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めぐりあひて

二次創作ブログです。原作者様等とは一切関係ありません。

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My Generation4

My Generation3のつづき
(15/05/07加筆)


窓ガラス代は本人もちで弁償なのでボール遊びするときは気をつけるように!









教室の端から一人、ザッと前に出た男子生徒が一人いた。長い黒髪をなびかせ、神楽に二・三歩近づく。桂であった。


「リーダー!こんなことをしてもなんにもならない。やめないか」


桂はやや勇気を振り絞っていた。タイマンで小柄な神楽に一度も勝てたことなどない。投げ飛ばされる覚悟である。
しかし神楽は桂と目を合わせることもなく叫んだ。


「うるさいっ桂!」
「桂じゃないヅラだ。あれ?違う、桂だ。あ、それでいいのか…ハハハ」


軽快に笑う桂。しかし誰もつっこまないしボケもしなかった。笑いひとつ起こりそうもない空気。どうしようもないので、桂は出た歩数分下がり、元の机の後ろの位置に帰った。


「てお前!戻ってくんのかよ!仕方ない…ここは俺が!」
「大丈夫かあんた」
「なーに。これでも風紀委員長だからな」


桂に代わり近藤が一歩出る。


「チャイナさん、クラスのみんなも困っているしもうやめないか」
「うるさいっゴリラ!」
「グサッ……てな。もうそれは言われ慣れてるからなんとも思わないさ。なぁチャイナさんよー、俺の言うことを…」
「ストーカー!変態!クソ×××××!!」


神楽の暴言は止まらない。槍の刺さるような思い。しかし近藤は怯まない。


「いや、ストーカーじゃなくて!高校生として?爽やかな恋愛してるわけだし?…ってそーじゃなくて!!
 チャイナさん、テストが嫌な気持ちは俺も痛い程わかる。けどこんなことしたって試験は無くならないさ。ホラ、先生も来たことだし!」


近藤の指差す方。はっと神楽は振り返った。テスト用紙をどっさりと抱える白衣姿の銀八。いつも半分まぶたを閉じたやる気のない目がこの時ばかりは驚きと困惑でパチリと見開いていた。


「銀……先生……」
「神楽、これはいったい…」


銀八を前に神楽はゆっくり我に返っていくような思いがした。机や椅子の無い拓けた教室。ひっくり返ったゴミ箱や掃除箱。傷だらけの天井や壁。それらひとつひとつが神楽の目に留まっていく。神楽は両手を見た。我も忘れるほど、自分がやってしまったこと。手は何かの拍子にでぶつけでもしたのか、ところどころにアザや切り傷。少しジンジンと痛むような気さえした。

だが、それは束の間。すぐに神楽はまた我を忘れることとなる。

神楽が立ち尽くしていたとき、銀八が入ってきた扉と反対側の入口が突然開いた。ガランッとやや乱暴に大きな音が響いた。


「すまない妙ちゃん、僕が来る途中筆箱を道の溝に落としたせいで。遅れてしまった」
「ううん、気にしないで九ちゃん。まだ一分前だからギリギリセーフよ。ほら、みんなまだ必死に教科書にかじりついて……」


教室に一緒に入ってきた妙と九兵衛は同時に前を向いた。その瞬間、荒れ果てた目の前の光景に驚き、言葉を失ってしまった。


「い、いったいこれは……」


九兵衛が戸惑いながら教室の真ん中に目を向けた。すると、そこにいた神楽と目が合う。バシリと視線が混じり合う。


(迷惑なのも大概にしてほしい…)


九兵衛に言われた一週間前の言葉がふと過る神楽。迷惑、めいわく、メイワク……ああ。迷惑ってこのこと。今の私は、メイワクなんだ。このクラスに、もう、必要じゃない。有害。迷惑。
自分でも抑えられない程、言葉が脳内を溢れかえる。怒りのような悲しみのような、複雑な感情が込み上げてくるのを感じた。


「神楽ちゃん、君はいったい何をして…」


九兵衛が口を開くと、その視線の先に神楽はいなかった。え?と思う間もなく、右足に強烈な痛みを感じ、九兵衛はその場に崩れた。その足元には、渾身の蹴りを終え次の攻撃へと構える神楽がいた。


「!!?」


一瞬の隙をつかれた九兵衛はその場から飛び退こうと足に力を込めようとした。しかし、今しがた蹴りを食らった右足が指令通りに動かない。しまった。そう思ったとき、右目の視界には上靴の甲が近づいていた。神楽はそのまま力任せに蹴り飛す。


