ひねくれ者バースデー okita x kagura 2017年11月04日 沖神ではない神楽ちゃんの誕生日話が作りたくて作りました。万事屋を中心にオールキャラです。おめでとう神楽ちゃん! 固く閉ざされた押入れは、岩の扉のごとくびくともしない。 中で棒か何かを引っ掛けてるのだろうか。銀時と新八が二人掛かりでこじ開けようとするが、一ミリの隙間もできなかった。「神楽ちゃんってば!」「オイ神楽開けろ!」 二人の呼び掛けに応答すらない。そんな異変に、先程までぐっすり眠っていた定春も気がついて目を覚ます。のこのこと銀時たちの後ろにやって来て、その場にお座りをした。 ご主人はどこ? そんな目をする定春に気づいた新八は、あっ!!と、その大きな口にくわえられていたリボン付の酢昆布(特大サイズ)を目にして、叫んだ。「ホラ神楽ちゃん!!定春っ!!定春が神楽ちゃんにプレゼントだって!!!定春はちゃんと用意して………」 ドンドンと押入れを叩いていると、そわぁ……と押入れの隙間が徐々に開いた。「やれやれやっと出てきたか」 めんどくせぇ………と銀時が肩を鳴らそうとした次の瞬間、シュバババ!!!と光のごとくの速さで神楽が押入れから飛び出してきた、かと思えば、ドカッ!バキッ!!と2発の鈍い音。 ギャァァア!!!と新八銀時の叫び声が聞こえる頃には、押入れはパタリと再び閉ざされてしまった。定春の口の酢昆布は既に無くなっていた。「………定春だけネ!!私の誕生日ちゃんと準備してくれてたの!!定春のことしかもう信じないアルッ!!!!!」 口から血を吐き這いつくばる銀時と新八の様子に、定春はきょとんとして首をかしげていた。「ま、待てよ神楽………11月3日はまだ始まったばかりだろ……?まだ深夜12時35分じゃねぇか」「そ、そうだよ…………僕たちもこれから神楽ちゃんのことお祝いしようと………」 銀時と新八が絞り出す声に、神楽は押入れの向こうから叫ぶ。「嫌アル! 0時ちょっきしに『おめでとう』って言ってほしかったアル!! プレゼントと一緒にお祝いしてほしかったアル!!」「いや……定春も0時ちょうどに祝えてねぇからな。俺らと一緒だからな」「定春は特別アル!!」「何その差別ぅ!!」 ニコニコと微笑む定春をうらめしく見つめる銀時と新八だったが。次に聞こえてきた神楽の言葉に、返す言葉も見当たらず。 結局その夜再び神楽が押入れから出てくることはなかったのだった。「……どうせ銀ちゃんも新八も私の誕生日忘れてたアル。大ッ嫌い!!」*****「ダァァァアア!!! くっそめんどくせぇよ!!! 何?? 女ってなんで日付変わった瞬間に祝われなきゃ気が済まないわけぇ?? めんどくせッ!!」「もう銀さんったら。神楽ちゃんも寂しかったんですよきっと」 気づいてあげられなかった銀さんと新ちゃんが悪いわ、と。急須のお茶を3人分の湯飲みに注ぎながら、お妙はたたずんでいる。 この日は祝日でもあったため、本日の万事屋は休業。結局神楽は今朝も押入れから頑なに出てこようとしなかったため、銀時と新八は、逃げるようにお妙のもとを訪ねていた。万事屋には定春と、目盛りいっぱいに炊いたご飯だけを残してきている。「あのまま僕たちがいちゃ、神楽ちゃん意地でもご飯食べようとしませんもんね」「そういうところに気が遣えて、どうして忘れてたんですか?せっかくの神楽ちゃんの誕生日なのに」「いや、完全に忘れてたわけでもないんですけども………ねぇ銀さん?」 新八はお妙を手伝いつつ、縁側の銀時に同意を求める。 銀時は寝そべって鼻くそを生成しながら答えた。「あれだよ? 12時ちょうどに何してたかって、新八はお通ちゃんの生ライブ中継に夢中だったろ? 俺は便所こもってジャンプとウンコに夢中だったろ?」「銀さん、女性の前でウンコの話はしないでくれます?」「そうだぞ万事屋!お妙さんの前でそんなハシタない単語を発するもんじゃねぇぞ!何事にも礼儀というものが」「テメーはいい加減訪問の礼儀をわきまえろボケェェェエエ!!!」 ドカッ!!