勘違い4 kaneki x touka 2015年02月20日 ※勘違い3のつづき。完結。勘違いも悪くないかな。 翌日は土曜日。昨日の天気とはうって変わり、朝から青空が広く高い。午前中の授業を終え、午後からのバイトのためあんていくへ。制服を着替えてからでないと、とトーカは先に部屋へ戻ろうと階段をかけ上がる。角を曲がって自分の部屋へ向かおうとしたそのとき、扉の前から少しだけ離れ、共用廊下の壁にもたれかかっている待ち人がいることに気づいた。「カネキ…」「トーカちゃん、お疲れ様」心構えができていなくて驚いたが、とりあえず歩きながら、いつもの調子で挑む。「何してんだよんなとこで」「その…これ早く返そうと思って。昨日はありがとう」そう言って差し出された手には、綺麗に包装された包み。サイズからして、昨日トーカが貸したハンカチと制服のシャツであることはすぐにわかった。「あんた、今日シフト無いでしょ。別に明日で良かったのに…」「いや、これから大学の講義があるし。それに、トーカちゃんの持ち物なのに、使えなくて困るかなと」別に予備くらいいくらでも持ってるし困らないよ…と、なかなか素直に言葉が出てこないことに、発言してるトーカ自身が歯痒い気持ちになる。「…じゃぁあんた、また今から大学に?」「うん。まぁまだ時間もあるし、ここから近いし」「ごめん」トーカの口から零れた言葉にえ?とカネキは驚いた。「別にいいよ。ほんとに大学すぐそこだし」「そうじゃなくて…いや、それもあるけど。昨日のこと、ごめん」トーカは昨日一方的にイライラしてしまったと、反省していることを告げる。「そんな、わざわざ謝るようなことないよ。……それより、僕の方こそ。昨日はごめんね」「……なんであんたが謝んだよ」「だって、トーカちゃんの気持ちをちゃんとわかってあげられなかったから」気持ち…って?トーカは少し驚いてカネキを見る。カネキは困ったような顔をしたまま、少し小声になって続ける。「……僕が思っているよりも、ずっとトーカちゃんの方が喰種のことわかってるよね。告白を断ったのも、普通に別の訳があったんだよね。なのに僕は、トーカちゃんが喰種のことを気にしてるんだって、勝手に決めつけてしまったから」……たぶん、僕が自分自身の喰種の体をまだちゃんと受け入れられずにいて。それを同じようにトーカちゃんにも当てはめてしまってた。だから。ごめんね。そう言うカネキにトーカはなんとなくむず痒い気持ちになる。「まぁ…たしかに。喰種だからって断ったわけじゃないけど……」少し近づいている、けど、本質にはまだカネキは気づいていないようで。安堵したような、気づいていてほしかったような複雑な気持ちだった。「嫌な思いさせちゃったよね」「…もう気にしてねぇよ」「……僕、もう少し、変わることができるように、頑張るよ」ニコニコと言うカネキ。トーカは俯いた……「今のままでいいよ」「え?」「別に、変わんなくていいんじゃない?今のあんたのままで」「トーカちゃん……」ここにいてくれたら、それでいい。なんとなく過ごせたら、それが一番幸せだから。さすがにそこまでは言わないけど。「…ありがとう」カネキはまっすぐとトーカを見て言った。その視線の近さに、思わず顔をそらすトーカ。少しごまかすように言う。「…ま、でも。もう少し筋力とかは付けた方がいいかもね」「う、うん。四方さんの特訓受けて、もう少し強くなれるように頑張るよ」パンットーカは気恥ずかしさを隠すように、力をこめてカネキの腹に拳をぶつけた。「痛でっ!」「なんだよあんたまだ全然筋肉ついてねぇじゃん」「い、今の不意打ち…」「なんか文句でも?」「いや」「どれどれ?ちょっとは逞しくなった?」「ちょ、ここで服捲るのは!トーカちゃ…」パサッ!廊下の向こうの角、二人から距離の離れたその場所から音は聞こえた。二人が同時に振り返ると、トーカの授業ノートを返しにやってきた依子がいる。手に持っていたはずのノートは驚きのあまり落下していた。「は」「あ、」「か、彼氏さん…」「おじゃましましたー!!」「まて依子!おい!!」トーカは慌ててその場を退避した依子を追いかけて共用廊下の向こうの角へと消えていった。「なんか…助かった…」カネキは思った。人が変わることは難しい。普通のごはんが食べられなくなっても、怪我がすぐに治癒してしまうとしても、まだ自分が人間であることを否定したくない自分がいる。考え方を変えなければいけない。変わらなければ、変わらなければと、わかってはいても。その負担は重くて、滅入ってしまいそうになる。でも、変わらなくてもいいよ、と。その言葉はカネキにとって、どれだけ心を慰めてくれるものか。トーカはきっと気づいていないだろう。トーカの言葉に、いや、トーカのことに。一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、惹かれてしまった気がするのは…「……僕の、勘違いかな」思わず困ったような笑みがこぼれた。 [0回]PR