勘違い2 kaneki x touka 2015年02月20日 ※勘違いのつづき別に。そう思うんならそう思っとけば? 「なんで勝手に校内に入ってきたんだよ」「ごめん、雨で濡れるしあそこまで持って行った方がいいかなと思って…」「依子はともかく、他のやつに見つかったらメンドイだろ」「気をつけます…」傘をさしながら二人は並んで歩く…というわけでもなく、カネキがトーカの数歩後ろからとぼとぼとついていくといった状況だった。「ねぇトーカちゃん」「何だよ」二人の足元は水浸しだった。コンクリの道路は一面が水溜まりのようだった。スニーカーとローファー、それぞれ靴として役割を全く果たしていない。その上大雨が上から横から容赦なく叩きつけている。相変わらず雷の音と光も止まない。「たぶんこれ、今一番雨がひどいんだ。ちょっと待ったらましになるみたいだから、そこで少し雨宿りしない?」トーカはむかついていたが、カネキの提案に反対する理由も思い浮かばなかった。「うわ……びしょ濡れ」カネキは服やら肌についた滴を払おうとするが、ほとんど無意味の行為だ。トーカはハンカチ取りだし、足や顔の水分を拭う。靴と靴下だけはどうしようもないため諦めていた。「ほれ」「いいの?」トーカは予備の濡れていないハンカチをカネキに差し出した。白くて小さなそのハンカチは、タオル地で吸水性に優れていそうである。ありがとうと言ってカネキは袖を捲った腕や顔を軽く拭いた。二人はシャッターの閉まった小売店の前で立ち尽くしていた。呆然と暗い雨雲を眺め、時間を潰していた。「やまないね……」トーカとカネキ以外に、一人も見当たらない道路。二人と同じようにきっとどこかに避難しているのだろう。時折徐行運転の車が二人の前を通りすぎていくだけだった。ただただ無言のままでいる二人。トーカは、なんとなく、昼の出来事を話そうか話すまいか考えていた。いや、わざわざカネキに報告する義理はどこにもないのだけど。説明するのも少し面倒なことではあるけれど。ただ、気になった。どういう反応をするだろう、と。「トーカちゃん、最近学校はどう?」考えていると不意にカネキの方から話しかけてきた。こちらに顔を向けてトーカをまっすぐ見る瞳。思えば、いつもあんていくで一緒に働いているというのに、こうやってまじまじと二人だけで話すのは初めてかもしれない。学校はどう?なんて、何を話そうか困ったときのありきたりのフレーズ。だけど今考え事をしていたトーカにとっては、内心を見透かされたのではないかとひやっとする問いかけだった。「どうって……どうもこうも」少し言いよどむ。どうしよう。言おうか…「そ、そうだよね。授業で忙しいよね。そろそろ進路調査とかもありそうだし。大変な時期かな…」あー…、言う前に口を挟まれた。「…別に。大したことねぇよ。そりゃ大学生のあんたよりは忙しくしてるけど」「ハハハ……確かに。高校の時の方が授業とか詰まってて、大変だったかも」呑気に、かつ、ぎこちなく笑うカネキ。トーカの気持ちなど知るよしもなかった。そうこうしている間にもたびたび雷は鳴っていた。雨量は相変わらずだが、徐々に雷は遠のいていることが感じとれた。またしばらく会話が途切れている。別に、お互い話しにくいわけではないが、いざ二人きりになるとこうも何を話そうかわからなくなるもの。カネキは少しだけ困りながら、トーカから受け取ったハンカチを意味もなく広げたり折り畳んだりしていた。ハンカチは既にたっぷりと水分を含んでいた。手持ち無沙汰な状況。「あのさ……」その横顔に話しかけたのはトーカの方だった。「何かな?」多少安堵しつつ反応するカネキ。「……コクられたんだ、今日」「……ん?」「ん?じゃねぇよ!!」クラスメイトに告白されたんだよ!近況報告!捲し立てるようにそう言って、トーカはぷいとカネキから視線を反らした。「え、ほ、ほんとに…!」いきなり飛び出た話に、カネキは目に見えて驚いた。もちろん、トーカは容姿も整っているし、ストイックに頑張る姿に惹かれる者がいるだろうこともわかる。実際ヒデもそうだったし。何より、あんていくでの接客時の笑顔は普段とのギャップが激しい。あれは軽く詐欺であり反則だと常々思っている。「そ、それで?どうしたの??」「……断った」「え、そうなん、だ……」カネキはそこから返す言葉がすぐには見つからなかった。どう言ったらいいのかわからない。たしかに、喰種である以上、自由な恋愛ができない。西尾先輩とキミさんのような関係は理想的だけど、簡単にそうなれるものではないこともわかってる。下手をすれば自己の命にも関わる。それでも、トーカちゃんだって喰種であること以外には他の子と変わらない。可愛いものが好きで少々不器用な、至って普通の女子高生だ。せっかくのことだったのに、残念に思って悩んでいるんだろう。なんとか励ませないか…。そんなことをカネキは考えていた。それはトーカの意図とはややずれた方向である。腕を組んでうーん…としばらく黙った。トーカはカネキの次の言葉を黙って待っていた。あぁ、言っちゃった、と。その先を考えていなかったトーカは黙ることしかできなかった。そして、トーカちゃん、あのね…とカネキから出てきた言葉は、「いろいろ悩むかもしれないけど、でも、無理に気持ちを曲げなくてもいいと思うんだ。トーカちゃんの素直な気持ちを、その人に伝えればいいんじゃないかな…」きっとその人のことが本当は好きで。でも、喰種であることを気にして、自分の気持ち通りに返事できなかったんだ。だからわざわざ、同年代である自分にも話したのだろう。でも、せめて、付き合うとかそこまでいくかどうかは別にして、好きだという気持ちを隠す必要はないと思うんだ。そう考えての言葉だった。トーカは唖然とした。きっとこいつは、私がその人のことを気にかけて言ってると思ってる。違う。そうじゃない。そのクラスメイトのことは割と本気でどうでもいい。むしろ……いや、どうでもいいなら話さなければ良かったんだ。なのに…。なんで、話しちゃったんだろう。こいつに。「でも、トーカちゃんってやっぱりすごいよね。告白されるなんて…。僕はそんな経験ないからなぁ……」ニコニコと話すカネキ。何がそんなにおかしいんだよ。あんたは、私が誰かに好意をもたれても何とも、思わないんだろうって。わかってはいた。でも。「……なんだよそれ」「へ?」そのとき激しく地面に叩き付けられ響いていた雨音が、ふっと力の抜けたように、急におとなしい雨に変わった。相対的に二人の会話の声のボリュームが上がる感覚。「トーカちゃん?」「いい。もうこの話は終わり」顔を反らしてしまったトーカの表情をカネキは確認できなかった。そして、その後雨がややおさまって、再びあんていくへ向かって歩いている間、トーカは一言も発さずに黙りこくった。カネキは何かまずいことを言ってしまったかなと考えていたが、それ以上何かを話しかける言葉が思い浮かばなかった。どう返してほしかったのか、自分でもよくわからない。何を期待してたんだろ。バカみたい、私。水溜まりだらけのコンクリートの上を歩きながらトーカはそう考え自問自答していた。 [0回]PR