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めぐりあひて

二次創作ブログです。原作者様等とは一切関係ありません。

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月6

月5のつづきです。
嘘吐きは泥棒の始まり、ならば警察は……?








 私は車の中でぐっすり眠れたおかげで、緊張はどっかへ吹き飛んでしまった。それよりも今はわくわくの気持ちが勝ってた。
 初めて来た遊園地、そこにいる人たちみんながはしゃいでいて。うきうきしていて。かわいいキャラクターが風船持って歩いている。足がうさぎみたいにぴょんぴょんする。


「ねーねー!早く行くアル!」


 あいつは運転したあとだからかちょっとだるそうにしていて。私にぽいとチケットを渡した。よっしゃ!!と。私は入り口ゲートを全速力で潜り抜けた。


「おーい待てクソガキ」
「早くしろクソガキ!!」


 ジョギングの構えで足踏みしつつ、あいつが来るのを待った。


「まだ時間あんだろ、そんな慌てんでも」
「何言ってるネ!ここの乗り物全部乗るまで私は帰らないアルヨ!」
「大丈夫大丈夫。お前と精神年齢同じやつらはみんな寺子屋の時間でィ。ガキの暇人はてめーだけだから今日はガラガラだよ」
「何だヨー!お前だって暇人のガキのくせに!」
「これでも立派な社会人やってらァ」


 最初の乗り物はあれ!あそこにあるゴーカートがいい!
 そう思い、早くしろ!とこいつの手首を掴もうとしたら、ひょぃっと器用にかわされてしまった。


「お前、傘」


 かわされたその手で指さされた。


「おおう!こいつァうっかりしてたアル!」


 快晴の中、傘をさすこともすっかり忘れてた。というかそんな設定もすっかり忘れてた。


「頼むぜ。お前ぶっ倒れたら旦那に怒られちまうわァ」
「大丈夫ヨ!銀ちゃんもそんな設定忘れてるアル!」


 私はたったか駆け出した。
 片手には傘を。片手にはこいつの手首を。
 ぐいぐい引っ張ると足をもたつかせながらもついてきてくれるこいつがいた。

 一瞬、後ろを振り向いた。
 手首と私の顔から視線をそらしているこいつが、傘の隙間からちらりと見えた。





 私は今日、ここについたら思いきって、やりたいことがあった。それは、遊園地にある乗り物を全制覇すること、お土産たくさん買うこと(ていうか買ってもらうこと)、…………それから、こいつに、私が好きだとしっかりばっちり言わせることだ。
 そして……全力で断ってやるのだ!ふはは!想像するだけで愉快アル!

 うやむやになんてさせるものか。
 今日で決着つけてやるアル。
 もし、今日何も言ってこなかったら、私はもう二度とこんな場所にこいつと来るものか。こんな、緊張する気持ちごまかしながらはしゃぐなんてこと、するものか。





 ここに来て数時間がたった。けれど、なかなかこいつは口を開いてくれそうになかった。
 それどころか、時間がたつにつれてどんどん不機嫌そうな顔になっていく気さえした。なんでだろう。私がさっきずっと、こいつ放置してメリーゴーランド乗ってたせいかな。それとも、嫌がってるのにジェットコースター無理やり乗せたからかな?それとも……私が車の中でちょっと怒ったから?


「ねぇ……何か怒ってるアルか?」


 小さいジェットコースターも何回か乗り終わって、この遊園地の真ん中にある噴水の端に、私たちは腰掛けていた。

 こいつは……、沖田は、
 私の目を見ようともしてくれない。


「別に」
「別にじゃねーヨ。エリカ様は古いアル」


 ベンチに座ったまま足をぶらぶらさせていた。
 話すことないなぁ……。
 こういう空気が嫌だから。ここについてから結構テンション上げてく感じで行ってたのに。さすがに私もちょっと遊び疲れちゃった。一呼吸置きたいネ。


