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めぐりあひて

二次創作ブログです。原作者様等とは一切関係ありません。

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祭りのあと

久しぶりの3Z。ワンライで作成したあと若干付けたしました。
二人がずっと変わらないでいてくれたらなと。










 

 それは、高校で年に一度の文化祭、の、後夜祭。
 それはそれは、盛り上がったフィナーレだった。

 非日常のどんちゃん騒ぎがひとしきりおさまった後にやってくる。何かの虚無感。
 神楽は教室の窓際に頬杖をついて、暮れ行く空をなんとなしに眺めていた。
 カラスがカーカーと鳴くには少し暗くなりすぎた頃合い。陽の当たる時間がだんだんと短くなるこの季節。日光が苦手な神楽にとってそれはありがたいことのはずなのに、どこか寂しい気持ちなのは何故だろう。思い耽っていた。


「さーて、これで終わりだな」


 教室の窓辺に佇んでいた神楽は、その声のする廊下側の方へと振り返った。
 放課後の、しかも文化祭終わりの教室は、本当に誰もいない状態。もの悲しい。そんな景色にぽつんと、「S」と書かれたよくわからないインナーを着ている男子高校生が一人。
 髪はややバサバサと乱れて、肌寒くなり始めたというのにまだ頑なに着ている夏用の白シャツはどこか埃っぽさをまとっていた。


「あの大量の段ボール全部片したアルか。すげぇな!」
「すげぇなじゃねーよ。人に後片付け全部押し付けやがって」
「風紀委員なんだからちゃんと働けヨ」


 チッと文句を垂れながらも、また沖田はその場で屈んだ。先程から何度も繰り返しているこの作業。よっ、と短い声と共に持ち上げたのは、クラスの出店の看板だった。
 もうお役ごめん。前日まで皆で一生懸命作っていた巨大な看板だって、今日という日が終わればゴミになる。
 沖田に引きずられながら運ばれるその看板を見て、なんとも言えない気持ちになった神楽は、たまらず尋ねた。


「それ捨てちゃうアルか」
「捨てるに決まってんだろ。使いどころもなけりゃ保管場所もねぇんだし」
「………もったいないヨ」
「じゃぁテメーが持って帰るか?」

「………邪魔になるだけアル」
「ほーらな」


 沖田の身長の2倍くらいはあるだろう看板。これを担いで、沖田は教室をあとにした。


「………待つネ!私も手伝う!」


 そう呼び掛けて、窓辺から廊下の方へぴょんぴょんと机を飛び越えた神楽。
 祭りの直後は不規則にブースを作っていた机や椅子たちも、今は風紀委員や美化委員が駆り出されたせいで、きっちり元の並びに行儀よくおさまっていた。
 そんな整頓された教室を、なんとなくぐちゃぐちゃに巻き戻してみたくて、神楽が沖田のもとへ駆けつけるときにドタンガタンとちょっと散らかした。


「あーあせっかく綺麗にしたってのに」


 沖田は眉を潜める。怒っているのではない。自由奔放だなとちょっと感心すら覚えているのだ。


「後でまたお前が片せばいいネ!」
「お前も手伝え」
「嫌アル!」


 そう言いながら、神楽はひょぃっと、沖田が抱えて運んでいた大型の看板を奪い取って階段へ駆け出していった。


「………たく、手伝うのか手伝わねぇのかどっちだよ」


 相変わらずどこから湧くのか不明な馬鹿力に呆れつつ、手持ち無沙汰になってしまった沖田は笑いまじりに神楽のあとをついていった。



















 ガタンッと、その看板がごみ捨て場の地べたに置かれる。フゥーッと、神楽は額に少しだけ浮かんだ汗をぬぐいつつため息をついた。


「これで学校のお祭りともおさらばアルナ」


 短くそう口にした神楽の横顔を、沖田は見ていた。神楽は目の前の、火がついていない焼却炉横に放置されたZ組の看板を名残惜しそうに見つめていた。


「あとは受験だけだ……」


 沖田はポッケに手を突っ込みながらそう口にする。うわぁやだ聞きたくないアルー!と両手で耳を塞ぐしぐさをする神楽に、沖田は笑った。


「つーかチャイナも受験すんの?」


 てっきりプー太郎になるかと思ってた。そんなことを言われるのももう何回目か。そんなにお前は私にプー太郎になってほしいのかヨ! 神楽も負けじと、これで何度目かの抗議を唱えた。


