忍者ブログ

めぐりあひて

二次創作ブログです。原作者様等とは一切関係ありません。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

黄ノ葉ッパ

落ち葉だけに。山場なし落ち場なし。










 秋めく空から降ってきた銀杏の葉が、隣にいるこいつの頭に乗っかった。
 私たちは同じ公園に向かって、銀杏並木を歩いていたところだった。
 扇形の黄色い葉が1枚だけ。まっすぐなこいつの横髪にそろりと引っ掛かったまま。それはまるで髪飾りみたいだと思った。
 隣を歩く私は、その髪飾りを傘の縁からちらちら覗いていた。こいつは気づいていないのか?振り払おうともせず。悠々と風を切って早歩きしている。


「てめー……今日こそは決着付けてやらァ」


 スタスタと私たちは足踏み揃えて歩いていたのに。
 なんとなく足取りが変わった私に気づいたか。ふっと立ち止まって私の顔を覗きこんできた。


「何、なんか顔に付いてるか」
「ううん……顔ではないアル」
「は?」


 私はフンと傘の影でこいつの顔を隠して再び歩き続けた。こっち見て来んなヨうぜぇー。
 すると。こいつもまた気にせずに歩き出した。また並んで歩いている私たち。

 スタスタッと。向かう先は公園のお決まりのベンチの前。そこに到着した瞬間、開戦する。それが暗黙のルールだ。傘と刀で。でもその前に、素手と素手で。お互い力の限り反発し合う。いつもの戦闘。
 でも、そしたら今こいつの頭に乗ってる銀杏の葉は地面に落ちてしまうだろう。それはちょっと可哀想だ。
 だから私は、救出することにした。
 歩きながら手を伸ばして、こいつの耳元に引っ掛かった銀杏の葉を、すくい取ってあげ……

 ようとしたのに、

 こいつの頭がフンッ!と下へ消えた。
 すると、銀杏の葉は宙に取り残されたままこいつの頭から離れた。空中にふわり。浮いたのち、ひらりひらりと落下していく。


「あ!落ちちゃうっ!」


 私は手を伸ばすけど。銀杏の葉はするりと踊ってすり抜けた。何度か掴みかかるけど、するりするりと葉は舞うばかり。
 葉っぱと格闘してて、こいつの存在をすっかり忘れてた。あわあわする私の手を、下からむにっと掴んできやがった。


「先制攻撃は反則でィ」


 こいつは私が頭を殴りにかかったと勘違いしたのだろうか。けれど、私の手が追うものを見て。なんだこれが原因かとようやく気づいたようで。手を離す。
 でもそうこうしてる間に。銀杏の葉は地面に着地してしまった。


「あーあ、せっかく綺麗に乗ってたのに!」


 私が人差し指で銀杏の葉を弄っていると。隣にしゃがみこんだクソサド。お前のせいで葉っぱ地面に落ちちゃった。


「これさっきまでお前の髪に付いてたんだヨ」
「何でィ、欲しかったんなら言やァ良かったのに」
「要らないアル。お前の頭に引っ掛かったもんなんて変な菌が付いてるネ」


 地面の上に落ちたといっても。土は乾いていてそんなに泥もついていない。私は拾い上げてパッパと土粒を払ってあげた。そして、再びこいつの耳元に手を伸ばして引っ掛けてやった。


「返上してやるアル」


 実はさっきからずっと思ってた。
 こいつの薄い色素の髪が、銀杏の鮮やかな黄色と同化してて。なんだか綺麗だなって思って。
 だから復元してあげた。


「一回落ちたもんじゃねーか。ばっちィー」
「お前の頭の菌の方がよっぽどばっちィーアル」


 私がこいつの髪に触れた指をこれ見よがしにゴシゴシしている間。こいつはひょぃっと銀杏の葉を自らの髪から外した。茎部分を持って、裏、表と目を寄せて眺めている。しゃがみこんだまま。一体私たちは何してるんだろう。よくわからない。
 ただ私は。秋の黄色い並木道の中で。そのくりりとした瞳に小さく映りこんだ黄色の葉を。まじまじと見つめていた。


「てっきり攻撃しかけてきたかと思った」
「バカなやつアル。せっかく優しくとってあげよーとしたのにさ」


 私がおどけてそう言うと。じゃー、と。指につまんでいたその葉を、私のこめかみに挿し込んできた。


「お前が付けとけ。ガサツ女がちったァ可愛くなんだろ」
「私はいつだって可愛いアル」


 銀杏を飾られたまま当然のように言い返してやると。フッとたまらず笑みをこぼされた。
 こいつのそんな表情に、私はなぜだかホッと安心する。
 人間らしいとこ、あるアルな。
 こいつに穏やかな表情を見せられると。レアなものを見れた気がしてラッキーな気分になる。それでも最近、そんな表情を見る機会は増えてきた気がする。


「可愛い女は自分で可愛いって言わねーよ」
「ムッカ!おい向こうで勝負しろコラ!」
「上等でィクソアマ」


 駆け出した私たちの足元で舞う黄色の絨毯。

 お前は汚れた目をしているといつか自分で言っていた。けれど、汚れてる人は自分で汚れてるなんて言わないヨ。さっきだって、綺麗な黄色を瞳に映してた。とっても無邪気な目をしてた。汚れた目なんてしていない。
お前は、どこにでもいる普っ通ぅのクソガキアル。
 銀杏と同じ。どこにでもある。ただのひらひら舞ってる綺麗な葉っぱだヨ。



拍手[5回]

PR