と天井に穴があき、そこからゴキブリの死体のごとくハサッと仰向けに落ちてきたのは近藤だった。 新八は微動だにせずに正座してお茶をすすりながら、銀時とお妙に話しかけた。「まあ結局神楽ちゃんの誕生日を忘れてたんじゃなくて、日付越えたのをうっかり忘れただけなんですよ、姉上……」 だから、テレビなりウンコなりが終われば普通におめでとうと声を掛けようと思っていたのに。ふと気づけば、つい先程まで応接間のソファにちょこんと座っていたはずの神楽が消えて、押入れ立てこもり騒動に発展したというわけだった。 銀時も新八も、神楽のためにケーキとプレゼントを買うつもりもあったし。好みにうるさいからと今日のこの時間はプレゼントを選ぶため一緒に買い物に出掛けようとも計画していたのに。 一連の経緯を聞いて、お妙は呆れて笑いまじりに話す。「女の子は何よりも、言葉で言ってほしいんですよ。もちろん、プレゼントやケーキも嬉しいですけどね。『おめでとう』って、その言葉を大切な人たちに誰よりも一番に言ってほしいものなんですよ」「そうよそうよ!!ほんっと男の子って鈍感よねぇ!! 私だって銀さんから『好きだぜ』『愛してるぜ』『○○○しようぜ』とか何とか言われたいもの!! でもね、こうしてさっきから気づいてるにもかかわらず放置プレイされることもいいかなぁ♡ なんちゃってギャァァァアアア!!!」 飾り棚の壺の中から突如聞こえてきた声に向かって一直線に木刀が刺さった。 壺の割れ目からはつーーっと赤い血が滴っている。 銀時は微動だにせず、寝そべった体勢を崩さないまま、やっぱめんどくせぇな女って、と呟く。「ところで新ちゃんはともかく、銀さん? 何か忘れてませんか?」 お妙がニコニコと笑いかけている。 はて? 銀時はきょとんとする。何?なんかここに来るとき、手土産とか必要だったっけ。そんな疑問を巡らせているところへ、縁側の向こうからスタスタと歩いてくる音が聞こえる。「あれぇ? 旦那、姐さんの誕生日がついこないだだったの知りやせん??あ、姐さん遅くなったけどおめでとうごぜぇやす」「あら沖田さん。ありがとう! でもどうしてご存じで?」「そりゃァうちの大将が呪文のごとく唱えてやしてから」「ちょちょちょっと待て総悟ーッ!!お前!!なんで先に言うの??なんで俺より先に言っちゃうの???」 突然の沖田の登場と、それまで倒れていた近藤が涙目でドサッ!と立ち上がったのを見て、あれ?何が起こった??と首をきょろきょろさせる銀時と新八。「だって近藤さんがなかなか言わないから。3日前から仕事ほっぽりだしてスタンバってるくせに言わないから」「いやいやちょっと!! 言おうと思ってたの!! でもさ恥ずかしいんだもの!!だって所詮俺ストーカーだものッ!!!総悟のバカァ……」「フッ、馬鹿者共。あまりにも遅すぎるぞ。僕なんかは妙ちゃんに当日0時0分0秒ジャストにメールした」「ホーラ、近藤さん既に先越されてらァ」 どこからともなく現れた九兵衛。これに続いてなぜか、どたどたと部屋に入ってきたのはそよ姫とそよ姫を護衛する土方だった。「あ!やっぱりここにいたんですね! せっかく神楽ちゃんに会おうと万事屋さんへ立ち寄ったのに休業中だったから。土方さんの予想通りでしたね!」「ついでに近藤さんも捕獲完了か。よくやったな総悟」「いえ、近藤さんが勝手に自滅しただけでさァ」「ちょっとちょっとォ!!なんか賑やかじゃん!俺も混ぜてよォ!段ボールの家じゃ寒い季節になってきたからよォ!!」 最終的に長谷川までが登場したことによって志村家の応接間がてんやわんやする羽目になってしまった。 飛び交う壺やらバズーカやらダークマターやらを掻き分け、新八は匍匐前進で縁側にいる銀時のもとに辿り着く。「ちょっと新八君、君の家ってなんでこんなに人間引き寄せちゃうわけ?」「いやこっちが聞きてぇよ!こいつら毎度毎度荒らしてばっかで!!」 項垂れる新八に、ちょんちょんと後ろから肩をつつくのは、新八と同じように匍匐前進で寄ってきたそよ姫だった。「あの、神楽ちゃんはここにいないんですか?」 