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めぐりあひて

二次創作ブログです。原作者様等とは一切関係ありません。

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Moratorium2

Moratoriumのつづき。

シュウは考えていた。




さて、どうしたものだろうか。

シュウは一人、部屋の窓際に座って悩んでいた。
彼は今晩、ポケモンセンターから少し離れた宿に泊まっていた。
たまたまセンターが混んでいたため、空いていた宿を予約しただけなのだが、
今日はこちらにしてよかったかな。シュウはそう思っていた。
なぜなら、悩みの種の彼女が、ポケモンセンターに泊まっているからだ。


「一晩だけ考えさせてくれるかい
 明日の朝、必ず伝えるから」

そう言うとハルカは顔をあげた。
そして、うん、わかった、と頷いた。
恥ずかしそうに、なんとも言えない表情で。もう一度少し俯いて。
それから、遠慮がちにシュウに向かって笑顔を見せた。


その時の笑顔が、シュウの頭から離れないでいる。

部屋にひとつだけある大きめの窓。
外はとっくに日が暮れていて、暗い闇に包まれていた。
少しだけ空いた隙間からは、穏やかな風が入り込み、薄いカーテンを揺らめかせていた。
聞こえてくるのは風の囁きと、遠くの森から届くホーホーの鳴き声だけ。

さて、どうしたものだろうか。

シュウはもう一度だけ深いため息をついた。
正直シュウは迷っていた。

初めから答えが決まっていて、それをどう伝えるべきかで悩んでいるのではない。
まず、「答え」が決まらない。
かつ、決まったとしてその伝え方がわからない。
ひとつクリアしてもまだもう一段階ある。
そのことを思うと、ため息しか出なかった。
結論は今晩中に出さなければいけない。
その期限は、ハルカに待ってもらうことがギリギリ許される期限だとシュウは思っていた。
本来、あの場で返すべき答えだ。
けれど、その場の思い付きで返したくなかった。
ちゃんと考えたかったから。


自分は、ハルカのことが好きなのか。
まずそれについて、改めて自らに問う必要があった。

シュウはハルカと別れて、宿に戻ってからずっとそのことばかり考えていた。
いつもと違う主人の様子に、彼のポケモンたちも戸惑った。
いつものようにポケモンフードを頬張りながらも、ずっと主人の様子が気になってしまい、あまり食べた心地がしない。
特に、ロズレイドは、人一倍、いや、ポケモン一倍気にしていた。
その場についていったのは、ロズレイドだけ。
ポケモンはモンスターボールの中にいても、外の様子はだいたいわかる。
他のポケモンを宿の人に一時的に預け、あえてロズレイドだけをシュウは連れていった。

心配を無用にかけたくなかった。
けれど、どうも様子から感じ取ってくれるのか。
ポケモンたちが皆、自分のことを心配してくれているのだと、シュウは気づいた。

「……すまない、みんな。大丈夫だ」

食事を済ましても、ずっとシュウのそばを離れないポケモンたちを、シュウはボールに戻した。
そしてまた、それからずっと、窓の外を見ながら一人で考えていた。






ずっと、気にはなっていた。
ただ、この気持ちが何なのか、
自身であまり掴めていない状態だった。


ジョウト地方に来てからも、コンテストの街でホウエンのメンツにはよく会う。
特に、ホウエンに比べてまだポケモンコンテストがあまり普及されていないこの地方では、開催地や時期も自然と限られてくる。
旅のルートは違えど、顔見知りはほぼ毎回同じ街に集まり、会えることが多かった。
そして、以前と変わらず会う先々でハーリーに二人の仲を疑われ、からかわれていた。
けれどそれについてあまり深くは考えていなかった。

「誰がシュウなんかと!!」
「ハーリーさんいい加減にしてほしいかも!!」

ハルカはそうやっていつも全力で否定していた。
シュウ自身は否定も肯定もしてこなかった。
けれどそれは、自分が何か言うより先にいつもハルカがハーリーに歯向かうから、必要がなかったというだけ。

全く意識してこなかったと言えば、嘘かもしれない。
けれどこんなこと、起こるなんて思ってもいなかった。
考えたことがなかった。
起こらないことだと思っていたから。

けれどそれは起こってしまった。
つい5、6時間前のことだ。
そしてその瞬間、イエスともノーともその場で返せなかった。
嫌なら、無理なら、断ればいいだけの話なのに。
「ノー」と言うには、心に何かの障害があった。
そしてもし、その場での返答を要求されたのなら
イエスと答えた可能性が、圧倒的に高かっただろうとシュウは思った。

ハルカは時間をくれた。
おそらくすぐに返事がほしかっただろう。
けれど、明日まで待つことを承諾してくれた。

ハルカは、いったいどんな決心で自分に向かったのだろう。
シュウは誰かへ思いを伝えた経験など無かった。
想像もつかないようなことだった。
きっとハルカの決心はとんでもなく大きなことで
決して軽く、気安く、単純に伝えられたのではない。
それは普段のハルカの性格や、あのときの彼女の目を見れば、伝わるような気がした。
伏し目がちに、今にも泣き出してしまうのではないかというほど、かすかな声で
思いをまっすぐ伝えられたその気持ち。


それを、裏切ることを徐々に考え始めていた。






シュウはそっと頭を抱えた。

今の自身には
ハルカの気持ちを、受け止められない。
冷静に考えていたら、それが浮かんだ答えだった。

もし仮に、ハルカに対しての特別な感情が自分の中にあったのだとしても
それは今のハルカの気持ちを受け止められるほどの、大きくて強いものではないんだ。

ハルカがなんて思うだろう。
そんなこと考える余裕もない。
自分の気持ちを、言葉に変換するだけで精一杯だ。
普段の他の場面なら、この言葉で相手はどう思うか、こう思わせるにはどういう言い方がいいだろう、とあれこれ考えるだけの余裕があるのだけれど。
もう、精一杯追い詰められていた。

ハルカのことが好きかどうか。
……好きだと思う。ハルカのことは好きだ。
初めは、なんだこの新人は。
ちょっと面白そうだから、挑発してやろうぐらいの気持ちでいた。
けれど、その成長のスピードには驚かされたし、
今は尊敬もしている。
これからも関わっていたい人だ。

けれどそれは、人として、
ポケモンコーディネーターとして、
ライバルとして、
そして大切な仲間としての気持ちだ。

付き合うことは、難しいことではないし
嫌でないのなら、
本当はイエスと答えることが最良の選択なのかもしれない。
けれど、そんな中途半端にハルカの気持ちを引き受けられなかった。
そんなことをして、ハルカを傷つけるようなことだけは、どうしてもできないと思った。

長い長い夜。
シュウは今の一連の考えを何度も自分の中で繰り返し辿った。
間違ってないか、
どこかで考え違えてないか、
確かめていた。

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