My Generation3 okita x kagura 2015年05月07日 My Generation2のつづき(15/05/07加筆)人生のカンニングはできません その日以降、神楽の笑顔は次第に見られなくなっていった。試験まで残り一週間というその時期。わざと授業を聞こうとしない生徒は神楽ぐらいだろう。唯一かろうじて、銀八の担当する国語だけは聞いていたが。それ以外は寝たり酢昆布をモサモサ食べたり落書きしたり。完全に放棄。一人の世界を満喫していた。「神楽、授業に集中しなさい」先生からのそのような注意も無視を決め込む。謝るどころか、一言も言葉を返さない。これまでにないような神楽の態度であった。「次神楽ー、続きから読めー」「嫌アル。でも銀ちゃん先生の頼みなら聞いてやるヨ」「頼みじゃねーし。何それなんでそんな上から目線!?つーか銀ちゃん先生って語呂悪い呼び方やめろっつってんだろ!」不真面目ではあるが、銀八に対してだけはいつもどおり接する神楽。銀八は神楽の異変を気にかけてはいた。しかし、何をするということもなかった。しばらく様子を見ていようと、いつも通りの掛け合いで接していた。銀八が再び教科書のページを指定すると、神楽はボールを抱えて椅子の上に立ち上がった。「銀ちゃん先生!ドッジボール!」「銀ちゃん先生はドッジボールじゃありません」「ドッジボールしたいネ今すぐ!」「てめー一人でやってろ。ただし頭ん中でな」「一人じゃ勝負できねーヨ。教師の癖にそんなことも知らないアルか?」「ダァァもうくそっ、頼むわ授業進めさせてくれー!」銀八の反応に楽しそうに笑う神楽。そのときだけ見せる表情であった。しかしそんな勝手気ままな神楽に対し、嫌悪感を持つ生徒は、決してゼロではなかった。クラスの誰とでも気兼ねなく話していた神楽だったが、誰も神楽に話しかけようとしない。神楽もまた誰へ話しかけようともしなかった。「神楽ちゃん、一緒にお昼ごはん食べ…」「ごめん、一人で食べるネ…」昼休み、いつもは妙たちと弁当を食べている。しかしあの日からしばらく神楽は妙が声をかけようとするや否や教室を出ていく。そして屋上や校庭の隅で一人ごはんを食べていた。それは妙が嫌いだからではない。この間「迷惑だ」と言ってきた九兵衛も一緒にごはんを食べているが。それがどうしても気まずかった。それもひとつの理由。ただ、一番大きな理由は、妙に諭されたくないということ。妙は神楽よりもずっと大人で。きっとごはんでも食べながら、神楽を励ましつつも、たしなめるだろう。それが嫌だった。心配をかけたくない、かけられたくない。今の神楽は、クラスの誰とも話したくなかった。今誰かと関わればケンカになる、そんな気がしていた。「……寂しくは、ないネ」お弁当に入っていた酢昆布をくわえながら、神楽はつぶやいた。今日はグラウンドの隅にある花壇の上に座り込み弁当を広げていた。そしてそこから見える景色を一人眺めていた。校内ではごはんを食べ終わった後の生徒たちがワイワイと楽しそうに遊んでいる。騒いでいる。しかし当然のこと、そこには神楽の同級生の姿は一人もいない。皆下級生ばかりだった。ほんの一年前、…いや半年ぐらい前まで。神楽の周りは休み時間、こうしてグラウンドではしゃぐような人ばっかりだった。なのに……「みんな、頭おかしいアル」そしてまた次の一口を頬張った。もぐもぐと味気のない食べ物を噛み潰す。神楽とほぼ同時に握り飯を一口頬張った沖田。教室の席に頬杖をついてダルそうに窓の外を見ていた。校庭の隅にいる神楽を見つけ、その様子をぼーっと見ている。「…で、あるからして、今月の風紀委員会が掲げる目標としてはだな……」昼休みの定例会。教壇に立ち力説する近藤を尻目に、沖田はまた一人の世界に耽っている。しかしこの日はアイマスクの代わりに、小さなピンク頭に視界を留める。「何やってんだかあいつ…」窓の外をしばらく眺めていた。こちらに気づいている様子はない。それもそのはず、この3階の教室から花壇までの距離はそこそこある。遠近で小さく見えるのは当たり前だが。沖田にはそれにしても普段より小さく見える気がした。遠く見えないその表情は、泣いているようにも見える。怒っているようにも見える。しかしいずれにしても、意地を張っているのだ。そう考えていた。沖田の座席は神楽の隣。