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めぐりあひて

二次創作ブログです。原作者様等とは一切関係ありません。

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月5

月4のつづきです。
体も心もこいつに突き動かされている。
※性的な話が出てくるので注意。R15としておきます。閲覧自己責任でお願いします。








 大江戸遊園地に到着して、2時間くらいは経過しただろうか。たった今、最大の難関を乗り越えたような気がしている。


「大丈夫アルか…?」


 目の前を羽の生えたひよこがグルグルしていたが。隣からのその声でようやく視界がひらけてきた。ジェットコースターのトラウマは未だに克服できずにいたから。座席で放心していてすぐに動けなかった。
 すぐ隣にチャイナがいる。チャイナは俺を心配している。けど今はそんなことよりも、ジェットコースターに心を奪われていた。もしかしたらこれが真の恋ってやつかもしれない。スリリングすぎて目が回った。


「へーき」
「顔が死んでるアル。うんこ漏らしてないアルか?」
「座高変わってねーだろ?心配要らん」
「心配はしてないアル」


 乗降口の近くでしばらく座り込んでいた俺に。話しかけてくるこいつ。ジェットコースターとの恋はもうおしまい。冷めてすっかりもとの感覚を少しずつ取り戻しつつあった。
 心配してないと言いながらも心配そうに覗きこんでくるこいつの目と、絶対に目を合わないよう視線を下にそらしていた。
 今度はこっちに心が奪われそうになっちまうから。やってらんねーな。

 待ち合わせ場所だった駅でこいつの姿を見かけたとき。服装より何より髪型が目に留まった。なんでおしゃれしてきてんだとちょっと気が引けた。まァそりゃ、男女二人で出掛けるといえばおしゃれの一つや二つ何も疑問ではないものだが。……けど、こいつは違うはずなんだ。
 わざわざそんな身なりで来るって、そりゃ、いったい、どういう……なんて。そうこう考えてたら急に緊張してきて。ぶっ倒れて。駅員二人が駆けつけてきたのだった。

 そもそも、この遊園地に誘ったときの返事第一声からおかしかった。行く、との一言。
耳を疑ったさ。まさかオッケイ出るとは思わなかった。普段歪み合ってるこいつが、俺の誘いを受け入れるなんて。正気の沙汰じゃない。ハナからダメ元だったってのに。これで断られりゃ土方さんに堂々とチケット突き返せると思ったのに。
 なんやかんやと。結局こんなところにまで連れて来てしまったのだ。

 つーか、絶対にここ最近のこいつおかしい。
 いじらしく髪型きめてきて。
 助手席に乗りたいとか言い出して。
 挙げ句、顔を赤くしやがるんだ。
 こいつが一体何を考えてるのかわからん。おちょくってんのか、俺を。


「立てるアルか?」


 差し出されたこいつの手を、とらなかった。ほら、まただ。こいつは俺が弱ってるときに限って、普段見せないような優しい態度で俺に接してくる。
 俺が目を回して動けないところを見て、あざけ笑うのがこいつのはずなのに。いやに優しいんだ。一晩介抱するわ、栄養ドリンク投げつけてくるわ、俺の気ィ組んで、ガキにパチギきめるわ、
 ……たまに突拍子もなく気を回されるから。ほんと調子狂わされる。


 ……変な期待、しちまいそうになる。やめてほしい。


「もういい、一人でいけるから」


 壁や手すりにもたれながらその場で立ち上がった。まるでもう一軒行こうと言う酔っ払いサラリーマンのように、次いこ次!と促した。今日はもうすべての気持ちを振り払うために、淡々と園内を回ろうとしていた。
 立ち上がって自力で歩き始めた俺を見て。チャイナははぁ…と少し安心したようなため息をついた。
 そしてまたニコニコとはしゃぎ始めた。


「さっきのおもろかったアル!ジェットコースターも死んでるお前も!絶景だったネ!」
「さよですか。そりゃようございました……」
「次ネ、あれ乗りたいんだけど!いいアルか?」


 チャイナが指さした先を見ると。メリーゴーランドだった。馬と馬車が行儀よく並んでいて。キラキラ装飾が輝いていて。メルヘンチックな音楽と共に同じ場所をずっと回っているのだ。
 あー……こいつ、好きそーだなああいうの。


「てめー1人で、ドーゾ」
「せっかく来たのにお前も乗らないと損アルヨ?」
「俺ァもう、お前のわがまま付き合ってジェットコースター乗ったんだ。俺のミッションは終了した」
「終了してねーヨ!言っただろお前!」