 そのとき。
 ギュルルルるる!!
 私のお腹の虫が大きな悲鳴をあげた。

 おかしいな、と。時計を見るともうすでに昼の2時過ぎだった。夢中で遊んでたから、こんな遅い時間になるまで、ランチのこと忘れてた。


「……なんか食う?」


 げ、お腹の音、聞こえてたかな。
 相変わらず私に視線を合わせないまま、懐から財布を取り出して。沖田は中身を見ていた。
 私も自分のポシェットを開けようとした……けど、やめた。銀ちゃんからの忠告が一瞬頭をよぎったけど。こいつがせっかく奢ってくれようとしてんだし。まぁ気持ちよく乗っかとこう。


「私ソフトクリーム食いたいアル」
「それ昼飯じゃねーし」


 そう言って私にポンと500円玉だけを渡した。


「ちょっとぉ!これじゃ足りないアルヨ!あのスペシャルソフトクリームが買えないアル!」
「高っか。ぼったくりもいいとこだな」
「真選組(お前ら)への税金よりはまっしアル」


 こいつはもう二枚の500円玉を私の手のひらに乗せた。どんだけ500円玉持ってんだよこいつ!?……わざわざ、使いやすいように崩してた、とか?そんなわけ、ないか。


「俺はいらんわ」
「いらんって、お腹すかないアルか?」
「なんかあんま減ってねーんだ」


 ひょっとして私がジェットコースター乗せたからか?
 目が合わないから、こいつが何考えてるのかいまいちわからなくて困る。


「……じゃぁ飲み物は?」


 私はちなみにオレンジジュース!と宣言すると、


「じゃぁコーラで」


 そう言って、手でシッシとされた。ムカッ!こいつ、レディーを片手でパシるアルか?
 わざと聞こえるようにちっ!と舌打ちして。私はポップな売店の方へ向かった。

 ちょっと、いややっぱ、だいぶ。疲れちゃったかもしれないアル。

 こいつは好きだと言ってくれるどころか、今日一日ずっと冴えない顔をしている。
 こんな非日常の場所に来たら、私の思考回路も非日常に染まってしまうようで。お前が売店行って買ってこいや死ねヨ!なんて文句を言えば、こいつはもっと機嫌損ねるかなぁ……とか。ジェットコースターだって私はもうちょっと乗りたかったけど。こいつ嫌がるかなぁ……とか。普段じゃ絶対考えられない思考をして、わりと大人の対応はしてあげてるのだ。でもこいつは絶対気づいてない。
 世のカップルたちはこういうところでデートして。だから、日常に戻ると一気にすれ違うアルな。だってここ非日常だもん。現実世界とは違って当然ネ。遊園地の洗脳恐るべし……。

 と、それはともかく。 沖田はとにかく楽しそうな素振りをちっとも見せない。え、君はいったい何しにここに来たアルか?と小一時間は問い詰めてみたい。
 ふと、順番待ちの短い列で周りを見れば。遊園地マジックにかかった人たちばかり。せっかくのこの非日常を満喫しようと、家族が、カップルが、みんなニコニコと楽しそうにステップを踏んでいる。こんなに重い気持ちでいるのは、私とあいつくらいだ。







「いいなー神楽ちゃん遊園地かぁ。僕も小さいとき一度だけ姉上と一兄に連れてってもらったことがあったけど。楽しかったなぁー…」

 数日前の、呑気な新八の声が頭をよぎった。

「遊園地なんてガキとカップルの溜まり場だろ?俺には一生縁が無ぇ場所だわ」
「わかりませんよ?銀さんだっていつかいい人が現れるかもしれませんし、結婚して子供ができたら行くかもしれないじゃないですか」

 応接間で鼻ほじほじしてる天パと、机ふきふきしてる眼鏡が会話してた。

「私……ほんとに行ってきていいアルか?」

 二人になんだか申し訳ないような気持ちになった。
 思えば、万事屋トリオはどこへ行くにも一緒なんだ。もちろん仕事やプライベートで別行動はするけど。大して時間も距離も離れないし。誰がどこでどんな感じで過ごしてるかはいつもだいたい把握してた。

 でも、今朝の私は知らなかった。二人が私をつけていたなんて。

 もちろん恥ずかしかったし。帰ったらとっちめてやろうとは思ってる。沖田がミサイルぶっぱなしたときもざまあみろとも思った。
 思った、けど。私があいつらの行動予定を知らなかったことに。ちょっとだけ寂しくも思えた。