「俺と付き合えばいいじゃん。俺が養ってやる」


 さらりと口にする沖田のその言葉が冗談混じりなことはわかってる。
 だから神楽も、本気で相手になんかしない。してやるもんか。そう思っていた。


「誰がお前なんかと! それなら銀ちゃんとお付き合いする方がまだまっしアル!」
「残念ながら、銀八にはカノジョができたみたいだからな」
「………知ってるヨ」


 そんなの、文化祭の始まる前から噂になっていたことは知っている。
 神楽も半信半疑でいたけれど、あの人と銀八が一緒に手を繋いで歩いているところを見て、確信した。そっか……噂は本当だったんだと。
 その女性のことは神楽だって好きだ。でもなぜだろう、胸の奥が痛くなる。
 あんなに彼女ほしい彼女できないぜコノヤローとしょっちゅうボヤいていたダメ教師だったのに、変わってしまうものだなぁ……。



「なんか………あれアルな。世の中全部、文化祭みたいなもんネ」


 沖田が神楽の言葉の意図を一瞬掴めずに押し黙る。文化祭? 毎日文化祭ならいいじゃねぇか授業もなくなるし。そんな疑問。
 神楽は、今し方捨てられた看板に背を向けて、うーんと背伸びした。両腕を高く上げて体をのばすと、沖田同様まだ頑なに着ている夏服の、セーラー服が少し上方へずれて、へその辺りがチラリと垣間見えていた。
 沖田はなんとなく視線をそらした。神楽は続けて話をする。


「何事も世の中ぜーんぶ、終わりがあるアルナ。なんか実感わかないネ………」


 寂しげな声でそう言う神楽に、そういうことかと理解する沖田。そして、神楽をたしなめるくらいのつもりで、言ってやる。


「テメーは永遠に高校生でいれるとでも思ってたわけ?」
「は? ンなわけないダロ!」
「じゃぁ何を今更なことを」


 沖田がそう言いつつ焼却炉前から立ち去ろうとするので神楽もあわててその後に続いた。


「何事も終わるもんは、終わる。そこはもう割り切って進むしかねぇよ」
「………文化祭、ずっと続いてほしかったアル」
「続いてたら続いてたでダメになるだろィ。何事も終止符があって初めて大事なもんになる。同じものがいつまでも続いたって、きっとロクなことがねぇんだ」

「……なんでお前は、そんなに冷静アルか」
「冷静?」
「たまにすっごい大人みたいなこと言うアル、お前。いつもは暴れまわってるただのクソガキのくせに」
「……いや、それテメーにだけは言われたかねぇよ」


 沖田としてはたまに真面目に委員会の仕事もこなしているし。勉強はサボりつつも随所必要な範囲でやってはいるし。剣道部はわりかしまともに通っている………
 ………いや、通っていた、か。もう数ヵ月前に引退したのだから。

 部活も、行事も、普段の日常でさえも。何もかも終わっていくのだ。終わって、何も知らない世界へと放り出される。サザエさん方式なんてこの世には存在しない。


「そんなに終わるのが嫌なら…………言ってんだろ。………俺と結婚しよっつって」


 沖田が静かな声で呟くのは、冗談なのか、それとも……。
 あーあ。こいつはまた急にすっとぼけたこと言い出した。やっぱりガキだな。
 そう思った神楽は、はいはいお前の告白はわかったよと言わんばかりに軽くあしらった。

 そんな神楽の反応に、人知れず虚しさを覚えているのは沖田の方だ。
 本当は誰よりも、永遠に、神楽とのこの関係が続いてほしいと願っているのも、沖田の方なのに。

 あまのじゃくな沖田は、永遠なんてあるわけないと口走る。それはきっと、「そんなことないよ」と神楽の声で言ってほしい………そんな気持ちからだったのに。





「………でもたしかに、結婚したらずっと一緒にいられるのかもしれないナ」


 神楽から突然の声に、えっ?と思わず振り返る沖田。
 ニッと歯を見せて笑っている神楽。


「ま、お前と結婚は普通に嫌だけどナ」


 世の中そんなに甘くないもんだ。沖田は痛感する。


「……こっちがゴメンこうむらァ」
「お前結局どっちアルか」


 やっぱからかってるだけかヨ!と神楽は履いていた上履きシューズを沖田めがけて思いっきり脱ぎ飛ばした。と、沖田がこれをかわして同じように対抗する。
 突然に始まったいつものタイマン勝負。それを宿直当番用の部屋の窓から眺めていた銀八は、タバコをふかしつつやれやれと呆れていた。


「あいつら全然変わんねぇな」


 いつもあんな調子だ。
 この先、この高校を卒業して何年たっても、
 たとえどこかの平行世界に行っても、
 ……変わらないものというのは、もしかするとあるのかもしれない。

 そんなことを考えつつ、銀八は苦笑いしていた。その頬にはひっぱたかれた痕。さぁお約束。いつものように、銀八はついさっきフられたばかりなのであった。


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