 俺の目の前にぐるりと回って、仁王立ちしながら、ビシッ!と人差し指をまっすぐさされた。


「今日は一日私の奴隷になるって!」
「……いや。言ってない言ってない」


 奴隷になるとは言ってねーよ。
 付き合ってやるとは言ったけど。


「……仕方ないアルな。私乗ってくるからお前は一回休みを認めてやるヨ。さっきまで死んでたしな。復活したら次は一緒に乗るアル!」
「……わァったよ。待っててやるから乗ってこい」
「おぅ!一番強そうな奴取っ捕まえてくるネ!」


 そう言ってタカタカと好奇心いっぱいに乗り口へと走り去っていった。


「……やっぱガキだな。あいつ」


 宣言通り、一番デカイ馬捕まえて乗りこんで。こちらに向かって手を振ってくる。
 今のあいつには「無邪気」という言葉がピッタリだった。女が男にすり寄ろうとするときに放つ独特の嫌らしさなど微塵も感じさせない。まるで父親と二人で来たガキみたいに、遊園地の乗り物を無心で楽しんでいる姿に、

 ……やっぱり、惹かれてしまう。正直、可愛い。ほんとに心が持ってかれる。

 世の中にこんな父親いねーよな。娘に惚れる父親なんて。
 俺は旦那をある意味尊敬する。ひとつ屋根の下で何もなく過ごせるもんなのか?俺は彼氏にもなれなけりゃ、保護者にもなれねぇ。
 いったいどういう身分でここにいるんでィ……。

 近くのベンチに腰掛けて、あいつに手を振り返していた。自分が今どんな表情になってんのか、皆目見当がつかない。


 ただ、目の前で無邪気にはしゃいでいるあいつは知らない。俺が万事屋でやらかしたことを。
 後ろめたい思いは、ここに到着したときからずっとしている。だから、複雑な表情だったかもしれない。







 今から1ヶ月前の話だ。
 無音の中、なぜだか俺は急に目が覚めた。重いまぶたを薄く開けると、朝日がぼんやりと射し込んでいるだけの明るさで。万事屋の応接間は、まだ少し薄暗かった。
 そのときの俺が覚えていたことはというと、まず、酒で潰れて、万事屋のソファーまでチャイナが引っ張ってきてくれて、ゲロする俺の背中をチャイナがさすり続けてくれてたこと。チャイナは文句も言わずに無言で、俺の吐き気が収まるのを待っていてくれたこと。そんで、もう一度横になった俺に、毛布を一枚かけてくれたこと……。

 ああ……だからか、と理解した。俺が寝転がっていたソファーの真下。そんなところでチャイナが、毛布すら被らずに。無防備で寝ていたのだ。


「チャイナ……」


 かすれた声で呼び掛けてみたが。ぐっすり眠り込んでいて、チャイナは反応しなかった。
 視界の届ききる範囲で、周囲に意識を回した。空になった2リットルのペットボトルや、手拭いや、バケツが転がっている。バケツの中は綺麗に空にされていた。
 桃色のその髪はボサボサ。服も着替えないままで。こいつは疲れて寝てしまったんだなと、わかった。


「……なぁ、チャイナ、」


 自らの毛布を剥いで、チャイナに被せた。ファサッとこいつの体をくるむ柔らかな毛布。その上でもう一度呼び掛けたのだけれど。返事はなかった。………この際だから。小さく呼んでみた。


「………神楽、」


 名前を口にするとただそれだけのことで、愛しくて苦しい感情が込み上げてくる。目をつぶってその感情を飲み込んだ。喉がじんじんする。胸が痛い。ほんとどうしようもない。
 手を伸ばせばすぐ届く距離にいた。だが、手を出すことなどできなかった。理性は、本能を上回っていた。



 気持ちを自覚し始めてから、ずっと頭から離れなかった。ときには寝つけず、夜が長くなることもあった。
 神山が聞き耳立ててるとか、そんなことにすら気づけなかった。月が昇れば狼は男になり、男は狼になるのかもしれないが。俺は所詮チワワだろう。布団に潜って。じっとして。視界が暗く静かな空間の中で。徐々に想像していく。攻め立てられる自分を。

