは1匹だろィ。……あーあ、まためんどくせー動物が増えちまった」沖田が悪態をつきつつもたれ掛かってるその板。それはついこの間まで、このアパートの部屋の入り口に立て掛けていたものだった。しかし、その看板の字を訂正したいということで。一度部屋に入れられ、墨で修正された後のものだった。「 万事屋 おき◼らく 」黒く塗り潰された位置には本来「た」の字が刻まれていたはずだった。そして「らく」の文字は、自分の名前の一部をと。神楽が付け足した。そのため、平仮名の前半と後半とで微妙に字体が異なっていた。「ネコの世話もできないよーじゃ万事屋は務まらないアルヨ?」「あのなァ、言っとくけど。いつまでも俺はこんなことするつもりはねーから」「でも、そうは言っても。いつまで続けるか、いつやめるのか。まだわかんないでしょ?お互いに」「まァそりゃそーだが……」沖田には歴とした事情があり、この部屋で万事屋をやっている。そこへ数週間前、ひょんなことから神楽が転がり込んできたのだ。予想していなかった事態に沖田もはじめはかなり戸惑っていたが。しばらくすれば生活のリズムも掴めてきたため。二人の同居生活はすっかり板につきつつあったのだ。しかしまたネコがメンバーとして増えるとなると、夜兎が増えるほどではないにしても何かと面倒くさい。それに、沖田は未だに度々困惑している。「あー、今日はよく働いて疲れたアル。汗かいたネ」そう言って神楽はおもむろに服を脱ぎストリップしようとする。沖田は慌てて静止する。「おい!」「わっ!バカ!こっち見てんじゃねーヨクソサド!!」「バカはてめーだバカ!旦那らと一緒にいたときと同じように過ごしてんじゃねーや。こっちに気ィ遣え!」「何アル、お前があっち行けばいいだろ?」「俺は今から見たいテレビあんの。着替えんなら台所行くかお前専用の押し入れ行ってこいボケが」「ちぇー。つーかいちいち意識してる時点でキモいアル」「いちいち気ィつけてねーと訴えられんのは俺の方なんだよバーカ」何度も言わせんな、と。テレビのリモコンを手にする沖田。神楽はあっかんべーをしながら。着替えをタンスから取り出しつついそいそと台所へと消えた。「……あーあ、なんでこんなことになったんだか」沖田は気を揉んでいた。そもそも、年頃の男女が一つ屋根の下で何もなく過ごし続けられるわけがない。早いところ決着つけて、神楽を元の万事屋へ追い返したいところだ。だいたい、なぜあっちの万事屋メンバーはこいつを迎えに来ないのか。百歩譲って銀時や新八が来ないとしても。なぜあれだけなついていた犬までもが迎えに来ないのか。もうかれこれ数週間たつというのに。あいつが、そして、自分自身が、変なことをしでかさないか。沖田の中で、そんな不安が日々募るばかりであった。(一旦おわり) [2回]PR