「いいに決まってるじゃん、楽しんでおいでよ」
「まぁ気晴らしに行ってこい」

 数日前の二人の言葉を思い出してると、涙が出そうになってきた。
 ジリ貧金無しだっていい。
 私……やっぱり。銀ちゃんや新八とも一緒に来たかったかなぁ……。それから、定春も。姉御も。九ちゃんも。そよちゃんも。それからそれから……





 考えていると、列がさけて私が先頭まで来ていた。あわてて目をごしごしして、ショーケースを確認する。


「す、すんませーん。この特大ソフトクリームのミックススペシャル盛りで、あとコーラひとつとオレンジジュースも」
「あれ?あんた銀さんとこの……」
「……あれ!マダオぉー?」


 見慣れたサングラスの叔父さん。略してミサオ、じゃなくて、マダオだった。売店の販売員として手際よくレジを打っていた。
 この重い気持ちの中、知ってる人に会えたのはちょっと嬉しい。しかもあいつと二人でいるところじゃなくてラッキーだ!
 マダオはレジを打ちながら、私に気さくに話しかけてくれた。


「季節限定だけどバイトで雇ってもらえてな。これでしばらくの収入にはなりそうだ」
「良かったアルな」
「それはそうと今日は銀さんは一緒じゃねーのか?新八くんの姿もないし…」


 マダオはキョロキョロと見回すと、何かを察したと言わんばかりに、あっ……と声をあげた。


「神楽ちゃん、もしかして。そーか。まあそんな年頃かな。そーかそーか」
「違ぇヨ。なんか知らんけど違ぇヨ!」
「え?違うってあれでしょ?今日はデートでしょ?」
「マダオが思うデートとちょっと違うアル。なんかもう、こんな楽しい場所に来て泣きたくなんの初めてかもしんないアル……」


 おや喧嘩でもしたかい?とマダオ。
 喧嘩できるならその方がいいヨと、私は首を横に振った。


「なんか知らんがうまくいってねーみたいだな。けど、神楽ちゃん。男ってのは惚れた女には無愛想になっちまうもんだから心配すんな」
「そうゆう慰めは結構ですネ」
「あとそうだな。女は多少わがままになってもいいもんだ。男は気も財布の紐もユルくなってるに決まってる、だから、」
「おーい人の話聞けヨー!」


 そうやってべちゃくちゃ話してる間も、マダオは手際よくコーラなりソフトクリームなりを準備していた。


「だから言いたいことがあるならジャンジャン言っときなよ。我慢する必要はないさ」


 そう言って、ほい、と。商品を手渡してくれた。


「こいつは俺が奢るよ。ここにありつく過程で銀さんにも世話になったしな」
「いいアルか!ありがとうアル」
「まあ頑張りなさいな」
「あ!じゃぁマダオ、もう一個注文していいアルか?」


 私はショーケースに再び視線を落としていた。






 ……ベンチに戻ると。ちらっとだけこっちを向いて。また視線をそらしたままの沖田がいた。


「遅かったな」
「そこそこ並んでたアル」


 ほい、とコーラの入ったジュースを渡すと。サンキュと言って飲み始めた。


「……喉、渇いてたアルか?」


 私から紙コップを受けとるなりすぐに飲み始めたのを見て。我慢してたのかなぁと何となく思ってた。
 私も、ソフトクリームの傍らオレンジジュースのストローに口を付けて飲んだ。


「ちょっとだけ渇いてた」
「ちょっとじゃない癖によく言うアル」


 これも飲む?とオレンジジュースを差し出すと、一瞬パチパチと瞬きをされたあと、いらない、と返された。つれないやつアル。


「あとね、これも買ってきたアルヨ。マダオがソフトクリームとか奢ってくれたからネ」
「マダオって……あのグラサンのおっさん?」
「あそこで店員さんやってたネ」


 そう言って、私はサンドイッチを取り出した。二つ入りで包装されてるよくある感じのやつだけど。コンビニに置いてるのよりは手作り感があっておいしそうなやつだった。


「え、なんで」
「お腹すいてなくてもちょっとは入れとかないとダメアル。私はソフトクリームがあるからいいケドな」


 ほい、とサンドイッチを手渡すと、ちょっと戸惑うように手を伸ばして。それを手にとってくれた。
 しばらくマジマジとそれを見つめてから、ソフトクリームを頬張る私の横で、それを一口かじっていた。


