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めぐりあひて

二次創作ブログです。原作者様等とは一切関係ありません。

Who is Santa?4

Who is Santa?3のつづき。

サンタは意外と近くに居る









ミツバがゆっくりと目を開けると、そこには白い天井があった。


「……ここは」


辺りをキョロキョロと見回す。
自分の体の上には布団が被せられ、その上には顔をうつむけて眠る弟の姿が見えた。


「病院だ」


ぶっきらぼうな声が聞こえた。
ミツバが総悟よりさらに奥へと視線をのばすと、そこには腕を組んで自分を見下ろしている土方がいた。


「……私、いったい、」


まだぼんやりとする頭の中をめぐらせた。
何故自分が今病院にいるのかを思い出そうとするが、頭がまだ働かない。


「女が一人で夜中に出歩いてんじゃねーよ。ましてこんな寒い日に」


土方の投げ捨てるような言葉。
ミツバはすべてを思い起こした。


「……ごめんなさい。本当に、ごめんなさい」


ミツバが謝るが、土方は何も答えない。
ミツバに背を向け、数歩歩いて窓際に寄った。外は太陽の光で明るく照らされている。夜明けはとおに迎えていたのだ。
白く温かな光が部屋の中に差し込んでいた。

ここは武州の隣町にある病院。
土方は疲れ切ってぐっすり眠っている総悟のことを見ながら話した。


「こいつがどんだけお前のこと心配してたか。トラックまでぶっ飛ばしてくるぐらいだ」
「……そうよね、私、」


土方は視線を移してミツバを見た。
ミツバは上半身を起こして、ベッドの上に座っていた。


「……総ちゃんの姉、失格ね」


ミツバはうつむいて、涙混じりな声でそう言った。
そして軽く咳き込む。


「寝てろ。肺に障る」


土方はミツバの元に歩み寄り、ミツバが体制を横にしたあと布団をそっとかけてやった。


「みんなに心配かけて……私、なんて謝ったらいいか」


小さな声で力なくつぶやくミツバ。
それを見て、しばらく考えたあと土方は淡々とした口調でミツバに言った。


「……サンタってやつはほんとに居るのかもしれねぇよ」


突然サンタを話題に出してきた土方を不思議に思い、ミツバはそっと黙って土方の話に耳を傾けた。
土方はなんだか続きを言いにくそうに頭をポリポリと掻いた。


「十四郎さん?」


ミツバの不思議そうな声に、土方は仕方がなさそうに続けた。


「暗い中走りながら願ったんだ、サンタに」
「サンタさんに?」


ミツバはスヤスヤと眠る弟の姿に視線を移し、そしてもう一度土方を見上げた。


「……『あんたが見つかるように』っつってな、そしたら見つかったんだ」


土方がミツバに背中を向けたままそう言う。
ミツバはそんな土方をとても愛しく感じた。


「……フフッ」


思わず声に出して笑ってしまった。
土方は少し驚いてミツバの方へ再び振り返った。


「笑ってんじゃねーぞコラ」
「ごめんなさい」


ミツバは楽しそうに話した。
そんな顔色の良いミツバを見て、土方は心の中で密かに安堵していた。


「ほんとはね…私がサンタさんになりたかったの」


そう切り出したミツバ。土方は一瞬意味をつかめなかった。


「木刀……十四郎さんも用意してくれていたのよね」
「……あんた、知ってたのか?」


土方は思わず驚く。
近藤はたしか、まだあのときミツバに伝えていないと言っていたはず…。


「ごめんなさい。実は、ちゃんと近藤さんから聞いていたの。でも、私がそれを知ってることを十四郎さんには言わないでってお願いしたから……」


土方はミツバに歩み寄った。目は瞳孔が開き、強く責めるようにミツバを見つめた。


「知ってたんならなおさら聞こうか。あんな危ねぇことしでかした訳を」


土方が怒っていることは、わかっていた。
きちんと反省しなければならないことも、わかっていた。
けれど、ミツバは、まっすぐに土方へ目を向けた。訴えかけるような目だった。


「……悔しかったの、私」


ミツバは布団の裾をギュッと握って言った。


「まるで、十四郎さんが総ちゃんのサンタさんになるみたいで。悔しかった。私の方が、総ちゃんのこと、たくさん知ってる。道場のみんなより、十四郎さんよりも。……私が、サンタさんになってあげたかったの。だから…」


ミツバのいつになく強気な言葉に、土方は少しだけ戸惑う。だがすぐに調子を戻した。


「あんたは女なんだ。しかも体が弱い。……だが、総悟の姉は間違いなくあんただ。危険な目に合ってまで意地張る必要なんてねぇんだ」
「……そうね。いつも、そうだった。私は、あなたたちのこと、見てるだけしかできなかった」


楽しそうにはしゃぐ皆を見て。
その輪の中に入りたくても、入れなかった。
ただ、差し入れとか、一緒にご飯を食べにいくとか。そんなことでしか一緒に過ごせる口実ができなくて。
男の子同士で楽しそうに話していれば、今は自分は入っていけないなと感じ、その場を立ち去ることもしばしば。

毎日の出来事を嬉しそうに、ときには悔しそうに話してくれる弟のことが、
本当は羨ましかった。
買い物ひとつ、ろくにできない私は。輪に入れるわけがない。

ミツバの意図を察すると、土方は冷たい口調で言う。


「……見たんだろ、俺の姿を」
「姿…?」
「俺は、平気で二人も刺し殺せるような、バラガキだ」


その言葉を聞くと、ミツバは黙って頷いた。

ミツバは確かに見た。
血を飛び散らしながら倒れる男の奥に。冷淡非情な目をして刀を振り上げていた土方の姿を、見た。

怖くはなかった。
けれど、同じことを自分にもできるとは、到底思えなかった。

単にはしゃいでるだけじゃない。単に鍛えてるだけじゃない。
いざとなれば躊躇なく人を殺せる覚悟。そんなもの、自分にはない。それは、男だ女だ、体が弱いかどうかは関係ないことだ。