「ぐっ……」


九兵衛は額を突かれ、意識を飛ばした。軽いその体は蹴られた勢いに任せ、生徒が寄り固まっていない窓ガラスの方へと飛ばされた。教室は四階。晴れた朝。ちょうどそのとき、テスト開始時間を告げるチャイムが呑気に鳴り響いた。


「九ちゃんっ!!」


妙が叫ぶと同時に窓へ駆け出す。
九兵衛の体は窓の外へと吸い込まれるかのように飛んでいく。ひどくスローモーションに見えたその光景。近くにいた生徒は自分の身を九兵衛から離そうと逃げる。九兵衛を庇おうととっさに反応できた近藤や土方、新八、そして妙は、窓ガラスの方向から離れている。とても間に合わない。
妙は耐えられず駆け出した瞬間、一滴の涙をこぼす。誰にも知れず溢れたその涙は、妙の進む方向と反対側に傾き床へ。そしてその雫が床へ到達した瞬間。


バリバリバリッパリンッ!!!!


勢いよくガラスが割れる音。
校庭で体育の授業をしていたクラスの生徒、教師が皆動きを止める。そして音のする方を見上げた。
晴れた日射しの中、キラキラと輝くのは窓ガラスの破片。四階の教室。あれはたしか3年Z組の。しかし3年はたしか模試の真っ最中なのでは…。
目撃者が口々に驚きの声をあげている。割れた窓ガラスからはガラスの破片以外何も落ちてはこなかった。

3年Z組の教室の中。大きく割れた窓際のすぐ下の床の上。そこに、九兵衛をかばって抱きかかえている銀八がへなりと座っていた。


「先生っ!!」


生徒たちが口々に叫んだ。うなだれていた銀八はゆっくりと顔をあげた。
その膝の上、九兵衛は気を失っていた。額からは一筋の血が流れていた。
銀八は九兵衛の表情を一度確認する。神楽の蹴りで頭から血は出ているが大事には至っていない。気を失ってはいるものの、銀八の体に守られ、ガラスの破片で怪我をした様子もなかった。少し安堵する銀八。周りに駆け寄り口々に心配の声をあげる生徒たちに対し、片手を振って無事を伝えた。


「うんにゃ、大丈夫。こいつも、気絶してるだけだ」
「…九ちゃん」


人一倍心配をしていた妙に声を掛ける銀八。妙は胸を撫で下ろし、その場にへたりこむ。銀八はいつもと変わらない口調であったが。正直背中に走る痛みですぐに起き上がれなかった。


『先生、頭から血が』


エリザベスが手持ちの立て札を持って先生に詰め寄る。銀八ははて?ととぼけて頭をポリポリ掻く。九兵衛の血でもついたんじゃねーの?と誤魔化そうとしたが。ポリポリと頭を掻いた自分の手をふと見ると真っ赤に染まっている。うわーマジか。やっちまったぜオイ。これどーすんだ。今からテスト配んのかこれ?無理じゃね、これ?またあのバカ(校長)にどや、され……る………

銀八はそのまま体を横に傾けると、ピタリと動かなくなった。床に血がポタッと滴る。


「……先、生?」


気を失っていた九兵衛がその感触に気づいた。ゆっくり目を開けると、そこにはぐったりとうなだれた銀八がいた。九兵衛はひどく驚いた。


「先生……私……私、」


その光景に一番動揺していたのは神楽だった。声が震え、か細く呟いた言葉。銀八と九兵衛に向かって一歩、二歩と踏み出そうとする。九兵衛は銀八を支えるように体を起こした。


「神楽ちゃん、どうして…こんな」


九兵衛が言い掛けたが、その先の言葉は続けられなかった。
ゴスッという酷く鈍い大きな音が教室に響いたからである。

神楽の唇が切れ、口の端から血が流れた。じんわりと痺れて麻痺している頬の感覚。
そのすぐそばに立っていた妙は、神楽を殴った拳を、まだ握ったままでいる。二人とも何も声を発さない。沈黙の間隔。銀八の周りに集まっていた生徒、まだ教室の端に隠れていた生徒。皆が身動きできない。まるで時が止まったかのような空気。ところが、神楽の切れた口元に落とされた二発目の拳。その鈍い音に再び空気が切り裂かれる。神楽はその場に倒れこんだ。


「お妙さん何やってんだ!」


三発目をかけようとする妙を後ろから羽交い締め、止めたのは近藤であった。


「離して近藤さん!」
「待ってください、チャイナさんを殴っても仕方ない!」


妙に普段頭が上がらない近藤も、このときは引かなかった。近藤に拳の手首を握られ、それ以上妙が神楽に攻撃することはなかった。
膝と両手をついて座り込んでいた神楽。切れた口元の血は手の甲で拭って掠れる。そして、妙の顔を見上げた。
妙は怒っていた。普段滅多に泣くことなんてない。喜怒哀楽を表に出さず常にニコニコとしている妙。今は、目に大粒の涙をため、これ以上ないほどの怒りを表していた。