しかしここ最近一言も会話をしていない。それは沖田だけではなく周りも皆そうだ。神楽を疎ましく思う者が半分。近藤や土方、新八たちのように神楽の様子を気にかけつつあえて話しかけない者が半分。そして、めんどくせー…と思う者が約一名。「委員長ー、話全く聞いてないやつが約一名いまーす……」土方が手を挙げて近藤に伝える。近藤は土方が誰のことを言っているのかすぐにわかる。窓際の席に座り、手に持った握り飯を食べかけのままぼんやりとしている人物が約一名。近藤は勢いよく叫ぶ。「うぉぉおおい総悟!!ちゃんと聞けぇぇい!!」その瞬間、ちょうど予鈴のチャイムがなった。花壇に座り込んでいたピンク頭はのっそりと立ち上がる。そして校舎の中へ姿を消していった。「……近藤さん」沖田はまっすぐ向き直る。そしていつもの無表情かつ棒読みで提案した。「今月の校内目標、ぼっち飯の撲滅ってのはどうですかィ?」そして数日たち、昨日、統一模試の日がやってきた。その日の職員室は朝から世話しなく回っていた。科目の数、枚数、時間管理。骨の折れる作業は山積みであった。「あぁあったくめんどくせーな!どれがうちのクラスの試験用紙ですかコノヤロー!ちゃんと整理整頓しとけっつってんだろーが!」昨日の自分への叱責。銀八は生徒に手渡す分のテスト用紙の量の多さにすっかり萎えていた。そんな銀八を見兼ね話し掛けてきたのは、同じ教師の服部である。片手には天井にも届きそうな紙の束を揚々と乗せている。「銀八先生、一番大変な思いしてんのはテスト受ける生徒なんだからよ。俺たちは配って監視するだけだぜ。楽なもんだ」「そりゃそうだけどよー。つってもなぁ、監視すんのも結構疲れんだよこれ。肩凝るし?トイレもおちおち行けねーし?」「まぁ確かに…俺の場合特に肛門の方が」「汚ったねぇよ朝から痔ですかお前は」「いや、朝だって晩だって常に、だ」そんな会話を繰り広げているところ。この学校の校長ハタが背後から迫ってきた。「オイ、おめーらそろそろ時間。各教室行ってこい」「あーたくっめんどくせーの来たよこれ。もうどっすかなこの校長(バカ)」「君朝からケンカ売るの?校長に全力でケンカ売るの?」「銀八先生落ち着け、八つ当たりに校長はさすがにまずいよちょっと」「いやもうこの際八つ当たっとこうぜ服部先生もよ。つかマジうぜー顔も声もうぜー。もうその触角へし折りてー」「お前がうぜーよ。なんだこいつ。一教師のくせにその態度。ありえねーよ。もうこの際お前らなんか痔にでもなってしまえ。テスト監督で椅子に座りっ放しで苦しむがいい。うん、それがいい」「え?なんで俺まで?つーか、校長。もう俺すでに痔です…」ウダウダとそんな会話はあと数分は続いた。「にしてもだりーなぁ」銀八は廊下を歩きながら肩をポキッと一回鳴らした。廊下には安物サンダルのペタッ、ペタッという足音が鳴り反響する。「だいたいよぉ、監督なんて必要ないんじゃねーの?カンニングなんかやってもやんなくても本人の責任じゃん?カンニングして答えが書けても、頭にこれっぽっちも入ってねーで将来困んのは本人じゃん?カンニングするような奴だって所詮、人生の成功者のカンニングはできねーんだからよ今後。…… あれ俺今何回カンニングっつった?カンニング竹 山?」銀八がなんだかんだ独り言を言ってる間に、気がつけば3Zの教室前まで来ていた。銀八は引き戸の取っ手に手を掛ける。「まぁともかく?テストが嫌すぎて暴れ出す奴とかいるんならそりゃ監視もいるだろうけどさ、いくらZ組でもさすがにそんなバカは……」ガラガラと扉を開ける。教室の光景が広がる。目の前のその光景に、銀八は絶句した。「神楽ちゃんやめてー!!」銀八が扉を開けたのと同時に、生徒の叫びが教室に響いた。そこはもはやテストを開始できるような状態ではなかった。 普段は机と椅子が規則正しく並んでいる木床の教室。しかし今は、椅子や机がすべてバラバラにひっくり返り、教室の端へと投げ飛ばされていた。 黒板や壁は傷だらけ。皆が教室の隅に身を寄せ、机や教卓の後ろに隠れている。そんな中でただ一人、 拓けた教室の真ん中に仁王立ちしている者が一人。小柄でピンク色の髪に二つのお団子。向こうを向いて立っているため表情はわからない。しかしその背中は小さく震えているようにも見えた。「……いたよ、ここに」銀八はつぶやいた。 [0回]PR