 指で、足で、唇で。何度も、ゆっくり、たっぷり。撫でられ、なぞられ、転がされる。
 そんな妄想で、快感を生み出していた。文字通り。気持ちひとつ伝えられない、こんな憐れで情けない自分を、慰めてやる。
 相手の名前を、切れぎれと呼ぶ。呼ぶたびに気持ちよくて。息も苦しくなるくらい。夢中になって。やめられなかった。もうこいつァドSでもなんでもない。だいたいいつも出した後、後悔してる。ほんとに、後悔ばかりしてる。
 性的興奮を埋めたい気持ちと。たとえ脳内でも、こっちがあいつを犯すような真似はしたくない気持ちと。両者がぶつかり和解した結果がソレだったから。もうどうしようもなかった。

 前々から思ってた。あいつにだけは、ときたまドSが通用しない。それは夜の妄想も、昼の現実も同じ。
 あいつに対してだけは、背伸びしなくていい十八のガキでいられる。癒されたり、胸を焦がされたり、年相応の感情に支配される。
 そこに甘んじてる自分は、このままではだめだと思っている。



 目の前に無防備なご本人が登場していて。
俺の気も知らねェで爆睡してる目の前。俺の本能は、完全にビビってしまう。
 前日の粗相で体力を使い果たしたせいか。それともハナから俺が根性なしなのか。
 いずれにしても股間は大丈夫。反応しないでいてくれている。ああ、助かった。



……なんて、そんだけで終わるわけ、なかった。残念なことに。

 チャイナがおもむろにぐるりと寝返りをうったのが悪かった。
 腕を万歳させた形で、手をあげて。うつ伏せから横向けの体制へ。こちらの方へ横腹を見せる向きの形で。すやすや寝息を立てていた。すると、スリーブレスのチャイナドレスから、二の腕や脇にかけての白い肌が丸々見えていた。
 体臭なのか、シャンプーなのか。比較的にも絶対的にもいい匂いが香ってきた。その時点でやばかった。


「………やめて、ほんと」


 女の二の腕は胸と同じ柔らかさだといういらん知識が誘惑して。手を、前へ伸ばさせようとする。
 薄暗い部屋の中、徐々に明るくなりつつある窓からの日光に照らされて見えてくる。白く、うぶ毛ひとつ感じさせないナメラカな肌。きっと触ったら柔らかいに決まってる。


 ……さあ、触れてみろ沖田総悟。ここでまさかの鈴村ボイス。ちょっとスイッチ入っちゃった鈴村ボイス。脳内に響いた。

 戦さの始まり。脳内戦争の開幕。

 だめだという反対勢の声はこうだ。
 たった一人の女に、ここまで惚れ込んでしまったことが。初めてなのだから。どんなに暴言を吐かれようと、ゲロインだろうと。本気で好きになっちまったのだろう。ならば、考えてみてほしいと。
 人殺しのお前が、血に染まった手で汚せるのか、と。

 いやいやいいじゃん別にという賛成勢の声はこうだ。
 男なのだから仕方ないと。少し触るくらいなんだと。性器を触るわけでもないし。何を恐れる必要があるのか。それにわかっているだろうと。
 ドSキャラのお前が、このままソフトMな自慰を続けるつもりか、と。

 ……いや、どっちもごめんなんですが。

 両者の言い分は俺の脳内で平行線を辿る一方だった。だがそもそも、元を辿れば、たった一人の人間でしかない。戦争に決着はつきやしない。勝敗はよくわからんしもはやどうでもいいのだ。
 ……そんなことよりも。困惑している。戦争が活発になるにつれて、……下半身が、順調にイキり立ってきていて。痛い。


「……あぁ、やばいなこれは」


 こんなところじゃマズいわさすがに。

 のっそりと起き上がった。体を暖めて眠ることができたお陰か、頭や胃はほとんど痛んでいなかった。それよりも、体の下がずきずき痛むように熱くて、だめだった。
 ソファから足を片方ずつゆっくり下ろして、チャイナを起こさないようそっと応接間を出ていこうとしたが、


「……おーい、どこいくアル」


 ソファーから数歩離れたところで、背後から、そのとき一番聞きたくなかった声が聞こえてきた。寝起きの声は無駄に扇情的だった。
 当然、後ろへ振り返り顔を見せることなど、できなかった。


「……厠、借りるから」
「ふーん……いいけど……、反対ほーこーアルヨ……」


 眠そうな声で指摘されたので早足できびすを返して厠の方向へ向かった。
 後で戻ったときにわかったが、あいつはそのまま再び寝てしまい、俺の慌てる理由については察していないようだった。