……そう。ミツバは理解した。
道場のみんなのようになりたいなんて、容易く考えること自体、間違っていたのだ。


「あんたは、そんな人間になるべきじゃない」


土方の穏やかな言葉に、ミツバの瞳から涙がぽろり、ぽろりとこぼれた。

この人は、厳しい口調で、責めるように話すけれど。優しさと強さを胸のうちに秘めている。
こんなに自分勝手な私にすら、その優しさを向けてくれる。

だから、私は、
あなたにこんなに惹かれてしまうのね。
情けないけれど、私は、あなたのようになりたかった。あなたのように。

この人は、総ちゃんだけでなく、私にとってもサンタなのかもしれない。
言葉で言えないような大切なものを、与えてくれるのだから。

ミツバはその気持ちを言わなかった。
言ったところで、また怒られるだけだと思ったからだった。

そのとき……ミツバはふと意識を下に向けた。
うん……と目を擦りながら、顔をあげた総悟と、目と目が合った。
総悟は寝ぼけ眼から驚いた目へと一瞬にして切り替わる。そして病室にもう一人いることを察知すると、使い込まれたその木刀を抜いた。


「……おい、てめぇ何姉上泣かせてんだ!」


木刀の先端を勢いよく土方の首もと向けて突きつけた。


「総ちゃん、ダメよ」


ミツバは涙を指で拭い取り、総悟の淡い色の髪をさらさらと撫でた。
きょとんとして、総悟はミツバを見ていた。


「言ったでしょう?いい子にしていないとサンタさんは来ないよって」


サンタという単語に反応し、総悟はしぶしぶと木刀を腰に戻した。
バーカと内心毒づく土方。
総悟を突き動かすのはいつも、姉であるミツバ絡みのことであった。いくら剣が振れても、人を切れても。ミツバには敵わないと思うことだって土方にはしばしばあった。


「……総ちゃん、助けにきてくれて、ありがとう。ほんとにありがとう」


ミツバの声に、総悟は嬉しそうに笑った。


「……俺、プレゼントなんて要りやせん。姉上が無事ならそれでいいんでさァ」


そう言って手をぎゅっと握ってくれた総悟のことを、ミツバはゆっくりと抱き締めた。


「……総ちゃん、あなたは私の自慢の弟よ」


二人の姿に、土方は誰にも見られることなく、笑みがこぼれた。
口もきいてない、会ってもいない。
けれど、手を繋いでくれた、肩車してくれた。とある背中を思い浮かべながら。






*****

翌日の朝。

ミツバは前日には回復し、入院することなく、夕方には武州へ帰ってきていた。そして、沖田家ではいつもどおりの朝を迎えようとしていた。


総悟は太陽の光に目を擦って、もぞもぞと布団から上半身を起こした。
ふわぁぁっと大きなあくびをひとつしたあと、道場へ行く準備をしようと体を起こす。
その時だった。


「痛っ!」


足で何か固いものを踏んでしまう。
痛ででっとその足をどかし、そこにある長細い何かを数秒間ジッとながめていた。


「……これは?」


総悟は一瞬何が起こったのかわからなかった。
頭の中をぐるぐるといろいろな思考が駆け巡り
そして一つの答えに辿り着いた。


「サ、サ………」



サンタさんだぁぁぁ!!!



と、突然の叫び声に、隣の布団で眠っていたミツバは目を覚ました。


「姉上!見てくだせィ!!」


総悟にゆさゆさと体を揺すられ、ミツバは目をこすった。


「サンタさんが僕にプレゼント持ってきてくれたんです!」


嬉しそうにそう言う総悟の両手には、それぞれ一本ずつ、合計二本の木刀が握られていた。

一本は昨日ミツバが買ったもの。近藤が見つけ、幸いたいして汚れておらず、大事に持って帰られてきたものだとミツバは知っていた。
もう一本は、見慣れない木刀だった。けれど誰が用意してくれたものなのか、ミツバは知っていた。


「まぁ、二つももらったのね。総ちゃんがすごくいい子にしていたからね」
「すごい嬉しいっス。なんでサンタさん、僕の欲しかったものわかったんだろ。しかも二つも!」
「総ちゃんがお稽古頑張ってるから、きっとサンタさんも応援してくれてるのね」
「わぁい!!僕これからも稽古頑張ります!あと、これからもいい子でいます!!」


無邪気にはしゃぐ弟の姿を愛しく思う。
先に布団から出て奥の部屋へと消えた総悟に続き、ミツバも布団から起き上がろうとした。片手を床についた、その時、


「……?!」


固いものを手の下に感じて、そっと手を退す。
すると、そこには小さな包みがあった。


「……これは?」


驚いてミツバはそっと包みの紐を解いた。
その中には、木製の小さくてかわいらしい髪飾りが入っていた。
売っていたものというよりどちらかというと手作りのものであることは見てわかった。


「まさか……」


ミツバは思い当たる人物を思いつき、驚いて思わず片手で口を覆った。


まさか、本当にあの人は
サンタさんなんだ



そうミツバが思っていると、向こうの縁側の方から総悟の声が聞こえてきた。


「だーかーらっ、なんでお前は人ん家にズカズカ入って来るんだよ土方ーっ!!」




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