うだうだ kiddo x dorami 2015年02月13日 保安官、束の間の休息 寝ぼけまなこのキッド。22世紀の町の夜の景色は、まるで年中クリスマスであるかのように、計算しつくされた電灯が綺麗に整って並んでいる。何度も来て、見慣れた景色。ドラミの部屋は壁の一面が大きなガラス張りになっている。「セワシさんったらまたどっかに出掛けちゃって」こんな時間なのにね、と。ぼやきながら大学の講義の支度をするドラミは、窓際のソファに腰掛けている猫型ロボットに話しかける。「夜遊びしたい年頃なんじゃね?」「やめてよ。セワシさんはまだそんな年齢じゃないわ」「わかんねぇぞ。男はいつか急にはっちゃけたくなるときがくるからな」「ガサツ君と一緒にしないでよ!」二人の視線は交わらない。部屋の端と端でそれぞれ別のことをしている。もっとも、キッドはうだうだしているだけであるが。またしばらくの沈黙。先程からずっとこの調子である。ドラミはこう見えてとても気遣っている。普段はそれぞれの仕事でなかなか顔を合わすことがない。せっかく会えたのだから、本当はいっぱいおしゃべりしたいし、甘えてみたい。けれど、明日もまた早朝から出掛けなければならない彼の事情をドラミはわかっている。束の間のぐっすり寝られるはずの時間を削って、彼は会いに来てくれていることを、わかっている。迷惑は、かけられない。今日も今日とてうだうだしている。これが会えたときの、いつもの二人だ。「なぁドラミー」ソファの背もたれでドラミからは全く見えないその姿から声がする。なぁに?とドラミは返事する。一通りやることを終えて、ドラミは手持ち無沙汰だった。仕方なくパソコンを広げて来週の講義の分まで準備でもしようとしていたところだった。「あのさー」「うん」「俺明日休みなんだわ」え??と、タイピングする丸い手が止まった。「ユウキューってやつ?いい加減お前とれやって上司から言われ…」キッドが話し終わらないうちにいつの間にかキッドの近くに来ていたのはドラミ。「……早くそれ言ってよ!もう!」だったら。こんなに我慢しなくて良かったんじゃない。それは部屋に来て最初に教えてほしかったわ!「ハハハ、ドラミ面白ぇ」「何がよ?何も面白くない」「俺に気ぃ遣ってくれてたんだろ?」そう言って、赤いリボンのついた頭をポンポンと撫でるキッド。ドラミは何も言えなかった。「悪ぃな、いつも。ここ来てもすぐ寝てばっかで」「…ほんとよ。全然おしゃべりもできないんだから、全く……」そう言ってへちゃむくれているドラミのことを、キッドは心の底から可愛いと思った。ドラミにせっかく会いに来るのに、いつも疲れていてまともに話すことすらできない。そんな自分を、ガサツガサツと言い放ちながらも迎え入れてくれるこの場所が、いつの間にか、大切な場所になっていた。「で、どっか明日行きたいとこあるか?」「え……いいの?」クリッの目を輝かせたドラミ。なんだか照れくさくなり、何となく視線をそらせたのはキッド。「まぁ、たまだしなぁ。どこでもいいぜ」「うんとねー…うーん………… ……やっぱりいいわ」「へ?」「部屋でうだうだしたい!」はぁ?それならいつもしてんだろ、と呆れるキッドをよそにドラミは嬉しそうだった。また気遣っているのではないか、とキッドは思いもしたが、まぁ。時間を気にすることなくうだうだするってのも。悪くないかな。「それでいいのか」「うん!」「しゃーねぇなぁ」「やったー!」そう言ってドラミはぴょこんとキッドの横に座った。ソファの上に二人、仲良く寄り添っている。そもそも猫型ロボットなのだ。じゃれあうのが嫌いなはずがない。ぴったりと横にくっついて。丸い手と手をつないで。お互い少しどきどきしている。初めて出会ったときは、くっつこうが何しようがこんなことなかったのに…ね。顔もこんなに赤くなってしまう。何から話そうか、言葉もうまく出てこない。「……なんだ。結局沈黙だな」「フフッ。そうね」まぁでもそれでいっか。今日も今日とて二人はうだうだしていた。「はぁもう……やっぱキッドはん馬づかい荒いわ…」「エドさんも大変だね」行き場を無くしたセワシとエドは、一人と一匹でぶらぶら夜の町を散歩していた。 [0回]PR