言い訳 okita x kagura 2016年10月11日 とってもふわふわした感じの話。(大ざっぱですみません) どろどろとする。どろどろと、血液が体内をめぐっているのを感じる。 生臭く。暗く。混沌とした視界。 それは戦場みたいだ。と、思った。 体が、暑く。熱く………。 うだる暑さに、緊張感に、 額の汗を拭おうと腕を動かす……と思いきや、何かの重みで動かなかった。 何だ、いったい。 額にじわりと浮かんだ水分が、額の横からこめかみ、耳元へと伝い流れ落ちていくのを感じた。 蒸発などしない。だるく。熱く。へたすると痛いとすら感じる。 本当に戦場のようだと思った。 ………重みの正体は、そっと右腕にしがみついていた。「………なんだ、チャイナか」 再びまぶたを閉じようとして……いや、待て。「は? チャイナ?」 もう一度自分の腕を見た。 まごうことなきチャイナである。 え、なんでこんなところに? そんな疑問は、一瞬で解決した。 ……あ、そっか夢かこれ。 いつのまにか寝てたんだな。 わざわざつねらなくたってわかる。何せこんな状況。夢でしかあり得ない。 夢だと気づいたところで、すぐに覚めるわけでもない。 これはまたご丁寧に、夢の中でも眠っていたという設定か。 屯所の畳の上に寝っ転がって、すぐ横で腕にしがみついてすやすやと眠るチャイナ娘の体温と呼吸音を規則正しく感じ取っている。 こんな馬鹿げたシチュエーションも、存外悪くない。 日頃から目覚めの悪い俺にとって、さぞかしすっきりした目覚めを迎えられることだろう。 ……なーんて。これはこれで。どうだろうな。 しがみつく力は、普段とは相応しない弱々しい力加減で、けれど、しっかり捕らえられて離れなかった。 振り払えばいいのに振り払うことすらままならない。 だってこれは夢なんだから。 そう、夢の中でまで暴れるこたァない。 おとなしくジーッとしていればいい。 半目でしばらく睨んでみるが、いっこうに起きやしない。 なんとなく、小さなその頭を撫でてみた。 汗ばんだ髪はぴとりと手の甲に貼りつき、ぞろりと跡をひく。 薄い色素の髪は、妙に艶やかだった。 やけにリアルだ。 少し気持ち悪いほど、気持ちがいい。 ぞくりとした。 寝てるその顔、まぶた、唇……。 無言のまま、長いこと見つめている。 きっとこいつじゃなければ きっと俺じゃなければ 事後のカップルとでも言えるんじゃないかという程の空気感。 ……夢じゃなければいいのに。なんて。 こんなにも、こんなにも心を奪われてしまうのも。きっと今夢の中にいるからに違いない。 普段微塵もこちらを捕らえない青い瞳は、皮肉なことにまぶたさえ閉じていれば平然とこちらを見つめてくれる。 真っ直ぐに正面を向いてくれる。 吸い寄せられてしまいそうなほどの白い肌、そして紅い……… ああなんか、チューしてぇ…… 心のため息が漏れてしまったのか、 チャイナは小さなまぶたをうっとりと開いた。 こちらを見る。 まっすぐまっすぐ、ぶつかる視線。「……?」 寝ぼけ眼を擦りながら、ほんのり上目遣いでこちらを見上げる。 そこにはいつものふてぶてしさなど微塵もない。ただただ、目が覚めたばかりのぽかんとした表情が、そこにあった。 今度はこちらがまぶたを閉じる番。 いや、夢の中なんだ。こちとらハナからとっくに閉じてるんだろうが。 そーっと、背中を丸め、体を引き寄せた。 へっ?と、声にならない呼吸音が聞こえた気がした。けどそんなの構いやしなかった。 ぷっくりとした紅色の下唇を、吸い込んでしまった。 柔らかいむにむにとした感触をとらえたまま、 再びどろどろと熱い感情が沸き上がってきた。 あれ?何してんだろ俺。 自分ですらよくわからない。 夢にしてはなかなか覚めてくれないし冷めてもくれない。 ええい、ままよままよ。 心の赴くままに、まどろみの中を行き来していた。「………おまっ、ちょ、何を……」 私が唇の隙間から声をあげても、やめてくれない。 完っ全に寝ぼけてやがる。こいつ。シネ!今すぐシネ!! そんな敵意を投げつける視線とは裏腹に、体が、火照ってきた。 そうだ、これは きっと今、変な夢でもみてるんだ。 そうやって自分に言い聞かせた。 いや、ちがう。 そうやって自分に、言い訳した。侵入者の自分に……。 [11回]PR