最終試験 ojamajo 2015年07月19日 ※おジャ魔女ふぁみ。設定捏造注意 「あなたは今~、魔女にならないと言ったわよね~?」「はい!言いました」「つまりそれはァ~、人間のままで~、いいってことよね~?」「はい!」赤ピンク色の魔女見習いの衣装に包まれて。ふぁみは魔女の水晶をもらえる瞬間を今か今かと、わくわく足踏みしていた。モタとモタモタはつい先刻、この魔女見習いに1級合格を言い渡したところであった。今ふぁみがいるこの世界……魔女界は、魔女あるいは魔女見習いのみが立ち入ることが許される。ゆくゆくは人間界に住む人々が自由に行き来できるよう、現在の魔女界の女王様があらゆる試行錯誤をされているが。まだ実現には至っていない。現在小学5年生のふぁみも、約1年前までは普通の人間であった。とあるきっかけから、魔女見習いとなり。そしてたった今、魔女見習い試験最後の難関である1級試験に見事合格したところであった。1級試験合格後の魔女見習いの進路は2つある。ひとつは、そのまま魔女となりさらに魔法の技術を磨くため精進していくという道。ほんの数十年前まではこの道しか用意されていなかった。もうひとつの道は、ここ数十年で新設された新しい道である。魔女の資格を有したまま、人間として生きていくという道。この道を選べば魔法の技術向上に一定の制限が課されるものの、特に寿命に関し、これまでと変わらぬ体のまま生きていくことが許される。「特別の魔女」としての地位が与えられるのだ。「たった今~、1級試験に合格したあなたは~、そのまま魔女になることもできるのよ~?でも、人間でいいと言ったわね~?」「はい!言いました!」「ちなみにどーしてかしら~?」「だって、魔女になっちゃったら年を取らないって聞きました。魔女見習いは卒業したいけど、人間として生きていきたい!でも魔法はきちんと使えるようになりたいんです!」「わがままね~」「ね~」「ぷっぷのぷー!」ふぁみが頬を膨らませて抗議をすると。モタとモタモタはゆっくりと弁解した。「冗談よ~。まぁそれはいいのよ~、どちらの道でも~、あなたの自由よ~」「とりあえず、あなたは魔女にならないということだから~。……あなたには今から~、特1級試験を受けてもらわなきゃいけないのよ~」そう言ってモタモタは、懐からおもむろに1枚の書面を取り出した。魔女用語で書かれていて内容はさっぱりふぁみにはわからなかった。しかし、その短い表題だけは、片言程度のふぁみの語彙力でも読解できた。「『特……1級、試験』……って!な、何これ!?」「これは人間の地位のまま~、魔女の資格を得ようとする魔女見習いが~、受けなければいけない試験よ~」「そ、そんな!あたし全然聞いてないんスけど!?1級試験で終わりじゃなかったの??」「そうなのよ~」「実はそうなのよ~、この試験はね~、……」モタとモタモタは特1級試験の概要を説明し始めた。この試験は、人間のまま魔女としての能力を得る資格があるのかを、1級試験内容にプラスアルファとして判定するためのものであった。70~80年前に比べれば、魔女ガエルの呪いもなく人間界と魔女界の壁は薄くなりつつある。しかし、未だに交流が再開されるには至っていない。魔女が人間界で魔法を使うとなれば、世界観の混乱を防ぐためにも。その正体がばれることのないよう細心の注意が必要とされる。そこで、このような特試が設けられているのだという。「人間のまま魔法が使えるということはね~、それだけのリスクがあるものなのよ~。だから~、試験も厳しいの~」「うぅ…わかったよ。受ければいいんでしょー受ければ!」魔女の水晶がやっと手に入ると思っていたふぁみは少しがっくりした。体力・精神共にキツかった1級試験をやっと乗り越えたというのに。ただでさえ疲れているのにもう一段階どっと疲れたような気分だった。おもむろに、モタモタは片手を挙げた。「は~い、それじゃぁ始めるわよ~」「え!?今から??」「そうよ~」「ある意味これは1級試験の一部だからね~」「そ、そんなぁ……あたしもうへとへとなのにぃ…」「あら、ふぁみちゃん。あなたのお友達は今まさに受けてるところなのよ~?」「え!?もしかして矢田さんたち!?もうすでに??」「そうよ~、ふぁみちゃんビリっけつだったからね~」「うっそー!あたしだけ遅れてるってことじゃん!!」「ではさっそく~、試験のお題を言うわね~?」「お、おう。こうなりゃどんとこい!!」ビシッと立ち上り、やぶれかぶれの思いでふぁみはモタたちの指示を待った。