「…………ャ…ィナッ、……」


 手の甲を咥え、漏れる声をすべて殺し、……事を終えると腰の力が抜けてうずくまった。
とろんと垂れた視界から、出す直前浮かべた残像が、消えていく。使用済みのトイレットペーパーをすぐに流して、その水音で、荒く余韻に浸る息の音をごまかした。
 そしていつも通り後悔していた。

 ……危なかった。いや、危ないってか、もう手遅れだ。
 下半身だけじゃなくて。胸の奥もずきずきと苦しいし……荒い呼吸もなかなか収まらなかった。こんなことやめてしまいたいのに。生物学的に無理なのだろうか。

 ふっと、すぐ横の壁を見た。そこには手作りの予定表が貼られていた。掃除当番がどーだ、飯の当番がどーだ、3人が喧嘩しながら作成したであろう日常のひとこまが飾られていて。
 ほんと、こんな場所で俺は何してんだろう……。ちょっと笑えた。

 性転換するウイルスならぬ、性を強調させるウイルスでも仕込まれたんじゃねーだろうか。そう思えるほどには。性を意識するようになっていた。
 こんな自分の姿を、思考を、チャイナには絶対に知られたくなかった。ここ最近ほんとに、夜な夜な体も心も、言うこと聞かなくなっちまって。自分でもキメェと思うから。

 人を殺すことよりも、人を好きになることの方が。かえって厄介じゃないか。延々と続く分。苦しさから解放されないのだから。
 もうこの際、好かれなくてもいい。ただ隠したい。隠し通したい。そう思う一方で。……できることなら、好かれたい。気持ち伝えて、楽になりたい。そう思ってしまう自分も混在していた。








 俺の中で回り続けているそんな気持ちも知らないで。あいつはまだはしゃいで回り続けていた。メリーゴーランドで延々遊んでいる。
 もはや俺の存在を忘れている気がする。別に構わねーけど。
 同じ景色しか見れねーのに。あれを何回も乗る楽しさがわからない。どうせなら、同じ景色より、新しい景色が見たい。この謎の感情ループから、抜け出してしまいたい。


 幸いなことに、俺はそんなにバカじゃねぇから。オンとオフの切り替えは誰よりもうまいと自負してる。
 昼間の俺は、卑猥なことなど何一つ抱かない。仕事だと思えばいい。そう、仕事なのだこれは。近藤さんからチケットを消費しろという任務を任されたと思えばいい。
 緊張もするし、胸の鼓動に動揺もする。ただ、お天道様さえ沈まなければ。正気は保っていられる。

 月が綺麗だと伝えたくないのなら、
 月が出ないうちに引き返せばいいだけだ。

 わざわざ芝居うって服装も。さもこのあと出勤が控えてますという装いをしてきた。そして、見事にこいつは騙されてくれた。
 ああ、やっぱこいつバカだわ。……バ神楽で。バ可愛いやつだ。


「なんか目ぇ回ったアル…」
「十何回も乗ってりゃそーなるわ」


 よろよろと戻ってきたこいつはそれでも、次の乗り物行くぞ!と高らかに宣言する。
 へいへいと、ただついていくしかなかった。


「今度はあっちのちっちゃいジェットコースター乗りたいアルー!」
「は?ジェットコースターはさっき乗ったろ?」
「あほアルなぁ。大きいジェットコースターの後に小さいジェットコースターを悠々乗りこなすってのが¨通¨の楽しみ方ネ」
「¨通¨ってお前……初めて来たくせによう言うわ」
「お前だってあれくらいならきっと悠々乗りこなせるネ!何があったか知らんが大人になる前にジェットコースター嫌いを克服するいい機会アル!」


 ほら、早よ行くぞ!と、
 手首をギュッと握られ、引っ張られた。

 その度にしばし動揺させられる。こんなにこいつに触れられることなんて、きっと今しかないから。
 温かくて、柔らかい手のひらの感触に。胸が緊張する。

 今日を最初で最後にする覚悟だ。今日を楽しんだら、もうほんと、こいつにこんな感情を抱くことも、やめてしまおうと思ってる。
 俺はソフトMでもねーし、自由に恋ができるパンピーでもねーわけだから。いい加減、突きつけられた自分の現実の身分から、逃避するのも、やめよう。

 好かれたいなんて、バカな考えは捨ててしまおう。

 半日ありゃ十分だな。たぶん。
 こいつが笑って楽しんでくれてる様子を、こんなにすぐそばで見ることができて
 それだけで幸せだと思えたから。


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