「神楽ちゃん!あなたがテストをさぼるさぼらないはあなたの勝手よ。……でもね、みんなを巻き込むんじゃないわよ!!」


大声で怒鳴った。しんとした教室に鳴り響く声。


「……何ヨ」


神楽はよろよろと立ち上がった。まっすぐに妙を見据えた。


「姉御も、みんなも。勉強、受験、テスト……。必死すぎて笑えるネ!
 私にはわかんないヨ。みんなの空気に、ついていけない……」


神楽は泣いてなどいない。少し笑うように。みんなを、自分を、嘲笑するように。言葉を床に落とす。
今度は落ち着いた口調で、妙は言い返 した。


「みんな、夢があるから必死なんじゃない。みんな勉強が好きなわけじゃない。でも、大学に行くなり働くなり。なりたい未来がある。そのために今頑張ってるんじゃない。なのにどうして……どうしてそれを邪魔しようとするの?」


お妙は怒りとそれを自分でも必死に抑えようとする気持ちにいっぱいであった。声が震える。神楽に対して、こんなにきつくあたるのは初めて。けれど、怪我を負った九兵衛、銀八。彼らに謝りもせず、わがままを貫こうとする神楽のことを、笑って許すことなど到底できなかった。


「神楽ちゃん。あなたには……夢がないの?
 そうよね?ないからこんなことができるのね…」


その言葉に神楽はハッと妙の顔をもう一度見た。何かを言おうと、口をモゴモゴとさせようとする。しかし、言葉はうまく出てこない。その代わり、妙が追い討ちをかけて言う。


「出ていって。Z組から。出ていって!!」


お妙が涙ながらに言った最後の言葉に、神楽は胸を潰されるような気持ちになった。神楽は皆を見渡した。ここには誰も、神楽を庇う人などいない。ああそうだ。神楽は今、とんでもないことをしてしまったんだ。気づいてももう遅かった。

次の瞬間、ダダッと勢いよく駆け出して神楽は教室の出口へと走った。何も言わず、ここから出ていこうと。妙の言葉通り、二度とこの教室になんか来るものかと。


「!!」


しかしそのとき、ズテッと、神楽は転んだ。
教室の入口の目の前。ちょうど銀八が入ってきた扉である。
神楽は何かに躓いていた。足元には銀八が放り出した試験用紙が散乱していたが、その上で堂々と仕掛けられた上履き、そこから伸びる黒ズボンの制服。その先を目でたどれば、見慣れたアイマスクを着用したやつの顔がある。ひっくり返った机の上で器用に足を伸ばして座っているその姿。
転んだ神楽が黙って見上げていると、アイマスクをそろりと前髪の上にあげて見下ろす顔があった。笑っているわけでも怒っているわけでもない。無表情の沖田であった。


「なんだてめーは。また俺の睡眠邪魔しやがって」


淡々とした口調で話しかける沖田。これまでのクラスでのやりとりなど見ていなかったのか。寝起きのようにのんびりと神楽を見下ろしていた。


「……」


神楽は黙って立ち上がった。そして、売られた喧嘩を買いもせず、そのまま教室の外へと姿を消していった。
廊下を走っていく後ろ姿。教室の中は、気を失った銀八を保健室へ運ぼうとする者、妙や九兵衛に駆け寄る者などでざわざわと騒がしくなる。


「バーカ」


沖田は誰にともなく呟いた。
歩み寄ってきた土方が沖田に声を掛ける。


「総悟、チャイナを探しに」
「行かねーよ。誰があんなバカに手ぇ貸すかよ」


沖田の発言に土方は少し驚いた。もちろん、沖田がクラスの騒動の中寝ているわけがなかったことは土方もわかっている。だから沖田がすべて把握して言っていることもわかっている。しかしてっきり、土方は、沖田は神楽を気にかけているのだと思っていたが。その返事は意外であった。


「今のあいつ、何しでかすかわかんねーぞ!」
「なんもしないですよあいつは。姐さんにあんだけ言われて。どーせどっかでぐずってらァ。ぐずってそのうち疲れて戻ってくるだろ」


そう、今はほっといてやろう。少し時間が立てば勝手に戻ってくる。それまで待てばいい。
そういったニュアンスを感じとった土方は、それ以上何も言わなかった。
沖田は土方に視線を合わせることもなく、ただ廊下の方へぼんやり、視線を宙に浮かせたままであった。

一連の騒音や震動から、他クラスの教師たちが直集まってきた。その日は当然、Z組で模試が実施されることはなかった。

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