「お題はズバリィ~、魔法で時代をさかのぼり~、ターゲットへ話しかけて~情報収集して~、戻ってくることよ~」「へ?なんだそれだけ?」「制限時間は~、24時間よ~」「まる1日もあるの?超楽勝じゃーん!」タイムトリップする魔法ならこれまで公私問わず何度も使ってきたことのあるふぁみ。トリップする時代も正確で、失敗する気は全くしなかった。「ただしね~、条件があるのよ~」「何々?あたしどうせならステーキがいっぱい食べられる時代がいいな!」「どんな時代よ~?」モタは巻かれた長い紙を広げ、試験のルールを説明し始めた。「この3つのルールを守ってもらうわよ~。 まずひとつ目は~、魔法で過去へタイムスリップして~、『あなたが今知らない事実』の情報収集をすること~」「知らない事実?なんでもいいの?」「そうよ~」「時代は、ターゲットの子供時代と指定させてもらうわ~」「ほぉほぉ。なら楽勝!」ガッツポーズするふぁみに、モタモタが二つ目の説明を始めた。「ふたつ目は~、タイムスリップした先であなたの身分を明かしてはいけないこと~。 接触するのも~、ターゲット人物とその家族だけよ~。それ以外の人には~、決して会ってはいけないし~、姿を見せてはダメ~」「ふむふむ。まぁ対象者だけじゃなくて家族もオッケーなら。その人の家に行けば済むのよね?これも楽勝さー!」ニコニコと余裕で話すふぁみに、モタが最後の条件を言い渡した。「そして、みっつ目は~、その対象者が誰なのかって話なんだけど~、」「うん!早く早く!」モタとモタモタは、にんまりと笑った。「ふぁみちゃん、あなたが一番会いたい、亡くなった人間。それがあなたのターゲットよ~」「……へ?死んだ、人?」「魔女はダメ~、あと、存命の人間もダメよ~?」「ふぁみちゃん、あなたが知ってる、あなたが一番会いたい、死んだ人に会うこと~。会って話をすること~。そして、あなたの知らない事実をひとつでもいいから、聞き出して帰ってくること~。 これが24時間以内にできれば~、特1級試験に合格よ~」簡単なもんでしょ~?と言うモタモタをよそに。ふぁみは難易うんぬんより、その人物に思いを馳せていた。一番……会いたい人。そんなの、あの人に決まってる。「ふぁみちゃん、あなたが一番よくわかってるわね~。その人のこと~?」「……はい」「どうする~?少し休憩してから行く~?」「いえ。今すぐ行きます!早く会いに行きたいです!」先程まで駄々をこねていた姿はそこになかった。思いもよらない形で、会いに行ける。自分の大好きだった、おばあちゃんに!「いいのね~?それじゃぁ、始めるわよ~?」「特1級試験、スタート~!」ふぁみは慣れた手つきでペペルトポロンを召喚した。ピーリカピリララ ポポリナペーペルト……「おばあちゃんの子供時代に、私をつれてって!!」ピンク色の音符の輪に包まれて、ふぁみは姿を消した。「行っちゃったわね~」「ね~」モタとモタモタは改めて、特1級試験の書面を眺めていた。この試験で問われるものは、感情よりもルールを優先できるかという法遵守精神。自分のもっとも親しい人間に、自分の身分を明かさないまま任務を果たし、帰還できるかどうかを試す。人間界でどのような局面に立とうとも、魔女としての身分を安易にばらすことは許されない。それは、現在の若き女王が作り上げようとしている人間界との交流再開への道を、撹乱することに繋がるからである。そう。人間としての地位を持ったまま、魔女になれる。そんな斬新な制度は、ウィッチ・クイーン・ローズから生まれたにも関わらず、人間を母親として大切に育てられた、あの女王様だからこそ。創設しえた制度であった。「この試験を考案されたのも~、女王様だったかしらね~」「まだお若いのに~、ほんとに素晴らしい女王様だわ~」「ね~。ついこの間まで~、魔女幼稚園であんなに小さな赤ちゃんだったのにね~」「まぁ、それだけ年月がたったってことよね~。何しろ、¨あの子¨のお孫さんが、魔女見習い最終試験を受けに来てるくらいなんだからね~」「月日は早いものよね~」モタとモタモタが回想に耽っているそんな頃。タイムトリップする空間の中、期待と不安を胸の鼓動にのせ、ふぁみは何十年も前の美空町を目指し、飛び続けていた。待っててね、おばあちゃん!今から会いに行くからね!季節はひな祭りの頃。ふぁみが旅立った現代と、ちょうど同じ季節の町に。そっと足を降ろし、ふぁみは到着したのだった。(おわり) [0回]PR