新八と銀時は顔を見合わせて、真顔になる。「………アイツまで参戦してちゃァとっくにこの家崩落してますぜィ姫様」 そよ姫の後ろ、沖田は近寄ってしゃがみこむ。「差し詰めアイツに愛想つかされたんでしょう。誕生日を忘れてたと」「まぁ、それは酷いですわ皆様!」「沖田さんちょっと勝手なこと姫様に吹き込まないでくださいよ!!」「でも心配要らないですよ」 ニコニコとそよ姫が差し出した物。それは、小さな小さなキーホルダーだった。「姫様?それは?」「私が用意した、神楽ちゃんへの誕生日プレゼントです!」 それはキーホルダーとはいえ、チェーンが付いているだけ。マスコット部分はまだ未完成のようで形を成していない。 粘土で好きな形に変形できるんだと。それから、ちょっと仕掛けがあって………。 そういう説明を聞いて、銀時と新八は再び顔を見合わせた。「万事屋さん、せっかくですから共同作戦といきましょう!」 そよ姫の一声に、皆が反応して一旦制止した。***「ごめんなんし、誰かおらぬか」 玄関先からノックと共に声がする。 その声は月詠の声だとわかったので、応接間で寝そべっていた神楽は、目を開けてそっと起き上がった。 昼寝のつもりが、もう夕方になるだろうか。窓の格子から夕日が差し込んできていた。 本当は居留守をしようとしたが、月詠だとすれば、きっとこれから仕事の時間帯に差し掛かるだろうし何か用事なら仕方がないかと。 神楽はまぶたを擦りながら、玄関先に出る。そして、鍵をかけていなかった引き戸をそのまま横にスライドさせた。「ツッキー、どうしたアル?」「………お主、その目はどうした?」「目?」 神楽は目をぱちぱちさせようとしたが、少しまぶたが重かった。「赤く腫れあがっておるが。何かあったか」「………なんでもないアル」 昼寝する直前まで誰も訪ねてこないし。銀時たちも戻らないしで。一人しくしく泣いていたことを、わざわざ月詠に話すのはやめようと思い、神楽は何も言わなかった。 神楽はしょんぼりしていた。 日付ぴったりにお祝いされなかったからって。ふて腐れ過ぎてしまったかもしれない。そんなことをして、銀時や新八を困らせてしまったから、きっとバチが当たっちゃったんだろう。 こうして今日が終わりかけというのに、誰にも会わないまま。寂しい一日のまま終わってしまう………。 そう思っていた神楽は、月詠に対して、今日が自分の誕生日だヨとアピールする気も失せていた。月詠はたぶん知らないだろうから、言われなくても仕方がないし、もういいや、と。「実はな、お主から銀時に渡しておいてほしい物があってな」「……私に? なんでツッキーが渡さないアルか」「わっちはこれから吉原の見廻りに行かねばならないから」 月詠の懐から取り出されたそれは、手のひらサイズの小さな包みだった。「何アルか、これ?」「とにかく渡しておくれなんし。頼んだぞ」 何も言わずに立ち去ろうとする月詠。きっと銀時に渡すのが恥ずかしいんだろう。そう思った神楽はそれ以上詮索するつもりはなかった……が………「あーちなみに、それは開封してはならんからな」「わかってるアル」「絶対に開けてはならんからな!死んでも開けてはダメだからな!開けぬまま、渡しておくれなんし!!」「わ、わかってるヨ」「いいか、絶対だぞ!」「絶対に開けてはなら」「わかったから早く帰るヨロシ」 去り際にいやにしつこく念押ししながら消えた月詠を、不思議に思う神楽。「………なんだろう」 玄関戸を閉め、………即、開封した。「リボンだけだから、後で巻き直せば大丈夫アルナ!」 包みの袋を破いてしまわないように、そーっと中身を覗きこむ。「………何アルかこれ、キーホルダー??」 しかも、ただのキーホルダーではない。 いびつで少しデコボコしているが、きちんと全身をミニチュアサイズにした、神楽型のマスコット人形のキーホルダーだった。「なんで銀ちゃん、こんなのツッキーに頼んだアル」 よくわからないなぁと不思議に眺めていると、後頭部のところに小さなボタンが付いていた。 ポチッ 興味本位で押してみる。 