「……旨い」


 ぼそりと呟いたその言葉に。私は表には出さなかったけど。心底ホッとした。

 じっと横顔を見てみた。やっぱり視線は合わなくて。ずっとサンドイッチの方を見てる。
 近くで見て。初めて気づいた。沖田の顔が、ちょっとだけ泣きそうな顔になってること。
 それは、1か月前に公園でここへ誘ってくれたときのこいつの顔と同じとも言えるし。霧江と3人で攘夷浪士に捕まってたときに、泣きたいと言ってたこいつの顔と同じとも言える。客観的に見てたら、泣きそうな顔でもなんでもないのだけど。私からしたら、泣きそうに見える顔だった。


「お前も食う?こっちのサンドイッチ」
「え。いいアル。お前食えヨ」
「ソフトクリームだけじゃ腹減るだろたぶん」


 そう言って。包装ビニールに収まったままのもうひとつのサンドイッチを、手渡してくれた。ソフトクリームのあとで食べようと、それを傍らに置いた。


「……ありがとネ」
「こちらこそ」


 お釣りを返そうとしたら。いらないって言われた。500円玉まるまる残ってんだけどな。
 今日のこいつ、なんか優しい。つれないけど、優しい。普段のキャラからドSを取り除いたみたいに優しくて。すごく戸惑ってしまう。……でもその一方で、泣きそうな顔もしている。どんな気持ちでいるのか。さっぱり私にはわからなかった。


「……ねぇ、沖田」


 私が滅多に呼ばない名前で話しかけたことに反応して、ピタリと沖田の手が止まった。私はマダオからもらったアドバイスを、実行に移そうと思った。


「……さっきからなんで、笑ってくれないアルか?」


 なんで悲しそうな顔、してるアルか?
 そんな顔されてたら、私も楽しくなくなっちゃうヨ。
 視線を合わせることが、私もできなくなっていた。







 また少し前のことを思い出していた。今度は万事屋じゃなくて。公園でさつきちゃんやよっちゃんたちと遊んでたときのことだ。

「神楽ちゃん今度遊園地に行くんだって!羨ましいなぁ」
「帰ってきたらお話聞かせてね!」

 さつきちゃんたちに羨ましがられて、ちょっといい気になってたとき。よっちゃんが余計な感じで話に首突っ込んできた。

「よう神楽ー!俺知ってんだゾー?あのサド丸野郎とデートなんだってな!」
「え!デート!ほんと神楽ちゃん??」
「サド丸って、あのときのカッコいいお兄さんだよね?」

 どこがカッコいいのかさっぱり。チワワの散歩の間違いアルヨ!と私は反論して。女の子たちはきゃーきゃー言ってて。よっちゃんはケッと鼻ほじほじしながら去ってった。何しに来たんだヨあいつ。

「ああ見えてよっちゃん。サド丸お兄さんにヤキモチ妬いてるんだよ」

 さつきちゃんが耳打ちしてくれたけど。ふーん……と私は鼻ほじほじしてた。

「好きな子にはなかなか素直になれないものよね!男の子って!」
「そうそう!よっちゃんも不器用だよね!」

 さつきちゃん以外の女の子たちがキャイキャイしてた。おませさんな子たちネ。私は鼻くそをフッと吹き飛ばしたら。さつきちゃんが困ったように笑いながら言ってた。

「好きな子を誘うのって、きっと勇気がいるんだろうなぁ……。私にはなかなかできないや」

 ヘヘッと照れくさそうに笑うさつきちゃんは可愛かった。あんな子なら、私がデートしてあげたいくらいだ。
 さつきちゃんは、ポンと私の肩を叩いて、言ったんだ。

「神楽ちゃんが笑って楽しんでたら、それだけでサド丸さん、喜んでくれると思うよ!きっと!」







 さつきちゃんに言われたから、そうしたわけじゃないつもりだった。
 でもほら、結果的に、こいつは喜んでくれてないわけで。何とも言えない気持ちだった。

 私は現状、沖田のことなんて好きなわけじゃない。でも、車の運転とか、ちょっとかっこよかったし。ジェットコースターで目を回してたときとかは、ちょっとかわいいとも思ったりした。
 だからその、……なんというか。
 そんな感じで、今日くらいは、もう少しお前の素顔見せてくれたっていいんじゃないアルか?
 隙をたくさん見させてもらい弱味を握ってやろうとか。そういうのもあるけど。それだけじゃなくて。

