会話2 neji x hinata 2012年12月29日 会話のつづき。ピンチはチャンスだ。 その日はヒアシたち木ノ葉の上層部が任務のため召集されており、宗家にヒアシは不在であった。「では今日はヒアシ様は戻られないんですね」「早くても夕方暗くなってからのようで… せっかく足を運んでくれたのにごめんなさい」ネジにあたたかいお茶を運びつつ、ヒナタは申し訳なさそうに言った。いつものように正座してお茶を丁寧に差し出すヒナタに、ネジは少し驚いて軽く両手を振った。「全然気をつかわない下さい。 今日はヒアシ様はいないんですし、 俺は分家の人間ですし」「いえ、そういうわけには。 分家とか関係なく、お客様はちゃんとお迎えしたいから」ヒナタにとってネジはあくまで「お客様」。もちろんヒナタに悪気はないけれど、その言葉の意味する距離感に多少複雑な気持ちを抱いたのはネジの方だけだった。湯呑みの中のお茶も、量が減り、湯気が次第に見えなくなる。しばしの沈黙が流れていた。ここでいつもならヒアシが会話を挟み、気まずい沈黙にはならないのだが、今日はヒアシはいない。一方で、たまに修行の途中でハナビが帰宅してアカデミーでの出来事を楽しそうに話し会話が弾むこともあるが、まだ昼時の時間帯の今にそれを期待するのも難しい。ネジは本当は、ヒナタと何か会話がしたいとずっと思っていた。しかし、こういうことに関してネジは結して得意ではない。いきなり初対面で一目惚れしたサクラに話しかけるリーや、誰とでも分け隔てなく楽しく会話できるテンテン。班のメンバーである彼らのような社交性がないことをネジはよくよく自分で知っていた。けれどこんなに誰かと話さなければという必要性にかられるのもまた初めてで。どうしたものかと考えていた。ヒナタはやや下を向いたままその場にずっと正座している。ネジがそこにいる以上、席を空けるのはネジに対して失礼だと思っているのだろうと推察できる。当然、今の沈黙もネジの居心地を悪くさせるだろうから、何か話さなくては。そう考えて、動機は違えどネジ同様に何か会話しなくてはと必死に頭を巡らせているところだろうと、前髪の隙間から覗くその困った表情から容易に読み取れた。そんな空気の中、ふとネジはひらめいた。「ヒナタ様、」ぴくっと反応してヒナタは顔をあげる。そこには、つい半年前までは考えられなかったような、穏やかな表情の従兄がいる。「正座、しんどくはないですか。 こちらに座ってはいかがですか」そういってネジは縁側に座っていた自らの場所の横にあったお盆をよけて、ヒナタが座れるスペースを空けた。ヒナタはえっと…、とネジの言動に戸惑いつつ、数秒の間ののち、「いいですか」遠慮がちに正座をくずし、両足を行儀よく順番に前へ下ろし、ネジと並ぶように座った。ヒナタは少しドキドキしていた。それはナルトを目の前にしたときの感情とはまた違う。緊張というのは同じでもその種類がちがう。ナルトのときのように変にあがったりはしないが、ナルトのときには今のようにむず痒い感じがしない。今はもうネジに対して何の警戒心も抱いていない。そうヒナタは自分でも思っていたけれど、心のどこかで、まだどこかネジに対して安心できないでいるのかもしれない。そしてそんな自分がまた、ネジに対して申し訳なくなる。そんな思いもあって、隣に座ってもなお俯いてしまう。ネジはそんなヒナタを見て、きっとまだ警戒されているのだと思う。ヒナタにとっては警戒というほどのものではなくても、ネジにとっては、自分のこれまでのヒナタに対する態度をおもいかえせば、警戒が続くのも致し方ないことであって。だからこそ、ネジは自分から話しかけなければとずっと思っていた。ヒアシの前ではネジもヒナタもなかなか普段の振る舞いで話せない。だから今の機会を使わなければ。そう思い、ネジはヒナタに思いきって話しかけた。「新しいお店ができたそうなんです」「お店…?」ヒナタは顔をあげてネジの方を見た。突然の話題にヒナタが首をかしげると、ネジもまたそんなヒナタの表情にまっすぐ顔を向けた。「ヒナタ様は甘いものはお好きですか?」「は、はい」「甘味処、男一人ではなかなか店内に入るのは勇気がいるんですよ」「そう、なんです…か」ネジにも苦手なことがあるんだということに素直に驚いている様子で、ネジの言わんとするところには全く気づいていないヒナタ。そんな彼女を見て、やはりストレートに言わなければ伝わらないか。そう観念したネジは、気づかれないほどに小さく息を吸い込んで、ヒナタをまっすぐ見た。「少し付き合っていただけませんか」ネジの父、ヒザシの死の一件以来、二人が会話と言えそうな会話をまともにしたのはこれが初めて。この時の、目をまんまるにさせて驚いたヒナタの表情は、この先きっと忘れることはないだろうとネジは思った。 [2回]PR