会話4 neji x hinata 2012年12月29日 会話3のつづき。完結。ネジの一撃必殺をくらうヒナタ。 新しくできた甘味処の中は広く、人気で客もたくさんいたがそれほどガヤガヤとはしていない。落ち着いて会話ができるような環境だった。「おいしいですね」「はい、とっても」甘味処でおいしいですねと言うのは自分の性格ではないとネジは思いつつも、今日ばかりは気にしないことにしていた。小さなパフェを目の前に、嬉しそうに微笑むヒナタを見てネジは少し安堵する。こういうときテンテンに相談しておいてよかったと思っていた。初めこそヒナタは戸惑いつつ、あまり口も開くこともなく、ネジにエスコートされるままここまで来たものの。店内に入ってからは少し落ち着いたようで、表情を緩めていた。「ネジ兄さん」「なんですか」「その、気をつかわせてばかりで、すみません」宗家にネジ兄さんが来てもいつもあんまり話が上手に出来ないし、わたしが好きな甘いものを食べに連れ出してくれたり、「甘いものは、ネジ兄さんは大丈夫ですか」「大丈夫だからあなたを連れて来たんですよ」「でも、甘いものは苦手って聞いたことがあって…」「昔はね。でも、班のメンバーに慣らされて今はそんなことはないんです。 だからほんとに気にしないでください」「……ありがとう」そう言って照れて笑うヒナタに、ネジは昔のヒナタの顔を思い出さずにはいられない。両手に花をいっぱいにして、その片手をネジへ遠慮がちに差し出す。そうだ、小さい頃から恥ずかしがり屋で言葉少ななヒナタだったが、それでもネジにとっては、その照れ笑いを見守っているだけで十分気持ちが満たされた。家に帰ればヒザシがほめてくれる。ちゃんとヒナタ様を守ったのかい、偉いね、と。それもまた嬉しいことだった。いつしか忘れていたけれど、たとえ会話がなくても、もしかしたら十分なのかもしれない。そう思っていたとき、今度はヒナタから話題を持ちかけられる。「私、家ではうまく話せないんです」「ヒアシ様の前では、ということですか…」「お父様の前ではというより…家では、かな。 外では、もう少しこんなふうに話が出来るんですけれど なんだか、家では緊張してしまって」普通反対ですよね、とどこか寂しそうな表情を一瞬見せたのを、ネジは見逃さなかった。ちょうど、ヒアシがハナビの話を嬉しそうにしていたときと同じように、ヒナタは右手の人差し指を口の前にあてていた。いわゆる自己防衛行為。「プレッシャー…でしょうか」「……いえ、私が弱いだけです」ネジ兄さんやハナビのように、忍術の素質に長けていない。それなのに、宗家の長女に生まれてしまった。もしハナビと生まれる順番が逆だったら、あるいは、ネジ兄さんと反対だったら…と。ヒナタはゆっくりと、でも自分の思いをうつむきながら吐露する。そんなヒナタを複雑な気持ちで見て、そして聞いていた。ネジは中忍試験の時のヒナタのことを思い出していた。何度でも立ち上がってきたヒナタと、今目の前にいる弱気なヒナタはどちらも本当のヒナタの姿で。恐らくネジが日向家の運命と葛藤していたように、ヒナタもまた、自らの立場と葛藤していたのだろうと。そんなヒナタの本当の姿を、会話を通して垣間見たような。ネジは、甘味処に来たら話そうと思っていたあるキーワードをここで持ち出そうと決めた。それは数日前、リーからヒントをもらったものだった。「ヒナタ様、」「はい」「ナルトのことが好きなんですよね」!?あまりにも予想外の言葉にヒナタの全思考が停止した。この話の流れで、この従兄の口から、まさか飛び出すとは思ってもいなかった単語が飛び出したからだ。ヒナタは硬直し、力の入らなくなった手の指と指の間から銀スプーンが滑り落ちた。食器のぶつかるカランという音が響いた。「すみません…えっと、ナルトのことを、尊敬していますよね」尊敬という言葉に置き換えられたことで、多少ヒナタは冷静さを取り戻し、顔は紅潮させたまま、けれど座り直して体勢を整えた。「え、えっと…は、はい…… とっても、そ、尊敬しています」あまりにも予想通りの反応すぎてネジも戸惑いつつ、けれどそのまま話を続けた。「あなたはもっと自信を持っていいんですよ」ナルトのことを早くから尊敬していた。あなたには、ナルトと同じような大切なものを持っている。きっとその証です。そう言うネジもナルトのことは尊敬していた。どたばたで全く周りが見えていない。けれど誰よりもまっすぐで、光のように眩しくて。暗闇の中で立ち止まっていた自分さえも、外へと連れ出してくれた。「ネジ兄さん…」「今日は、あなたに用事があるわけではなかったんですが、 あなたと直接お話したかっただけなんです。 今まであまりまともに会話したこと、ありませんでしたから」「……ありがとう」「いいえ、こちらこそ」ヒナタはいつの間にかネジと目を合わせたまま会話していた。思えば何年ぶりなんだろう。ずっとネジを避けてきた。それは、才に恵まれているのに分家に生まれ、呪印を施された姿を見るのが辛かったから。それと共に、宗家に生まれたにもかかわらず、なにも出来ずにいる自分を見られることがこわかったから。けれど、もしかしたら日向家にとらわれていたのは私も同じだったのかもしれない。もしナルトに出会わなければ、暗闇のなかで迷いこんでいて抜け出せなくなってしまったのは、私だったかもしれない。何ももう、気にしなくていいのかもしれない。ヒナタはそう思い始めていた。「今度、お父様に修行を頼んでみようと思います」帰り道。まだ暗くなる前の夕暮れ時。道には駆け出してすれ違っていく子供たちが数人。ネジは夕日に照らされてオレンジみのかかったヒナタの顔を覗きこむ。「たぶん、まだ早いって言われるけど それでも、私から動かないとって。思いました」その言葉に迷いは感じられず、ネジは少し安心した。会話から見えることもあれば、どれだけ会話をしても見えないこともある。けれど確実にヒナタの気持ちに近づけたような気がした。この人を守っていく。それは運命ではなくて、自分で思った。守りたいと。だからそのためにも、この人のことを知っていきたい。少しずつ。空いてしまった時間を埋めるように。少しずつ。「さようなら」お互いに交わしたさよならの言葉、笑顔で手をふって離れていく二つの影。また明日。その短い会話が、二人にとってまた少しずつ近づくための言葉になるように。 [1回]PR