 お前が笑うと、どんな顔するのかなっとか。単純に気になるアル。
 ちょっとぐらい、笑っていてほしい……。


 それとも、あれかな。私が言えば笑うんだろうか。お前のこと、…好きになるかもしれんと。そんな一言を伝えれば、笑いかけてくれるんだろうか。
 でも、私はそこまで優しくないからな。あいにく私はそんな博打に出るほど軽い女じゃないアル。
 私は受け身でずっと待ってる。いつになったら、言ってくれるのかって。待ってるのに。 言ってくれるどころか、笑ってさえくれないアル。

 月が綺麗だなんて。好きだなんて。
 どうしようもない嘘吐きじゃないか。


「……笑ってヨ、ちょっとは。
 でないと私、なんか寂しいアル」


 今の気持ちをありのままに伝えた。
 胸の奥がずきずきっとした。


 そしたら、超いきなりだった。
 プーーッ!!とこいつは吹き出した。


「……いや、マジ勘弁!はー腹痛てぇー!!」


 そう言って超ケラケラ笑いだした。
 え!?ちょっと待てお前!!
 そんな早く笑うか普通!?もうちょっとこう、間の取り方ってもんがあるだろおい!!


「な!何アル!何がおかしいネ!?」


 あわててソフトクリームひっくり返しそうになった私。おっとっととバランスを整えた隙に。頭に手を乗せられて。撫で撫でとされた。


「可愛すぎ……お前。寂しいだって。ハハおもろすぎ!しかも腹の虫の音でかすぎだしな!あーマジバ可愛いなお前!!」


 はぁ??、と拍子抜けした。
 腹の虫の音ここでほじくり返す??
 何かと思えば、恥の時間差攻撃アル!
 そんなの卑怯ヨこのクソサドが!!


「お前!許さんッ!!」


 私が空いてる方の手で鼻フックかけようとビュンッ!と腕を伸ばすと、沖田も空いてる方の手でそれをかわしつつ、私のソフトクリームをひったくろうとしてきた。
 盗られてたまるか!!
 私は思いっきり体ごと後ろへのけぞらせた。すると、ソフトクリームは地面へ落下しそうになった。
 やばい!
 限界まで捻ってた手首のスナップはきかせられなかった。

 そしたら、ひょぃ、と。手首を握られていた。後ろに倒れかけた姿勢のままの私。正面から。すごく近くの距離に、沖田がいて。私は固まってしまった。
 そしてよくわからないが物理運動の作用的なもので、ソフトクリームに残ってた上部だけが、ストン、ペチャッ……と、地面に落下してしまった。


「涙拭けよ」


 ソフトクリームはコーンの中身だけになってしまった。けど私は、そんなことはさておき、涙が出そうになっていた。


「お前……やっとドS復活したネ!」


 別に悲し涙でも嬉し涙でもないし。よくわからないけど。
 今のあほみたいな手攻撃のやりとりで。いつものこいつが垣間見えて現れて、なんだかホッとしてしまった。私の知ってる沖田が現れて、安心して。ちょっと涙まで出てきてしまった。


「……悪ィが、復活してねーよ」


 そう言うと、私の手首をグッと引っ張って。元の体制に戻してくれた。


「俺は今日……ずっとてめーのこと、可愛いと思ってた」


 目と目がまっすぐ合っていた。それは今日で言うと、「髪型似合ってる」と車の中で言ってくれたとき以来だった。


「それ……って………」


 私がもごもごしてると。
 観念したように、また笑った。


「チャイナ…………俺はお前のこと、ずっと好きだった」


 手首を掴まれたまま。噴水の水しぶきが風に乗ってほんのり飛んでくる中で、
 告白された。

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