すると…………キーホルダーが…………しゃべった。『あ、これでセットは大丈夫ですよ。はい、皆さん、せーのっ!………』 女の子の声を合図に、突如メロディーが流れ出した。聞き覚えのあるイントロが、シーンと静まり返っていた万事屋の空間を包み込んだ。『~ハッピバースデー トゥーユー ハッピバースデー ディーア 神楽ちゃーん ハッピーバースデー トゥーユー~』 拍手喝采、口笛、ヒューヒューと囃し立てる音。 神楽は、ハッと驚きのあまり、手のひらを口にあてがい目を見開いていた。そして、立て続けに流れる長い音声に、鳥肌が立つ思いがしてその場から動けずにいた。『………どうかな神楽ちゃん? あ、そよ姫です。お誕生日おめでとう!! もうわかると思うけれど、これ神楽ちゃんへのプレゼントだからね。宇宙から輸入したキーホルダーでね、見掛けによらず長時間のメッセージを録音できるの! 月詠さんに私からお願いして届けてもらったんだけど。フフッ!驚いてくれてると嬉しいなぁ! さてさて、突然ですが現場の声をお届けしまーす。はい、じゃぁ新八さん! えっ! 僕からですか!? ま、まぁいいや、えっと、どうしよう…………か、神楽ちゃん。お誕生日おめでとう。昨日はごめんね。僕も銀さんも、本当は今日きちんと神楽ちゃんのことお祝いしたいと思ってたん はいっ!じゃぁ次の方いきまーす! ちょ!姫様!!まだ途中なんですけど!? 録音時間の制限があるから、ごめんなさいね。じゃぁ次はお妙さんどうぞ。 はーい、………神楽ちゃん。聞こえてるかしら? お誕生日おめでとう。フフッ、実はね。神楽ちゃんのお誕生日の3日前、私のお誕生日だったのよ。あ、別に責めてないからね。祝ってもらえなかったとか思ってないからね。 お妙さん、俺はちゃんと覚えてましブベラッ!! 妙ちゃん、僕はちゃんと覚えてたよ。 ありがとう九ちゃん! まあ、それはそれとして。私が神楽ちゃんに伝えたかったのはね、銀さんったら、私の誕生日はすっかり忘れてたのに、神楽ちゃんのお誕生日はきちんと覚えてたのよ。もちろん新ちゃんも。だから、ちょっとだけ許してあげてね。それくらい、神楽ちゃんのことを大切に考えてる人たちだと思うわ。 神楽ちゃん、………あ、僕からもいいかな妙ちゃん………マイクありがとう。神楽ちゃん、お誕生日おめでとう。神楽ちゃんは小さな体でも本当に強くて。僕も君に負けぬようしっかり精進するつもりだよ。またよろしく頼む。 ちょっと九ちゃん私にもッ!! …………神楽ちゃん?あ、さっちゃんだけどね。お誕生日おめでとう。銀さんが放置プレイするのは恥ずかしがり屋さんなだけだからあんまり気にする必要なんてないのよ。だから許してあげブベラッ!! ………あれ、銀さんはしゃべらないんですか? いや、俺ァ後でいいよ。あ、はいホラ沖田君。 いや俺ァ結構です、ハイ土方さん。 なんで俺ェ??…………あ、えーっと、チャイナ娘。誕生日らしいな。なんか、まぁ、おめでとうございます。あれ?なんかこんな感じだっけ? 俺チャイナ娘にどんな感じで話してたって?? 素直になれ土方ー。 そうだ土方お前ならできるはずだ土方ー。 黙ってろドSコンビッ!!! ちょっとちょっとォ、お前らマイク放置しすぎだから。………あ、チャイナ娘か。なんか知らんが誕生日だそうだな。まぁ俺からの言葉なんか要らねぇかもしらんが、何かと腐れ縁だからな。もちろん俺とお妙さんが結婚すれば、新八君や君も親族同然…………あ、お妙さんちょっと待ってください刺さないで!! と、とにかくおめでとうチャイナ娘。………ホラ、総悟は?…………え、要らない? んじゃァえっと、ああ、はいこれ あ、どーも。………ええっとわかるかな? 俺だよ俺? オレオレ詐欺じゃないよ? 長谷川だよ?………え、長谷川じゃわからない? グラサンの…………ダァァもうわかったよッ!! マダオだよぅ!! 誕生日おめでとうなこんちきしょー!!くそぅ! 俺も誰かに祝われてェなァ!! なぁヅラっち!! パスッ!! ヅラじゃないかつ…………ヅ、ヅラっちだ。リーダー、誕生日おめでとう。