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めぐりあひて

二次創作ブログです。原作者様等とは一切関係ありません。

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食欲のない秋4

食欲のない秋3のつづきです。完結。









その4、近藤と神楽




「チャイナさんにお礼をと思ってな」
「珍しいですね。姉上ではなく神楽ちゃんにプレゼントなんて」
「いやお妙さんにはもちろん俺が直接渡しに行き」
「あ、結構ですはい」


 万事屋の応接間で近藤と新八が向かい合って座っていたところ、銀時がふわああとあくびをしながら入ってきた。
 そして、机の上に広げられた、甘い香りのするギフトボックスに、うっひょー!!と目を覚ます。


「銀さんだめですよ、それ神楽ちゃん宛です」
「よう万事屋、俺の居ない間に総悟が世話になったみたいでな。お陰様で、もう随分と回復してる」
「ほー。俺はなんかよく知らねーけどまぁメンタル弱ェからなーあのガキ」
「銀さんも似たようなもんでしょ、ドSコンビとして」
「んなこたねーよ。神楽に足臭いとか言われんのも既に慣れっこだよ?」


 銀時が蓋を開けようとうにうに動く手を新八がペチペチと叩いて阻止しようとしている間、近藤はきょろきょろと辺りを見渡した。


「で、チャイナさんはどこへ?」
「定春に乗って散歩に行きましたよ」
「そうか……んじゃこれ渡しといてくれないか」
「わかりました」
「おいおいマジでいいのか??たったお粥ひとつ作って持ってったくれェでこんなに菓子たっくさん」
「菓子っつってもそんな大したもんじゃねーが……これとかただのクッキーとかチョコだしこっちはただの酢昆布。まぁでも総悟いわくこれが一番喜ぶんだと」
「そっか……沖田さんチョイスなんですね」


 新八が納得していると、玄関先からがらがらがら!と勢いよく戸が開けられる音がした。


「ただいまヨー」
「あ、帰ってきた。神楽ちゃーんおかえりー!」
「神楽ー、こっち来てみろ」
「何アルかー?」


 タカタカと廊下を走る音が短く聞こえた後、応接間にひょっこり姿を現したのは泥だらけの神楽だった。
 神楽は目を丸くしきょとんとした。


「うわっ!ゴリアル!」
「うわって何??」


 と、神楽はすぐに机の上に広げられたお菓子が目に留まった。するとゴリラの存在にも構わず、瞬く間に目を輝かせた。


「うはぁー!酢昆布大量アルー!!」


 全部チャイナ娘宛だ、と近藤が付け加えると、全力で机に飛びつこうとする神楽。そんな神楽を、新八が眼鏡を光らせながら阻止した。


「神楽ちゃんまず手を洗いましょう」
「ちぇー仕方ないアルなぁ……」
「神楽あと服も汚ェから着替えてこい」
「銀ちゃん何それキモいアル」
「何!?なんか新八への態度と違くね!?反抗期ですかコノヤロー!!」


 その場に三角座りでしゃがみこみ打たれ弱っている銀時を尻目に、泥々の服を着た神楽はノッシノッシと部屋を後にし洗面台へと向かった。


「あれは……また総悟と派手にやり合ったのか?」
「たぶんそうですね。よっちゃんたちと遊んで帰ってきたときはあんな風にはなりませんから……」


 沖田の謹慎は解かれ、再び調子を取り戻しているのだろうことは、神楽の服装の泥んこ具合を見ればわかった。

 神楽は銀時や新八に、弁当屋の依頼について話をすることはなかった。ただ淡々と、店の主人の怪我が完治するまで依頼をこなし、報酬も受け取り、その報酬を独り占めした。それは、新八も銀時もわかっていて何も言わなかった。
 弁当屋の依頼が終わった後も、神楽は時たま台所に立つ。そして最近は、少しずつ家事をこなすようにもなっていた。


「新八ィー、これ何洗剤で洗えばいいアルか?」


 清潔なチャイナ服に着替えた神楽が、先程まで着ていた服のタグを指で掴みながら再び応接間に顔を覗かせた。
 新八が歩み寄った。


「ん?どれどれ………あ、これは普通にジャブジャブ洗えるやつだ。普通コースでいいよ、洗剤は右の棚の……」
「おっけーアル!もうバッチリネ!」


 ニコッと無邪気にあどけなく笑う神楽。
 その表情に近藤は一瞬、昔の沖田の表情を重ねて見てしまった。そして内心少し笑えてしまう。

 まだ成人も迎えていない沖田に、世間の大人以上の環境と責任を与え続けているのは、紛れもなく自分だという自覚が近藤にはあった。
 沖田の普段の近藤への接し方は、土方ほどではないにせよ、雑だったり酷かったりもする。
 しかし、文句ひとつ言わず組織を支えてくれる、純粋についてきてくれる沖田に甘え、頼ってしまっているのは自分かもしれないと感じた。
 食欲不振に陥っても、そんな素振りすら見せようともせず強がり続けていた沖田を思い返すと、胸が詰まる思いがする。


「……なぁチャイナ娘」
「何アル?」


 神楽と出会い、犬猿の仲と周りも呆れるような間柄に至り、沖田の心が少しだけ昔の幼かったときのようにほどけてきた気がする。
 それは本来沖田が持っているはずのあどけない姿、そして、それを引き出してしまう神楽の力。
 歳上ばかりに囲まれてきた沖田が、初めて出会った外部の存在。友達と言うには腐れすぎた縁かもしれない。それでもどうか、この先もその縁を繋いでやっていてほしいと、近藤は密かに願わずにはいられない。


「これからも総悟のことよろしくな」


 穏やかな声で話しかける近藤に、神楽はぎょっ!と二の腕を両手で擦るポーズをしつつ、


「却下アル!」


 そのまま一度入り口の陰に隠れてしまった。


「ガハハ!君らは仲悪ィなほんっと!」


 近藤が大きく笑いながらそう言うと、再びそろりと顔を覗かせた神楽。


「……そういやあいつ、ごはんちゃんといただきますしてるアルか?」
「おう、そういや最近は挨拶なんかもちゃんとするようなってきたなアイツ」
「……なら、良かったアル」


 再びニッと笑って、神楽は応接間を後にした。

 神楽と近藤の会話を不思議そうに聞いていた銀時は、箱の菓子をひとつ取り出し開封しつつ、近藤に尋ねた。


「何?挨拶って?ぽぽぽぽーん?」
「銀さんそれ古くないですか」
「別に古くねーよ?賞味期限まだ先だもん」
「て、ちょ!どさくさに紛れて!!」


 菓子を争奪する二人に、近藤は言った。


「まぁ……チャイナさんの魔法みたいなもんだろうな」


 どこかで沖田の心の支えとなっている神楽に、近藤は感謝する気持ち半分、沖田の心を半分とられたような少し寂しい気持ちも半分だった。


(おわり)

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