俺はこういうこともあろうかとずっとスタンバってたぞ。………銀時が何か失礼を働いたようだが、大目に見てやってほしい。アイツは昔からああいう奴だ。だが、銀時はリーダーがこうして毎年、いや、毎日の成長を遂げることを心から祝福しているだろう。昔から知ってる俺だからわかる。なァ、お主もそう思わんか。 なっ!? お、おめでとう神楽。……生憎わっちはそこまで銀時と旧知の仲じゃぁありんせん。……けどまァ、わっちから見ても、神楽は銀時から愛されておる。それだけは確かだから、自信を持ちなんし。………ということで、お主もいい加減言わんか、ハイッ。 いやハイッじゃねぇよ!!人がしゃべる前にどんだけハードル上げんだよテメーらやめてくれるぅ??……………あ、まだ録音時間残ってんの?……ったくしょうがねぇなあ。 ………えっと……神楽。その、なんだ……………。あー…………オイちょっとテメーらガン聞きすんなよ!! 何?? さっきまでてんやわんや騒いでたじゃん?? なんで人がしゃべろうとしたらシーンとするわけッ!!? ダァーーもうやめだやめ!! こんなもんまどろっこしいわ!! 直接言やァ良いんだろ直接!!? はい、つーことでとりあえずケーキとプレゼントあるから早くこっち来いよ。場所は…………プチッ』 ………録音時間が足りなかったのか。途中で切れてしまった。 長い長い録音再生を聞き終えて、神楽の目には、涙がたまっていた。 クゥン?と心配そうに歩み寄る定春に、神楽は顔をごしごしと手の甲で擦り、笑いかけた。「……とりあえず銀ちゃんたち探しに行くネ。一応これ、渡すってことになってるからナ」 アンッと嬉しそうにしっぽを振る定春。 神楽は、玄関先に置いてあった番傘を手に、表へ出た。当たりは既に薄暗くなり始めていた。 と、1階の辺りに人の気配を感じた。「………お前、」「よう、何やってんでィ」 その場を通り掛かるは、バズーカを肩に担いだ沖田だった。 神楽は軽い身のこなしで、2階から地面へ着地する。続けて定春も舞い降りた。「お前、銀ちゃん見掛けなかったか?」「……旦那なら姐さんとこじゃねーの?」 そっか! ありがとナ! ぱぁっと表情を明るくさせて駆け出そうとした神楽、沖田はその肩に手をかけて引き止めた。 驚いた神楽が振り返ると、沖田の手にはキーホルダーが握られていた。「そそっかしいねィ、落としもん」「おお!珍しく気が利くアルナ。ありがとネ」 それから………と、沖田は何かを口にしようとした。「何アル?」「…………いや、やっぱやめとくわ」 今、こいつに直接誕生日おめでとうと言うべき役回りは俺じゃないだろうからな。 そう思った沖田は、神楽に背を向ける。変装して志村家に忍び込んでいた桂の行方を探していた道中だった。「じゃァ、後で聞かせろヨ!」 背中から聞こえた声に、えっ?と少し驚いて振り返る沖田。 そこにはもう、遠く小さくなった一人と一匹と後ろ姿しかなかった。***「銀ちゃーんッ!!!」 志村家の訪問客がまた一人。 皆が待っていた本日の主役は、泣き声のような叫びをあげながら、銀髪侍の胸元に飛び込んだ。 そんな様子をきゃっきゃしながら写真におさめるのはそよ姫だった。「神楽ッ!ちょ!!その怪力で突撃はやめろって何度も」「言ってヨ!!銀ちゃんッ!!」 抱きついたままうるうると見つめる瞳に、………銀時は呆れたように笑いかけた。「誕生日おめでとうな、神楽」 そう言って銀時が神楽の頭を撫でると、神楽はとびきりの笑顔で銀時の首根っこを持ってゆさゆさと揺さぶって喜びを表現する。 窒息するー!と白目を向いて叫ぶ銀時を尻目に、神楽ちゃんおめでとう、と遠慮がちに声を掛ける新八。神楽はまた新八にも抱きついた。「いいなぁ、万事屋さん!」 そう呟くそよ姫は、神楽ちゃんに抱きつきに行った。続いて定春も。 たくさんの料理とケーキとプレゼント。神楽はその日、また始まる14歳の一日に、めいっぱいの笑顔を振り撒く。 それは、その表情は、銀時たちが苦戦しながら作った小さなキーホルダーと同じ表情をしていた。 [2回]PR